記事のポイント 挑発的な広告が再び脚光を浴び、ギャップやアメリカンイーグルがY2K的な手法を展開した。 ボンダイブーストは「ホーニーマーケティング」でラスベガスのショーと提携し、話題を創出した。 性的表現は注目を集める一方で炎上リスクも高く、ブランドにはリスクとメリットの見極めが求められる。


ますます騒がしくなる環境のなかで、マーケターらは「セックスは売れる」という謳い文句に立ち返りつつある。

挑発的な広告はマーケティングにおいて周期的に主流をなしてきた。たとえば、2000年代初頭、ファストフードチェーンのカールスジュニア(Carl’s Jr.)は、露出度の高い服を着たパリス・ヒルトンやシャーロット・マッキニーなどの女性が乱雑にハンバーガーを食べるという刺激的な広告でブランドを構築した。また、人々が対面での親密な関係への回帰を切望したパンデミック後期にも、ブランドはきわどい広告を積極的に展開した。2021年にはメンズウェアブランドのスーツサプライ(Suitsupply)が、モデル同士が舐め合うという、眉をひそめるような広告キャンペーンを展開した。

しかし今年は、ミニマルなマーケティングが氾濫するなかで際立つために、さらに多くのブランドが挑発的な広告に注目しているようである。9月初め、ギャップ(Gap)はY2Kファッションの復活の一環として再燃しているローライズジーンズに注力した「ベター・イン・デニム(Better in Denim)」キャンペーンを開始。この広告では、ガールズグループのキャッツアイが腹部を露出したギャップのデニム姿で、ケリスの2003年のヒット曲『ミルクシェイク』に合わせて踊っており、高いエンゲージメントと視聴数を獲得する結果となった。

アメリカンイーグルアウトフィッターズ(American Eagle Outfitters)も「シドニー・スウィーニーは素晴らしいジーンズを持っている」というキャンペーンで性的なニュアンスを盛り込み、スウィーニーがジーンズを履くクローズアップを強調した。しかし、このマーケティングは反発を招き、ソーシャルメディア上では優生学を想起させるという批判の声も上がった。

ボンダイブーストの「ホーニーマーケティング」



この戦略を踏襲した最新のブランドが、オーストラリアのヘアケアブランド、ボンダイブースト(BondiBoost)である。同社は新製品のスカルプセラム「ロックドロップス(Lock Drops)」の発売にあたり、インフルエンサーへの目立たない製品シーディングをやめ、ラスベガスに向かった。そして、オーストラリア出身の男性ダンスグループのサンダー・フロム・ダウン・アンダー(Thunder from Down Under)と提携し、彼らのラスベガスのストリップショーを1カ月独占したのである。

ボンダイブーストのインフルエンサーマーケティング兼広報ディレクターであるヒラリー・ジーバー氏は、この種の広告について率直に評価している。つまり、この最新キャンペーンで「ホーニー(性的に興奮した)マーケティング」を積極的に採用したのだった。

「我々はもう少しリスキーなことをしたかった。ホーニーマーケティングは、競合他社の多くが使っている手法とは異なる」とジーバー氏は語った。

ジーバー氏は、ブランド認知度の向上はボンダイブーストの2025年の優先事項のひとつであり、大規模なリブランディングの一環だと説明する。今年初め、同社は「ウェルネスクラブ(Wellness Club)」と呼ばれる新しいクリエイターコミュニティを立ち上げるなどの刷新を行った。

「自社を『ウェルネス』という枠だけにはめたくはなかった」とジーバー氏は語り、親しみやすいヘアケアとウェルネスのイメージを喚起したかったと付け加えた。「夜中の3時まで遊んでいても、早起きして朝7時のピラティスクラスには行く、そんなイメージだ」。同氏によると、この方向性は、ポッドキャスターのアレックス・クーパー氏が最近立ち上げたアンウェル(Unwell)ネットワークと飲料ブランドからもインスピレーションを得たという。アンウェルは、ウェルネスに対する「カオス」な解釈を喚起している。

女性観客を狙ったショーとの融合



ウェルネス文化の進化に触発され、ジーバー氏とチームはボンダイブーストの女性顧客層を惹きつける、より楽しい方法を模索した。この戦略は、ボンダイブーストが「ホーニーマーケティング」へ注力していく大規模なクリエイティブシフトの一環である。

ボンダイブーストは、フィットネスクラスや「ホットガール」コミュニティ ウォーキング クラブの開催など伝統的な戦略も試みたが、今年後半にはサンダー・フロム・ダウン・アンダーとのパートナーシップでさらなる飛躍をめざしている。この提携には、ボンダイブーストが8月開催の全41公演の主要スポンサーとなることが含まれていた。8月を通して、このキャンペーンは、211人のインフルエンサーによるTikTokとインスタグラムのソーシャルメディア投稿と、28万7000件のオンラインエンゲージメントを生み出し、Web全体で370万インプレッションを獲得した。

ボンダイブーストのロックドロップ製品発売時のキャッチフレーズは「Shed Happens(訳註:ストリップで服を脱ぐの意味と髪が抜けるという意味をかけている)」で、ジーバー氏によると、遊び心のあるタイアップにぴったりだという。サンダー・フロム・ダウン・アンダーのショーには毎回約100人の観客が訪れるが、その多くは18歳から65歳の女性観光客である。「つまり、マーケティングには男性を起用しているが、観客は完全に女性であり、まさに当社のターゲット層だ」とジーバー氏は述べる。

ボンダイブーストは、上半身裸のオーストラリア人男性を起用した広告が、従来のビューティクリエイティブを一環して上回っていることを発見した。同社によると、この男性主導の広告は女性主導のクリエイティブの2倍のROASを生み出し、メタ(Meta)でのROASは2.8倍に達した。さらに同社はインフルエンサーと小売のタッチポイントを組み合わせたキャンペーンを実施し、セフォラ(Sephora)、アルタ(Ulta)、自社D2Cサイトへのトラフィックを促進した。

リアルイベントとデジタル拡張



8月の全公演では、サンダー・フロム・ダウン・アンダーの開演前スクリーンに「Shed Happens」のクリエイティブアーティストらが登場した(通常は上半身裸の男性の映像が流れる)。ボンダイブーストは、ショー中盤の「オーガズムセグメント」にも登場し、当選者に200ドル(約2万9000円)相当の製品ギフトバッグを提供した。ジーバー氏は、「終演後、退場する全観客にミラクルヘアマスク(Miracle Hair Mask)のサンプルを配布した」と述べた。このマスクは8月中、公演会場のエクスカリバー・ホテル&カジノ(Excalibur Hotel & Casino)内のサンダー・フロム・ダウン・アンダー・ストアで販売された。

ボンダイブーストは、デジタル面では、サンダー・フロム・ダウン・アンダーのダンサーたちをコンテンツや店頭に登場させてパートナーシップを効果的に活用できたとジーバー氏は語る。「アルタでダンサーらが商品棚の前にいる様子を撮影できた」。これは顧客のあいだで大きな反響を呼んだ。SNS上では「ロックドロップスを買うとダンサーもついてくるのかというようなコメントも寄せられた。

それでも、ほとんどのブランドにとって過激な画像を試すのは大きな賭けである。強いエンゲージメントを得る可能性がある一方、反発を招いて炎上するかのどちらかになるからだ。

「文化的退屈」への反動としてのセクシーマーケティング



ブランディングエージェンシー、モットー(Motto)のCEO、サニー・ボネル氏は、セクシーマーケティングの復活は「文化的な退屈への反動のように感じられる」と述べる。同氏は、大胆なセクシー広告は多くのブランドがミニマルなブランディングへと動いた傾向とは対照的だと付け加える。過去10年間に多くの企業が採用してきた当たり障りのない美学は、多くの消費者にとって退屈でワンパターンになっていると指摘する。

クラッカーバレル(Cracker Barrel)がロゴを簡素にして最新化を図り、SNSで反発を受けたのはその一例だ。

ニュートラルカラーやパステルカラーのロゴ、光沢のある洗練された広告など、「世のなかを見渡すと、何もかもが同じように見えつつある」とボネル氏は語る。「ある時点で人々からは注目されなくなるので、ブランドはノイズのなかで挙手して目立たなければならない」。

セクシーなイメージは目立つためのもっとも簡単な方法のひとつだとボネル氏は説明する。セクシーなモデルを起用したきわどい広告は目新しいものではなく、1990年代から2000年代初頭のマーケティング手法を彷彿とさせると指摘する。たとえば、カルバン・クライン(Calvin Klein)はセクシーな下着の広告でこの手法の先駆けとなった。

ただし、今日のオーディエンスははるかに発言力があり、ソーシャルメディア上の広告にリアルタイムで反応できるという違いがある。ボネル氏は「以前は企業に意見するには手紙や電話をするしかなかった。ブランドとして我々は、世界に発信する内容に対してこれまで以上にはるかに大きなパワーと影響力を持っている」と語る。注目を集めるために挑発的な広告のリスクとメリットを秤にかけて判断するのは、各企業に委ねられている。

炎上リスクと予期せぬ成功



ジーバー氏は、過激なコンテンツがどう受け取られるかは予測不能であるため、たしかに大きなリスク要因はあると認める。とはいえ、観客の観点でいえば、この提携とキャンペーンに対する反応はおおむね好意的だったと述べる。

同氏は「ロックドロップスのローンチに合わせて、インフルエンサーをラスベガスに招いてブランドトリップも行った」と語った。そのなかにはショーを鑑賞するインフルエンサーも含まれていた。ジーバー氏は、フォロワーの多いクリエイター16人(うち1人はステージに引き上げられた)を連れていくことは、(宣伝のために人目をひく行為としての)スタントとして逆効果になるのではと懸念したという。

「これは想像以上に下品だ。クリエイターらに打ち切られてしまうのではないか?」と感じたと語る。幸いにも参加者全員がショーを気に入ったという。「ただ、このブランドキャンペーンでは万が一に備えてダメージコントロールする準備はあった」とジーバー氏は明かした。

原文:Brands Briefing: The return of raunchy marketing

Gabriela Barkho(翻訳・編集:ぬえよしこ)