エーザイCEO・内藤晴夫のエンパシー経営論「患者さんとの共感関係ができてこそ」
4月頃から、また株価は上昇し始め、6月2日(金)の終値は9500円。時価総額は2兆8173億円強、PER(株価収益率)は71.73倍(東証平均は約15倍)、PBR(株価純資産倍率)は3.41倍(日本取引所はプライム、スタンダード市場に上場する企業に対し1倍以上を求めている)というエーザイの現在の指標である。
「われわれは日本初のイノベーション企業」
新薬開発はグローバル市場でますます競争が激しくなる。エーザイは、そうしたグローバル競争の中で、自分たちをどう位置付け、どう進路を取ろうとしているのか?
「エーザイの定款は、『日本発のイノベーション企業として』と書いています」と内藤氏。
『エーザイ定款』は明確に企業理念をうたっている。定款は企業理念について、「患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念として定める」と記し、「この企業理念のもとヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業をめざす」としている。
定款の中で、自らを『日本発のイノベーション企業』と位置付け、「人々の健康憂慮の解消と医療較差の是正という社会善を効率的に実現する」と謳う。
そして、他産業との連携による『hhcエコシステム(最適形態)』を通じて、日常と医療の領域で生活する人々の『生ききるを支える』とする。その結果として、自分たちの売上や利益がもたらされるという同社の考え。
改めて、グローバルな企業活動をして、社員も6割が外国人という構成の中で、エーザイが日本に本社を構えるメリットとは何か?
「わたしはやはり日本社会というのは、非常に優れた社会だと思いますね。調和が取れて、それからいい意味でストレスが軽いし、基本的にいろいろな議論はあるけれども、格差が少ない。分断されてもいないということで、日本の社会の有り様というのは、1つのお手本じゃないかと思っています」
内藤氏は、米国は米国なりに独自の社会があるとしながら、「やはり日本で最終的な意思決定や戦略を考えるということは未来志向的だと思います」と語る。
内藤氏が続ける。
「われわれは今、疾患別のエコシステムビジネスモデルというのを、これからのエーザイの企業像で考えていますが、これも日本が一番今進んでいる」
エコシステム。人の命や人権、それに環境、資源・エネルギー問題などを考慮しながら、最適な運営システムを創り上げる〝場〟として、日本はそれこそ最適だという内藤氏の考え。
「エコシステム的な、みんなが同じ目標を持って、そこにパートナーとして参画して、人々にソリューションやメリットを届けようという考え方は、日本だと共鳴者は多いですね。アカデミアの人も共鳴するし、またスタートアップも共鳴するので、日本でそういうエコシステムを造るのが一番やりやすい」
こうやって創った日本初のエコシステムモデルというのは、「やがて米国や中国に広めていくことができると思います」と言う内藤氏である。
還元は、パブリック6割プライベート4割の比率で
では、この『レカネマブ』の薬価算定はどうなるのか?
「社会善を成すということを証明しなければいけないので、今回の薬剤の価値、バリューというものを計算しています」
内藤氏は、エコシステムモデルの考え方を敷衍(ふえん)して語る。
「米国では3万7600ドル、日本では460万円という年間価値を、この薬剤は1人当たりにもたらすという計算を、シミュレーションモデルを使ってやっているんです。われわれはこれからこの薬剤が社会にもたらす価値というのが、いくら位の金額になっているかということを常に問うていきたいと思います。そのトータルバリューの何割をエーザイが取って、何割を社会に戻すかということで、その価格付けを行っているんですね」
