新スタジアムでS広島Rの背番号8が復帰…苦しい長期離脱を乗り越えた小川愛が再び輝くとき
「おかえり!」
まだシーズンが始まる前の昨年8月、新たに8番を背負う小川は3年目の戦いに向けて燃えていた。昨季は高精度キックを武器にセットプレーからアシスト数を増やしたが、得点は2シーズンでゼロ。今季は特にゴールやアシストの数字により強い意欲を示していた。
その熱い思いは直後のWEリーグカップですぐに体現した。グループステージ全5試合にフル出場し、第2節のセレッソ大阪ヤンマーレディース戦でプロ初ゴールを決めると、第4節の三菱重工浦和レッズレディースではベストゴールにも輝いた鮮やかな直接FKを沈めてチームを勝利と決勝進出に導いた。10月に行われた決勝の新潟L戦も延長戦を含む120分を戦い抜いて、チーム初のタイトル獲得に大きく貢献。輝かしい好スタートを切っていた。
だが、このときすでに痛みと戦っていた。9月に左中足骨を痛めて、11月の練習試合で完全に骨折。リーグ戦が始まる1週間前のことだった。チームのリーグ開幕戦の前日、小川は初めて手術を受け、全治約3カ月と診断された。キャリアで初めての長期離脱だ。
「最初は受け入れきれなくて、リーグ戦が開幕して進むにつれて、自分の気持ちの整理がつかなかったり、どこか焦ってしまったりすることもありました」
手術後は松葉杖での生活を約1ヶ月。自由に動けず、日常生活も大変な時期で、足を地面につけられないまま筋力も落ちていった。「最初の松葉杖の期間は1日1日が長く感じました」。そんな状態からリハビリを始め、ケガの影響で思うようにできないことも当然出てくる。だが、初めてのケガで何が正解かわからず、できなくても仕方がないことでも自分の「弱さ」だと思い込んで自分を責めることもあった。
「リハビリが遅れていたわけではないけど、思い通りにできないことがあって、すごく焦っていた時期もありました。自分にとって初めての経験で、このケガ自体も初めてだったので、やっていることが正しいのか、間違っているのか、出ていい痛みなのかとかも全くわからずに、気持ちが不安定なときもありました」
苦しい日々を過ごしていたが、それでも「起こっていることを受け入れていくしかない」と気持ちを切り替えた。できない自分を認めて、いまできることを見つめる。そうすることで前を向いた。
「現実を受け入れて、自分の体と向き合いながらリハビリするしかなかった。(できないことがあっても)『こういう日もある』っていうのを受け入れて、無理にその日の100点を求めないっていうのもすごく学びました。その時の100点を自分に求めず、その日の自分を受け入れてやっていくしかないので、今日は調子がいい日、悪い日と思いながら、自分と向き合いました」
周りの支えにも背中を押されてリハビリに励んだ。「(感謝したい人は)たくさんいますね。日頃から練習に来てくださる方も声をかけてくださいましたし、チームメイトもスタッフも家族もみんな声をかけてくれたので全員に感謝したいです」。

