「いじめの本質」について持論を語ったビートたけし氏

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 近年、全国の小学校で「いじめ防止」のために「あだ名」を禁止にする動きが広がっている。多くの学校で、男女の区別なく友達は「さん付け」で呼ぶよう指導しているという。

本名よりもあだ名のほうが有名になったあの「超大物MC」

 このルールはいじめ問題の解決につながるのか。ビートたけし氏は新刊『コロナとバカ』の中でこう分析している。

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 大きな話題になったわけじゃないけど、なんだか気になったのが「小学校でのあだ名禁止」ってニュースだよ。どうやら最近の学校じゃ「クラスメイトをニックネームで呼ぶとイジメにつながる」ってことで、全面的にあだ名が禁止になってるらしくてさ。

「チビ」とか「デブ」みたいな身体的特徴をあだ名にする露骨なのがダメと言われてるだけじゃなくて、「たけしくん」とか「花ちゃん」みたいに「くん付け」「ちゃん付け」「下の名前で呼ぶ」ってのもよろしくないんだってね。「何で自分だけ下の名前で呼ばれないんだ!」って疎外感を感じさせるからって話で、男も女も「北野さん」みたいに「名字+さん付け」が徹底されてるんだよな。

 評価する人もいるらしいけど、オイラから見たらバカバカしくて仕方がないよ。それじゃあ、芸能界なんてあだ名、あだ名のオンパレードじゃないかよ。

 木村拓哉は「キムタク」だし、ダウンタウンの2人は「松ちゃん・浜ちゃん」だし、小泉今日子は「キョンキョン」だしさ。タモリなんて、本名は森田一義だけどあだ名由来の芸名のほうが有名になっちゃった。学校の先生たちは、子供に悪影響があるってことで、芸能界に抗議書でも送るべきなんじゃないのか?

 中学時代のオイラのあだ名なんて「ペンキ屋」だからね。そのあだ名をつけたのは豆腐屋のセガレだったんだけど、ソイツのあだ名は「豆腐屋」だよ。今の時代だったらどっちもアウトなんだろうな。ついでに言えば、家での呼び名は「バカタケ」。学校でも家でもサンザンだったわけだ。

 学校には、もっとヒドいあだ名もあったぜ。

 当時、アメリカの医者ドラマの『ベン・ケーシー』が流行ってたんだけど、それをもじって、いつも猫背のヤツが「前傾シー」と呼ばれてた(笑)。

 おそらく教育委員会や学校関係者は、そういうのを「イジメ」だと決めつけて、防ぎたいんだと思う。「ウチの学校ではしっかり対策してますんで」と万が一のための予防線を張ってるんだよな。

 だけど、子供ってのは本来残酷だからね。今の教育は「みんな平等だ」って表では強調しているけど、本当はそうじゃないことなんてよくわかっているよ。たとえばリレーで負けたのはメンバー全員のせいだって教師が言ったって、本当は誰が足を引っ張ったのか子供には一目瞭然でさ。

 こういう風に表向きだけ解消しようとすればするほど、親や教師の見えないところ、とくにネット上なんかでの「陰湿なイジメ」が激しくなってしまうだけだよ。序列が表立ってつけられないから、無抵抗な弱い子を陰で叩いて自分の優位を仲間に誇示しようとしちまうんだ。

 社会に出れば、子供の頃よりも陰湿な人間関係がいくらでも待っている。それなのに子供の頃にそれを覆い隠してしまうから、いざ大人になっても社会に背を向けて閉じこもってしまったり、自分の周りの環境に責任転嫁するヤツラが出てきてしまうんじゃないかってさ。

 何でもかんでもオブラートに包んでしまう教育は、実はそういう問題を抱えてるんだよ。「あだ名禁止」みたいな逃げ道じゃ、本当のイジメ解決にはならないんだっての!