慢性腎臓病について啓蒙する市民公開講座「知ろう慢性腎臓病(CKD)。続いてほしい今日があるから」(写真提供:アストラゼネカ 以下すべて)

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3月12日の「世界腎臓デー」を前にした3月1日、日本腎臓病協会とアストラゼネカの共催で「知ろう慢性腎臓病(CKD)。続いてほしい今日があるから」という慢性腎臓病について啓発する市民公開講座が開催されました。柏原直樹先生(川崎医科大学高齢者センター病院長・日本腎臓病協会理事長)と猪阪善隆先生(大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学教授)が登壇し、慢性腎臓病について語りました。(取材・文:鹿田真希)

【写真】腎臓病啓発アンバサダーを務めるのは…

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慢性腎臓病は「知られざる国民病」

「慢性腎臓病と聞いてもなかなかなじみがないかもしれません。その理由のひとつに、ほとんど症状が出ない病気ということがあります。しかし、今や日本全国で慢性腎臓病の潜在的な患者数は約2000万人、成人の5人に1人が該当すると言われています」
決して他人事では済まされない現状に、柏原先生は警鐘を鳴らします。

体を正常に保つために欠かせない「腎臓の働き」とは

腎臓は、心臓から送り出される血液の20%以上が流れており、毎日200Lほどの血液をろ過 、クレアチニンなどの老廃物を尿として体外に排出し体内を正常に保つ働きを担っています。

「腎臓には、血圧をコントロールするホルモンの分泌、赤血球を増やすホルモンの分泌、骨を健康に保つ機能など、体を正常に保つために欠かせない、さまざまな働きがあります」(猪阪先生)

症状が現れた頃には進行している可能性が

CKDは腎臓の機能 が低下していく病気ですが、腎臓は「沈黙の臓器」と言われるほど初期の段階では自覚症状がほとんどありません。貧血やむくみ、倦怠感などの症状が現れる頃にはすでにかなり進行している場合もあるといいます。

痛みなどの気になる症状がないことから、診断されないままで報知されやすく、治療を受けなければ徐々に進行し、重症化すると透析治療、腎移植が必要な「末期腎不全」となります。早期発見して適切な治療を早期に受けることで、それ以上の進行を防ぐことが大切です。

「透析や腎移植だけではなく、CKDが進行すると、心不全や脳卒中といったいわゆる心血管疾患を引き起こすリスクが非常に高まりますが、そういった合併症を防ぐことも非常に重要です」と柏原先生。

早期発見は、定期的な検査で。“eGFR値が59以下”は危険信号

「腎臓病は発見が難しいと言われることもありますが、実は簡単にわかる方法があります。健康診断や人間ドックで尿検査の結果と血清クレアチン値、それから推算するeGFR(推算糸球体ろ過量)をチェックすれば良いのです」 (柏原先生)

「eGFRとは腎臓が1分間にどれくらい血液をろ過して尿を作れるかを示す値で、低いほど腎機能が低下していることを示します。eGFR値が59以下は軽度〜中期の腎機能低下の可能性があり、タンパク尿や腎障害がなくても3ヵ月続くとCKDと診断されます。15未満になると高度に腎機能が低下した末期腎不全という状態になります。eGFR値が59以下の場合は、ぜひ医師にご相談いただければと思います」(猪阪先生)

腎臓の機能低下により心臓病で入院となることも

実際の症例を基に、再構成されたCKD患者さんの経過イメージも紹介されました。

「健康診断で血圧とコレステロール値が高く、受診して薬が処方された患者さんの例です。この時、eGFR値は41でしたが、CKD治療はとくに受けていませんでした。1年後、息切れと冷や汗が出て受診したところ心不全と診断され、心不全の薬も服用することになりました。この時点でGFRは39でしたが、やはりCKD治療はなされませんでした。さらに翌年には、不整脈で病院に搬送されてしまいました。腎臓が悪くなるとカリウムの値が上昇しますが、それにより不整脈を起こしやすくなります。そのため、カリウムを下げる薬も追加で服用することになりました。この時GFRは32に低下していました」(猪阪先生)

CKDに対する治療を受けないままでいると、腎機能が低下するばかりでなくこのように心不全を起こしたり、入院が必要になることもあるといいます。

「だからこそ、持病の通院でも定期的に腎機能の検査を受け、服薬治療や生活習慣の改善、血圧管理、食事療法などといった適切なCKD治療につなげることが重要です」と猪阪先生。


実際の健康診断結果。eGFR値が59以下は軽度〜中期の腎機能低下の可能性

良質なCKD治療の普及を目指し、各地域のかかりつけ医と専門医が連携

「かかりつけ医と一緒に腎機能に注意し、治療を受けることは重要ですが、CKD治療では腎臓専門医の助けが必要となることも少なくありません。しかし、専門医の数は大都市に集中しており、最も少ない地域と比べると人口当たりで4.6倍もの差があるのが実情です。こうした患者さんと医療の隙間を埋めるために、日本腎臓病協会とアストラゼネカは〈協力医制度〉という取り組みを開始しました。腎臓病に関心の高いかかりつけ医の先生方に協力医という資格を取っていただき、早期発見と継続的なケアを担いつつ、必要に応じて専門医へつなげていただく体制の確立を目指しています」(柏原先生) 

CKD患者さんの診断のきっかけでは、「健康診断・人間ドック」が48%、「体調不調や気になる症状があって受診」が19%、「他の病気で受診した時、偶然見つかった」17%、「他の病気で定期的に通院中に腎機能が低下し診断」が13%だったとする調査結果もあります(2026年1月 アストラゼネカ株式会社 慢性腎臓病(CKD)に関する患者調査)。 

自覚症状では気づきにくい病気だからこそ、健康診断の際や、持病のある方はかかりつけ医での受診時、定期的に腎機能に注意し、GFRの値の低下が見られたら早期に適切な治療を受けることが、将来の健康を守ることにつながります。日本腎臓病協会とアストラゼネカは、2022年から腎臓病啓発アンバサダーに俳優の檀れいさんを迎え、腎機能に注目することの大切さをさまざまな形で啓発する活動も行ってきました。

柏原先生、猪阪先生は、日本のどこにいても良質なCKD治療を受けられる環境づくりに引き続き尽力するとともに、多くの方がCKDについて理解し、積極的に早期発見に努める重要性を呼びかけました。