【密着取材】和菓子の未来は豊橋にあった

― 老舗「お亀堂」が仕掛ける、かわいくておいしい“和”の革命 ―
愛知県豊橋市。駅から車で10分ほどの場所に、地元に根差した和菓子店「お亀堂」がある。創業は昭和22年。70年以上にわたり地域に愛されてきた老舗だ。

この日、私たちはその工房に足を踏み入れた。目的は二つ。全国から注目を集める「ブラックサンダーあんまき」の製造現場と、近年人気を集めている「季節や動物をモチーフにした上生菓子」の制作風景を取材するためだ。

■ 異色のコラボ「ブラックサンダーあんまき」誕生の舞台裏
工房に入ってまず目を引くのが、焼き台で次々と生地を焼いていく職人さんたちの真剣な姿。その隣では、丁寧に手作業であんこと「ブラックサンダー」を包む作業が進んでいた。

「このザクザク感を残すのが難しいんです」
そう語るのは、開発に関わった職人さんの一人。
甘さ控えめのあんこと、チョコの食感。その絶妙なバランスは、何度もの試作と、職人たちの感覚によって生まれたものだという。

全国区のチョコ菓子と、地元の伝統和菓子が出会った“奇跡の一本”。SNSやメディアでも話題になり、「豊橋に行ったら買いたい土産」の常連になった。

■ 見て癒され、食べて笑顔に。人気の“かわいい”和菓子たち
一方、工房の別のスペースでは、まるで宝石のように整然と並べられた小さな和菓子たち。季節を感じさせる「花火」「あじさい」そして子どもに人気の「ぴよこ」や「かえる」など、愛らしい練り切り菓子が一つひとつ手作業で作られていた。

「小さな子にも和菓子を楽しんでもらいたくて」
と語る職人さんは、細かいへらで耳をつけたり、羊羹で表情を描いたりと、まるで人形作家のような繊細な仕事ぶりを見せていた。
和菓子にここまでの“表情”があることを、初めて知った瞬間だった。