怒涛の反撃も惜敗した明桜。かつて中学生に負けていた“谷間の世代”がしっかり刻んだ成長の跡【選手権】
2年ぶりの選手権は飯塚に敗れて、初戦敗退に終わった。それでも、選手が見せた勇敢な姿は確実に訪れた観客の姿の目に焼き付いたのは間違いない。国見やヴィッセル神戸U-18での指導経験を持つ原美彦監督の下、本格強化5年目を迎えた明桜が、着実にチームとして成長していると感じた一戦だった。
試合のキーポイントとなったのは、飯塚のキーマンであるMF池田悠夢(3年)とFW芳野凱斗(3年)への対策だ。「我々みたいなスーパーな選手がいないチームは、総合力とモビリティーを活かして、全員でカバーし合わないといけない」(原監督)と、両選手に対しては複数人で対応。彼らを起点にはじまるグループでの崩しをさせずに試合を進めていくが、前半40分にはその警戒していた芳野と池田に中央を崩され、最後はMF原翔聖(2年)に先制点を決められた。
原監督は試合後、「接戦になるのと想定していたなか、失点した場面と相手ゴール前でのフィニッシュを見ると、ゴール前の精度をもっと上げなければいけないと感じた」と反省を口にしつつ、選手たちを称えた。
「関東に来る前までの2週間、雪でまったく何もできない状況だったなかで、子どもたちはすごく良いパフォーマンスを見せてくれました。最後まで諦めずに点を取りに行こうとしていた。リスクを冒してまで点を取りに行こうとした姿勢は褒めてあげたい」
今季の3年生は、明桜が全国大会への出場から長らく遠ざかっていたタイミングで入学を決めた選手たちだ。ベガルタ仙台ジュニアユース出身のFW佐藤拓実(3年)や藤山など実力者はいたが、攻撃は彼ら頼みの場面が多かった。
ミスが起きれば、他人に責任を押しつけ、チームが悪い雰囲気になったら、誰も喋らなくなっていた。1年目に行なった県内の中学生チームとの練習試合で敗北を喫し、ずっと「谷間」と言われ続けてきた世代でもある。「本当に悔しかった。谷間と言われるほど自分たちが弱くないのは分かっていたのですが、なかなか嚙み合わなかった。それも悔しかった」と佐藤は振り返る。
ただ、多くの選手が原監督と共に寮生活を送りながら、サッカーと学業に本気で向き合い続けてきた結果、少しずつ変化していった。原監督が掛け続けた「上手い選手ではなく、チームを勝たせられる選手が本当に良い選手だ」との言葉は、今では彼らに根付いている。
最後の晴れ舞台で結果は残せなかったが、成長の跡は確実に見られた試合だった。原監督は、こう口にする。
「1年生の時、中学生にも負けていた年代がこうやって12月31日に選手権のピッチに立てたのは良かった。もっと一日でも長く子どもたちとやりたかった。何もないところから始まったチームを信じて集まってくれた子どもたちには感謝しかない。最後まで付いてきてくれて、ありがとうと伝えたい」
選手たちからは悔しさと共に全力を出し切った清々しさも感じた。
「今回の選手権を機に、全国のサッカー少年が明桜高校でサッカーをやりたいと言って、目を向けてくれたら嬉しい。彼らがサッカーに全力で取り組み、全国の強豪になってほしい」
最後に残した佐藤の言葉通り、この日の一戦を見て、明桜の門を叩く選手はかならず出てくるはずだ。谷間の世代が見せた勇敢な姿が、明桜の歴史をまたひとつ切り拓いたのは間違いない。
取材・文●森田将義
【PHOTOギャラリー】高校サッカー選手権2回戦:明楼0−1飯塚
