連載:アナログ時代のクルマたち|Vol. 74 マセラティ4CS 1500 MM(4CS1100)
【画像】ジェントルマンドライバーたちに愛された、マセラティ4CS 1500 MM(4CS1100)(写真6点)
ことほど左様に、ピーター・カウスはマセラティに情熱を注いでいたようで、91年に刊行された書籍『ロッソビアンコ コレクション』によれば、23台のマセラティが収蔵されていることになっていた。その後、増減はしたかもしれず、我々が取材に訪れた当時は19台に減っていたものの、それでも博物館の最多台数を占めていたのは間違いない。
今回紹介するのは、その中の4CS 1500 MM(『ロッソビアンコ コレクション』という本によれば)である。マセラティという会社が3人のマセラティ兄弟によって、1914年に創立されたことの解説はほかに譲るとして、会社が最初に作ったのは、車ではなく航空機エンジン用のスパークプラグであった。その後、マセラティの名を冠した最初の車が誕生するのは、1926年のこと。市販車ではなくグランプリカーであった。その後も彼らが作るのは、いずれもレーシングガーばかり。フランス語で小型車を意味する「ヴォアチュレット」(最後のtは読まないのかも?)クラスが確立された1920年代中盤からは、多くのブランドがこのクラスに参戦するようになった。マセラティのティーポ26も、排気量が1.5リッターであったから、このクラスに属する。でもエンジンは直列8気筒であった。
このヴォアチュレットクラスには、今でいう多くのジェントルマンドライバーたちも参戦し、プライベーターとして、メーカーから車両を購入してレースに興じた。つまり、レーシングカーが市販される時代となったわけで、マセラティもこうしたプライベーターたちにマシンを供給することで、利益を得ることとなる。その最初のモデルともいうべき車が、4CS 1100と呼ばれるモデルである。それ以前のティーポ26でも排気量1100ccのマシンを開発したものの、さすがに8気筒に1100ccは重量がかさんで不利だったようだ。そこで、4CSは気筒数を半分にした4気筒の1100ccとされ、ツインカムヘッドとルーツ製スーパーチャージャーを装備することで、8気筒車と同等の出力を発揮したという。エンジンが軽くなったことで、パワーウェイトレシオは格段に向上し、戦闘力も同時に引き上げられていた。
4CS1100が最初に登場したのは、1932年のことで、シャシーナンバー1114を持つこの車は当初4CTRと呼ばれ、1台だけが作られた。Cはシリンダー、後ろ二つのTRはTesta Riportataの頭文字で、取り外し可能なヘッドを意味するという。
4CS1100は1100ccの4気筒スポーツカーを意味し、この名称を持つ車は合計5台が作られた。その後4CS1500が作られたのだが、1100の時代から多くのモデルが1500ccエンジンに乗せ換えられていて、ロッソビアンコに収蔵されていたモデルも、実際には4CS1100として生を受けたモデルである。
