「次のエヌビディア」を見つける方法はこれしかない…「100倍になる株」を次々と掘り当てた投資家の絶対ルール
※本稿は、中島聡『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

■第2のNVIDIA、Teslaの見つけ方
「次のNVIDIAはどこですか?」「第2のTeslaになりそうな企業を教えてください」
そういった質問をよく受けます。しかし、今後急成長していく企業をピンポイントで当てるのは不可能です。
では、なぜ私がNVIDIAやTesla、さらにはGAFAM(Google、Apple、Facebook ※現Meta、Amazon、Microsoft)のような企業を早い段階で見つけ、投資することができたのでしょうか。
その裏には「メタトレンドに乗りそうな企業を複数押さえておく」というシンプルなアプローチがあります。例えば、10社や20社の企業に少額ずつ投資し、そのうちの1社でも5年後や10年後に10倍以上成長すれば「結果として次のNVIDIAを引き当てた」ということになるわけです。
■少額投資で唾を付けておく
このやり方にはいくつか重要なポイントがあります。それは、いきなり大金を投じるのではなく、まずは少額投資で「唾を付ける」程度にしておくこと。こうすると、急にその企業の動向が“自分ごと”になり、情報収集やニュースへの感度が高まります。
そして、ウォッチリストに加えた企業を半年から1年程度、様子見します。ある程度待ってみて、そこで思ったほど業績が伸びない、あるいはどうもこの企業には確信が持てないと思えば潔く売ってしまいます。逆に「この会社はもっと伸びる」と感じたら買い増します。これを繰り返すことで、最終的に確信を持てた本命だけが手元に残ります。
いわば「数撃ちゃ当たる」の発想ですが、私はこのやり方を続けてきました。これで10倍や100倍株を引き当てましたし、なにより多少のマイナスこそあれ、大損はしていません。
■唾を付けるのは10〜20社でいい
結果的に、いま「本命」として長期保有しているのはわずか7社ほどです。これらは熾烈なサバイバル競争を勝ち残ってきた“エリート銘柄”といえますし、この7社の足元には私が過去に手放してきた何十、何百もの株が横たわっているのです。
私の場合、興味関心の幅が人よりもかなり広いため、投資先の候補も多くなってしまいます。しかし、一般の方なら10社や20社で十分でしょう。そのうち1社が大化けすれば「次のNVIDIA」をつかんだも同然です。
メタトレンド投資はいきなり大金を投じて一か八かの勝負をするのではなく、まずは小さな関わり(ウォッチリストへの追加)から慎重かつ着実にはじめるのです。
そして、企業や業界について自分ごと化し、あらゆる情報源にアンテナを張る。その後、「これは伸びそうだ」という確信を得られたタイミングで買い増していくという段階的な手法を取ります。
■NVIDIAをウオッチリストに入れるまで
ウォッチリストを作成(少額投資や、気になる企業の名前や株価をメモ)したら、あとは「次のきっかけ」を待ちます。NVIDIAの例がわかりやすいので、ここでNVIDIAの成長を時系列で振り返ってみましょう。

2012年
●AIモデル「AlexNet(アレックスネット)」がコンペ「ILSVRC」で圧倒的な優勝を果たす。
●AI研究者たちの間で「AIは本当に使える技術になった」「今後、ビジネスや産業にAIが本格的に応用される時代が来る」という期待が一気に高まる。
●ただし、この段階では「AIブームの主役=NVIDIA」という認識は、世間一般はもちろん、AI研究者たちの間にも私にもまだない。
2014年
●「AlexNetがAIの歴史を変えた」「その高い性能を支えていたのがNVIDIA製GPU(半導体チップ)だった」という情報がAI業界以外でも噂されるようになる。
●私はそんな噂を聞きつけ、「もしAIが本当に来るなら、NVIDIAは大きく伸びるのかもしれない」と直感的に感じはじめる。
●私は直感に従い、このタイミングで「最悪ゼロになってもいい」程度の少額投資を行い、NVIDIAをウォッチリスト入りさせる。
2015年
●NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏がAIやディープラーニングに本気で注力する姿勢を明確に示す。
2017年
●Googleが「Transformer」というモデルを開発し、現在のChatGPTなどに連なる生成AI技術の基礎を築く。
●AI業界を超え、テクノロジー業界全体でも「AIはこれから当たり前になる」というムードがさらに強まる。
2018年
●NVIDIAが「この業界に強力で多用途なコンピューティングプラットフォームを提供する」と明言し、AIへのシフトを加速。
●私はCEOの本気度に確信を深め、一気に株を買い増す。
■「AIの時代を見据えている」と確信し買い増しを決断
2012年当時、私はAI業界の歴史的快挙(AlexNetの優勝)やNVIDIAの将来性を知らず、唾を付けることすらできませんでした。
しかし、2014年になるとAI界隈の噂やNVIDIAのポテンシャルが耳に入り、「気になる企業だな」と直感し、「最悪ゼロになってもいい」程度の小額投資を行い、NVIDIAをウォッチリスト入りへ。ウォッチリスト入りしたことで、NVIDIAが自分ごとになり、私はさらにニュースや動向を自然と追うようになりました。
ここまでが「唾を付ける」「ウォッチリストに加える」ステップです。
そして2018年、ついに「次のきっかけ」が訪れました。
NVIDIAのCEOがAIプラットフォームに注力する姿勢を一段と明確に打ち出し、私は「NVIDIAは本当にAIの時代を見据えている」と確信。その瞬間、NVIDIA株を大きく買い増すことを決断しました。
もしもこのときフアン氏が「VR用ヘッドマウントディスプレイ向けの半導体製造にフルコミットする」などと私の考えと大きくズレる方針を示していたら、NVIDIA株は売り払っていたでしょう。
このようにメタトレンド投資においては、「次のきっかけ」を見極め、適切な行動を取ることが成功への鍵となります。
■少額投資で自分ごととし、情報収集を強化する
この「次のきっかけ」の代表例はNVIDIAのケースのように、企業のCEOが将来の成長に向けた新たな方針を力強く打ち出すことが挙げられます。それ以外にも決算発表や長年赤字だった企業の黒字転換、あるいは停滞していた売上が急激に伸びはじめるといったことも「次のきっかけ」になり得ます。
そうした出来事があったときに「このまま保有するか、買い増すか、売却するか」を判断するわけです。
ウォッチリストは「メタトレンド投資で大きく跳ねそうな企業を見守り、買い増しや売却を判断するためのツール」です。焦って大金を投じるのではなく、小さくスタートし、自分ごととして情報収集を強化しつつ、きっかけが訪れたら一気に動く。そのためにもウォッチリストを活用し、「次のきっかけ」を逃さないようにしましょう。
■AppleやMetaの株価がいまから10倍になるとは考えづらい
ウォッチリストに追加し、次のきっかけを待つ。メタトレンド投資では、このステップをこまめに繰り返していくのが基本です。
私はARやVRがいずれ大きなメタトレンドになるだろうと考えています。ですが、現時点ではまだ決定的な兆候は見えていません。さらに、現在の主要なプレイヤーはAppleやMetaといった巨大IT企業。すでに大きな時価総額であり、彼らの株価がここから10倍や100倍に伸びるとは考えにくいのも事実です。
また、ARやVR領域で最終的に勝つ企業がAppleやMetaだとも言い切れません。意外なベンチャー企業が割って入り、IT業界の巨人たちを華麗に追い抜くシナリオも十分あり得ます。こうした状況では簡単に「この会社だ!」とピンポイントでは決めきれないため、まずは有望そうな企業をウォッチリストに入れ、見守るのが得策です。
■ウォッチリストには入れているが、買っていない銘柄
私のウォッチリストには、Snap(スナップ)が名を連ねています。Snapは、投稿が一定時間で消えるSNS「Snapchat」で一躍有名になった企業です。
そのSnapが現在、開発に注力しているのがARグラスです。2021年には開発者向けのモデル「Spectacles(スペクタクルズ)」もリリースし、AR分野への本格参入を表明しています。

ARの分野ではAppleやMetaといった、誰もが知る巨大IT企業が莫大な資金と技術力を投じて熾烈な開発競争を繰り広げています。
一見すると、Snapのような新興企業が太刀打ちできる相手ではないように思えるかもしれません。しかし、あえてその厳しい市場に果敢に挑戦し、独自のポジションを築こうとしているSnapの姿勢に私は大いに注目し、可能性を感じました。だからこそ、私のアンテナに引っかかり、ウォッチリスト入りを果たしたのです。
ただし私は、Snapの株はまだ買っていません。Snapの本業であるSnapchatはInstagramやTikTokに圧倒され、復活の兆しはありません。さらにSnapの株価もピークだった2021年9月の83ドルから大幅に下落し、現在は10ドル台前半を推移。さらに赤字経営も続いています。
■まだ「この会社は伸びる!」とは思えない
私自身、Snapchatを普段使っているわけではありませんから、NVIDIAやTeslaほどの確信を持てているわけでもない。2024年9月には第5世代になる「Spectacles」を発表しました。解像度やバッテリー寿命などが改善しましたが、まだAR業界のゲームチェンジャーになるには程遠いスペックです。まだまだ「この会社は伸びる!」とは感じさせてもらえません。したがって現時点では投資せず、依然としてメモを取るという形でウォッチリストに加え、その動向を見守っています。
今後、「SnapのARグラスが想定外に売れている」「Metaの同製品よりも注目を集めている」「Snapが搭載したAIチャットがすばらしい!」といったニュースが飛び込んできたら、その時点でARグラスを購入し、投資を検討するかもしれません。
■自分なりの「確信」が得られるタイミングを待つ
テクノロジー業界と聞くと、多くの人が「変化が激しく、先行者利益を得るためには、一刻も早く飛びつかないと乗り遅れてしまう」というイメージを抱きがちです。たしかにそういった側面があることも事実です。
しかし、メタトレンド投資の視点に立てば、必ずしも焦る必要はなく、むしろ冷静に長期的な視点を持つことが合理的です。なぜなら、メタトレンドとは10年、20年、場合によってはそれ以上続く、非常に長いスパンでの潮流だからです。

したがって短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、長期保有を前提に腰を据えて「次のきっかけ」を待つほうが、大きなリターンにつながる場合が多いのです。
とりわけARやVRといった分野は、技術的な成熟や市場への普及に、まだ時間がかかると見られています。だからこそ、今すぐに飛びつかなくとも十分にチャンスはあるのです。
大金を一気に投じて失敗するリスクを冒すよりも、まずはウォッチリストを活用して、丁寧に情報を集め、自分なりの「確信」が得られるタイミングが訪れるのを待つ。
そしてそのときが来たら、満を持して本格的に投資を実行する。これこそが私が考えるメタトレンド投資のスタイルなのです。
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中島 聡(なかじま・さとし)
エンジニア、起業家、投資家
1960年北海道生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了1985年、同大学院を卒業し、NTTの研究所に入所。1986年、マイクロソフト日本法人に転職。1989年、米マイクロソフト本社に異動。ソフトウェア・アーキテクトとしてWindows95、Internet Explorer3.0/4.0、Windows98の基本設計を手がける。2000年、米マイクロソフトを退社。同年、Xevo(旧UIEvolution)を創業し、全米ナンバーワンの車載機向けソフトウェア企業に成長させる。現在、iPhone、iPadのアプリをはじめとした、さまざまなソフトウェア開発を行っている。シアトル在住。人気メルマガ「週刊 Life is beautiful」は約2万人の会員数を誇り(2025年1月時点)、まぐまぐ大賞2024・総合大賞1位を獲得。著書に15万部を超えるベストセラー『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』(文響社)など。
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