年収1000万円超の勝ち組なのになぜ不安になるのか。真の富裕層が実践するBS思考の極意とは?

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 新NISAの普及により、S&P500やオール・カントリーといったインデックス投資が多くの人の資産形成のベースとなりつつある。一方で、刻一刻と変化する世界情勢や先の見えない経済状況を前に、既存の枠組みに捉われない新たな資産防衛の形を模索する動きも出始めている。

 20代で元手ゼロから純資産4億円を築き上げ、現在はドバイを拠点に活動する個人投資家の宮脇さき氏も、時代の変化に合わせた柔軟なマネー戦略の重要性を説く一人だ。幅広いアセットを扱う同氏は、仕組み化と独自の思考法によって着実に資産を築いてきた。

 本稿では、宮脇氏の実体験と知見をもとに、インデックス投資の次のステップとなる「バーベル戦略」から、意思に頼らず資産を増やす「環境ハック術」、ストックを重視する「BS思考」、そして最大の資本である「自己投資」まで、これからの時代を生き抜くための資産形成のヒントをわたって紐解いていく。全4回の第3回。


年収1000万超えに潜む「金持ち貧乏」の罠



 年収1000万円。世間的には間違いなく勝ち組の象徴です。それなのに「将来が不安で仕方ない」。こうした本音は、決して贅沢な悩みでも嫌味でもありません。ビジネスパーソンとして有能であるがゆえに高収入を得る一方、累進課税による重い税負担や、知らず知らずのうちに膨らむ生活コストに追われ、手元に資産が積み上がらない。そんな「金持ち貧乏」とも呼ぶべき構造的な罠が、この年収1000万〜2000万円前後の層に数多く潜んでいるからです。

 こうした不安の正体は、損益計算書的な発想である「PL思考」にあります。この世界では、給料やボーナスを収入、生活費を支出とし、その残りを貯金という利益と捉えるフローにすべての意識が集中します。年収の高さで競い合ったり、毎月の貯金額を目標にしたりするのがこのタイプですが、ここには二つの大きな落とし穴が潜んでいます。

 一つは、短期的視点になりやすいこと。そしてもう一つは、収益源を自らの労働力のみに依存している点です。どれほど高年収であっても、万が一、病気や事故で働けなくなれば、その瞬間に収入は途絶えてしまいます。この構造的な脆さが、消えない不安の根源なのです。稼ぐ力が強いからこそ、無意識に労働によるフローに固執してしまい、資産を築くチャンスを逃している。これが、年収1000万〜2000万円を稼ぎながらも、将来への不安が拭えない人たちの正体です。

 また、突発的に大きな資産を手にした場合には、別の意味でのリスク管理も求められます。相続や事業売却などで一気に資産家となった場合、最も重要なのはその事実を不用意に外へ出さないことです。

 自分が資産家になったことを周囲に明かさず、「ステルスリッチ」に徹すること。これは詐欺や恐喝といった直接的なリスクを避けるだけでなく、人間関係の歪みを防ぐうえでも重要な防御策となります。

 とはいえ、急激な環境変化の中で生活レベルを維持し、自己規律を保ち続けることは容易ではありません。だからこそ、資産を守るためにも、あらかじめ「どう振る舞うか」を決めておくことが不可欠なのです。


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