エーザイCEO・内藤晴夫のエンパシー経営論「患者さんとの共感関係ができてこそ」
エーザイの社員数は1万1100人強。全売り上げ(7444億円強、2023年3月期、当期純利益は554億円)の7割近くは海外であげており、社員の6割も外国人である。
グローバル化が進む中、各国の経営で共有するものがある。
「患者さんの喜怒哀楽を感じ取って、その中の憂慮をビジネス行動で取り除くということを続けてきています。そういう中で、やはりエーザイには期待しているよと。エーザイにはこれをやってもらいたいという、そういう気持ちを全社員で共有できていると。そういうことがあって、この40年間、折れないで続けてこられたと思います」
内藤氏は、「患者さんとは共感関係にあります」と語り、〝エンパシー〟という言葉を使って、経営の基軸を語る。
エンパシー(Empathy)。日本語に訳すと、共感、感情移入ということ。相手の気持ちの完全な理解ということになろうか。シンパシー(Sympathy、共鳴、同調、同意)とは違う概念だ。
「患者さんと常に同じ将来、未来を見ていると。どういう未来を見ているかというと、やはり認知症は治るのだと」と内藤氏。
「認知症がもうキュアラブル(治癒する)な病気に変わって、認知症の人々が社会の中で安心安全に暮らせると。そういう共通の未来ですね。エーザイのわれわれも同じ未来を見ているので、そこに行こうじゃないかと、こういう力ですね」
認知症を必ず治る病気にしていくという関係者の思いだ。
新薬が日本及び世界に与えるプラス影響とは
エーザイは1941年(昭和16年)の創業。神経系やガン領域に強さを持つ創薬企業だが、認知症薬の開発に注力してきたのも、「社会課題解決に役に立ちたい」というエーザイ関係者の思いがあったからである。
認知症になると、本人はもとより、家族や回りの関係者も介護や支援に当たらざるを得ず、社会での活動に支障をきたす。
日本では65歳以上の認知症患者数は約602万人(2020年時点)で、2025年には約675万に増えるという予測。
そうなると、5.4人に1人が認知症になるという計算(有病率18.5%)。
世界全体での患者数は、約5740万人(2019年時点)で、2050年には1億5280万人に増加すると見られる。
今回の新薬『レカネマブ』は米国の創薬大手、バイオジェンとの共同開発。バイオジェン社は開発資金を半分拠出したが、元々この抗体医薬を開発したのはエーザイで、監督官庁の米FDAに承認申請したのもエーザイである。
つまり、日本発の新薬であり、日本発のイノベーションということ。日本から世界の認知症患者に向けて、新薬が開発されたことは大変意義深い。
もっとも、今後、克服すべき課題はある。『レカネマブ』は、アルツハイマー病が『Aβ』(アミロイドβ)というタンパク質が蓄積されて起きるという見方で研究開発されたもの。
この『Aβ』以外のタンパク質も認知機能の低下に関係があるとの研究結果も出されており、今後さらなる病因解明と創薬の努力は続く。
もっとも、『レカネマブ』の登場は認知症治療を待ち望む人や医療関係者の間で期待する声は多い。
株式市場の反応
この新薬への期待と評価は株式市場の反応にも見られる。1年前の2022年5月頃のエーザイの株価は5000円台で推移。夏から上昇し始め、一旦下げた後、10月頃に7500円台を付けた。
年末にかけ、『レカネマブ』を米FDAが迅速承認するとの見方もあって、9500円台を突破。この後、今年に入って下がり始め、3月頃には7200円台となった。
