韓国の若者にとって職場の飲み会はもはやパワハラになっていた…飲酒大国で「酒離れ」が急速に進む理由

写真拡大 (全4枚)

若者が酒から離れていっている

かつて韓国人は酒に強いことで世界的に知られていた。グローバル市場調査会社ユーロモニターの2014年の調査によれば、韓国の成人は1週間に平均13.7杯の蒸留酒を消費しており、「ウォッカの国」と呼ばれるロシア(6.3杯)の2倍以上に達している。また、2018年のWHOの報告でも、韓国の年間アルコール消費量は一人当たり10.2リットルと、世界平均(6.4リットル)を大きく上回り、アジア有数の「飲酒大国」であることが示された。

韓国ドラマに頻繁に登場する「爆弾酒(ビールと焼酎を混ぜたカクテル)」のシーンは、こうした「飲酒大国」の職場文化を象徴するものだ。杯を回し、「一気飲み」を掛け声に連帯感を確かめるこの文化は、硬直した上下関係の中で人間関係を維持する手段でもあった。

それが、近年、合理的な消費を重視する若者を中心に、いわゆる「酒離れ」の動きが韓国社会で急速に広がっている。

代々マッコリ会社を営んできた私の親戚は、最近ため息をつく。「昔は雨の日になると売り切れになるほどだったのに、今はさっぱり売れない。若い人たちは酒以外にも楽しみが多すぎるんだろう」。実際に飲み会が最大の娯楽だった時代は過去のものとなり、いまやスマートフォン一つで楽しめるOTTサービスやゲームがその座に取って代わっている。関連統計も出ている。韓国のマッコリ市場はここ3年で5.6%縮小し、成長は停滞している。

過去のものとなる企業文化

ただ、これは単にマッコリ市場に限る現象ではない。2024年の疾病管理庁の調査によれば、成人のアルコール摂取量は過去5年間で15%以上減少した。とりわけ20代の減少幅は顕著で、わずか1年で30%以上減少したという。

この劇的な変化の背景には、韓国若者の徹底した「実用主義」がある。物価高と雇用不安の中で、酒はもはやロマンではなく「コスパの悪い支出」と見なされている。実際、20〜30代の7割は、酔うまで飲むことを時間と金の無駄だと考えており、自己啓発運動といった、より確実なリターンのある活動を好む傾向にある。

若者の価値観の変化は、企業の飲み会文化にも影響を及ぼしている。かつては会社が費用を負担し、団結を図る場とされてきた会食も、今ではその在り方が問い直されている。知人が勤めるIT系大企業では、従来のように部署全体で酒を酌み交わす飲み会はほとんど姿を消したという。その代わりに、社員全員で映画を鑑賞したり、さらには「会食費を現金で分配してほしい」という要望が受け入れられるケースも出てきている。個人が自由に使える方が、より公平で効率的な“報酬”だと考えられているためだ。

各種調査でも、若手社員の約8割が「飲み会は業務の延長」と捉えており、現金支給や早期退勤といった実質的な報酬を好む傾向が明らかになっている。今や上司からの飲み会の誘いは、激励ではなく「パワハラ」と受け取られることさえある。

「酒の代わりにランニング」の社会的意味

一方で、酒の代わりに韓国の若者たちが熱中しているのが運動だ。中でも「ランニングクルー」のブームは、都市の夜景を変えるほどの勢いを見せている。仕事終わりにアプリで集まり、揃いのウェアで街を走る光景は、現代の新たな余暇の象徴となった。

このブームは関連産業にも波及している。百貨店ではランニング用品の売上が毎年30%以上増加し、高額なランニングシューズが即完売するケースも珍しくない。食品業界でもプロテイン飲料が人気を集め、市場規模はわずか数年で5倍以上に拡大した。

しかし、この新たな文化もまた摩擦を生んでいる。大人数で隊列を組んで走る「集団ランニング」が歩行者の通行を妨げるとして問題視されているのだ。実際、ソウルの一部地域では団体ランニングを制限する措置も取られ始めている。かつては飲み屋街の騒音だったものが、今では公共空間での新たな対立へと姿を変えているのである。

儒教的価値観の影響が強い韓国では、かつて酒は抑圧された感情を解放し、人間関係を円滑にする重要な手段だった。しかし今の若者たちは酒場ではなく、オンラインを通じて共通の趣味を持つ人々とつながるようになっているのだ。

結局のところ、韓国社会における「酒離れ」は単なる嗜好の変化ではない。それは価値観の根本的な転換を示している。すなわち、韓国社会が集団中心の慣習から離れ、より個人化・多様化した社会へと移行しつつあることを象徴しているのである。

【併せて読む】韓国の若者が「オレンジ色のiPhone17」を忌避する驚きの理由…いま韓国で吹き荒れる「勘違い40代・50代」への嘲笑と「世界最悪の対立社会」の実態

【韓国の変化をもっと読む】20代の読書率は7割以上!韓国の若者が起こした文学書の大ブーム「テキストヒップ」の実態