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20万円のポケモンカードを誤って2万円で販売した──。東京・東池袋のトレーディングカードショップで、高額なポケモンカードの“販売ミス”があったとして、SNSで議論を呼んでいます。

問題となっているのは「メガリザードンXex MUR」というレアカード。店は4月19日、Xで「本来19万9990円のところ、破格の1万9990円で販売してしまいました」と明かしました。

購入者はそのまま立ち去り、店側は追いかけたものの追いつけなかったとしています。店側が購入者について「逃走」と表現したことから、「売買契約成立してるのに捕まえて何するつもりだった?」「お客さんのせいにするのはお門違い」といった批判も相次ぎました。

では、この“安すぎる買い物”、法的に問題はないのでしょうか。

●安く買った側は罪になる?ポイントは「どこでミスが起きたか」

まず気になるのが、安く買った側は罪になるのか、という点です。 結論からいえば刑事責任が問われるケースはかなり限られます。ポイントはミスの内容です。

店側の投稿には「販売ミス」とあるだけですが、(1)値札や価格表示が最初から誤っていたのか、(2)精算時のレジ入力を間違えたのかは明らかになっていません。

(1)値札や価格表示が最初から「1万9990円」となっていた場合。このケースでは、たとえ買った側が「安すぎる」と思っていたとしても、原則として犯罪にならないと思われます。

そもそも店側が取引前に誤った表示をしていた以上、買主に店側のミスを指摘・訂正する法的義務(告知義務)は、今回のような取引では認められにくいためです。

一方、(2)表示が「19万9990円」だったのに、レジの打ち間違いで安くなってしまった場合は事情が変わります。

もし買主がその場でミスに気づきながら、そのまま精算を進めた場合には、詐欺罪(刑法246条)が問題となりえます。「だまさずに得をした」だけのように見えても、相手の勘違いを利用した行為が「欺く行為」にあたりうるためです。

ただし、買主が精算時にミスに気づいていなかった場合は別です。この場合、詐欺の故意がないため詐欺罪は成立せず、店員が商品を渡している以上、窃盗罪にもなりません。

結果として、買主は「かなり得をした」ことにはなりますが、このような利益をこっそりと得ること(利益窃盗)を処罰する規定は、刑法にはありません。

●民事ではどうなる?「返してください」は通るのか

では、刑事責任が生じる場合が限定的だとしても、「そのままもらってOK」なのでしょうか。

ここで問題になるのが民事上の扱いです。

店側は「カードを返してください。代金は返します」と主張できる可能性があります。理由は、今回のようなケースが、民法上の「錯誤(さくご)」、つまり勘違いにあたると考えられるためです。

約20万円の商品を約2万円で売ってしまった──。この価格差(約10倍)はあまりに大きく、「重要な錯誤」として契約の取り消しが認められる可能性が高いといえます(民法95条)。

なお、原則として、店側に「重大な過失」がある場合は、取り消しができません(同条3項本文)。ただし、買主がカードの相場を知っていて「さすがにこの値段はおかしい」と気づけたはずだと、評価されるような場合には例外もあります。(同条3項1号)。

“安く買えたからラッキー”なのか。いずれにせよ、その線引きが問われることになるでしょう。