【安積明子】都知事選「真の勝者」は小池知事ではなく「日本維新の会」だった…! 「維新=関西ローカル」はもう昔の話?

写真拡大 (全2枚)

小池都知事の「圧倒的強さ」

7月5日に投開票された東京都知事選は、小池百合子東京都知事が史上2番目の366万1371票を獲得して当選。友党の公明党や連合東京、医師会などの組織票をがっちりと固めて、圧倒的な強さを見せつけた。

そもそも小池知事はコロナ対策を口実に表立っての選挙活動を控えることで、対立候補との討論会などを事実上行わず、あえて避けたといってよい。

また新型コロナウイルスの感染拡大防止協力金などで、9000億円以上あった都の財政調整基金をほぼ使い尽くしたが、これが都知事選前に行われたため、「事実上の選挙対策だ」と批判を浴びた。

かねてから噂があった学歴詐称についての暴露本も出版され、一気に話題になった。にもかかわらず、小池知事は現職の強味を発揮し、「小池旋風」を吹かせた前回の都知事選よりも約7万5000票も上乗せした。

〔PHOTO〕gettyimages

待っているのは地獄?

ただ圧勝はしたものの、小池知事の前途は楽観できるものではない。

コロナ禍で法人税などの減収が予想され、都の財政はかなり厳しくなることは必至だが、その中で第2波、第3波に対応しなければらない。東京オリンピックパラリンピックの開催問題もあるが、中止されない場合はどのようにコロナ対策をしていくのか。

都知事として取り組まなくてはならない難問が山積する中で「国政に逃げるのではないか」とも囁かれている。進んだのは良いが、前には地獄が待っている。

もうひとつの困難は、小池知事が自ら創設した都民ファーストの会の不振だ。

都民ファーストの会は都知事選と同日に投開票された都議補選で、北区で天風いぶき氏を擁立。天風氏は宝塚歌劇団を退団した後、国会議員だった小池知事の秘書になったという異色の経歴が話題になった。

さらに北区の一部は前回の衆議院選から小池知事にとってかつての選挙区の東京10区に編入されたということもあって、小池知事にとっていわばホームグラウンドに子飼いの候補が立ったということになるが、天風氏は2万3186票しか獲れず、4位に甘んじた。

もっとも北区は2016年の都知事選で小池知事を応援した音喜多駿参議院議員の都議時代の地盤で、音喜多氏が日本維新の会の公認候補として参議院選に転出したために補選となったという経緯がある。日本維新の会は音喜多氏の後継として佐藤古都氏を出馬させたが、佐藤氏の獲得票数は3万3903票で、天風氏より1万票も多かった。

不振は天風氏だけではない。2017年の都議選当時は55名だった都民ファーストだが、音喜多氏をはじめとして5名が党の運営に不満を示して離党した。残りの50名は党内に残ったが、その多くが小池旋風のおかげで議席を得たと言って良い。

来年の都議選でも大きな風が吹かなければ、彼らはどうなるのか。知事選で大量得票したものの、来年の都議選で小池知事にそのような風を起こす力がなければ、都議会の構図がガラリと変わる可能性もある。

意外な健闘を見せた「日本維新の会」

一方で都民ファーストの会が台頭した煽りを喰って議席を激減させた自民党は、今回の都議補選で4選挙区の全てで勝利を収めた。しかし意外な健闘を見せたのが、日本維新の会だった。

参議院選挙に転出した柳ヶ瀬裕文参議院議員の後継として出馬した松田龍典氏は都議補選で次点となったものの、7万9049票を獲得した。2017年の都議選で日本維新の会が獲得した票は柳ヶ瀬氏の2万1460票で、大きな躍進が見てとれる。

その一助となったのが、都知事選に出馬した小野泰輔前熊本県副知事への推薦だ。都知事選が6月18日に告示されると、26日の都議補選の告示まで都議補選のための政治活動が禁止される。だが都知事選に候補を立てておけば、選挙運動とともに都議補選の運動も可能になるからだ。

小野泰輔氏公式サイトより

小野氏には候補者擁立に悩む自民党東京都連も触手を伸ばし、衆議院選出馬の可能性も含めて推薦を打診していた。しかし小野氏が選んだのは海城高校で同級生だった柳ヶ瀬氏が所属する日本維新の会だった。

日本維新の会からは同じく海城高校同窓の音喜多氏の他、鈴木宗男参議院議員や石井苗子参議院議員などが小野氏の応援に駆けつけた。選挙カーには大阪府の吉村洋文知事の顔写真が貼り付けられ、選挙公約にも「IR推進」などが入れられて維新カラーに染められた。

その結果、予想を上回った健闘となった。小野氏は61万2530票を獲得し、供託金没収ラインとなる有効投票総数の10%を突破できなかったものの、昨年の参議院選で東京都選挙区に出馬した音喜多氏が獲得した52万6575票を8万6000票も上回ったのだ。

もっとも日本維新の会の上昇気流は4月19日に行われた目黒区長選でも見てとれた。日本維新の会公認の医師の田淵正文氏が1万8588票を獲得し、5期目の当選を果たした青木英二区長の得票数3万178票の6割にまで迫っている。

維新は関東でも勢力拡大へ

こうした中、次期衆議院選挙で日本維新の会が東京ブロックで議席を確保することは確実と見られており、神奈川県でも勢力を拡大しつつある。その一例が6月27日に立ち上げられた政治塾だ。

神奈川維新政治塾は次期衆議院選や地方議員選挙への出馬希望者を発掘することを目的とし、半年間で6回の講演を行う予定。第1回目には馬場伸行幹事長が講演し、地方議員など50名の受講生が参加して話題となった。

日本維新の会神奈川県総支部には松沢成文参議院議員と串田誠一衆議院議員の2名が所属しており、同じく参議院議員2名を擁する東京都総支部と同様に、いわば日本維新の会の関東での勢力展開の足掛かりともいえる。

松沢氏は昨年参議院選で57万5884票を獲得しており、みんなの党から初出馬した7年前の参議院選よりも票数を減らしたものの、61万5417票を獲得した公明党の佐々木さやか参議院議員に4万票差まで迫った。なお自民党は島村大参議院議員が単独で出馬したものの、その得票数は100万票に届いていない。

「次の衆議院選では日本維新の会が台風の目になるのではないか」

かつては「維新は関西ローカルだ」と高をくくっていた永田町でも、このような声が大きくなりつつある。

実際、内閣支持率は今年に入ってじりじりと下げており、NHKが6月に行った調査では36%で都議選で自民党が歴史的な大敗をした2017年7月以来の低水準。不支持率は49%で、過去最高を記録した。

一方で来年10月までの衆議院の任期は迫っており、麻生太郎副総理兼財務大臣が6月1日に内閣支持率グラフを持参して官邸に入り安倍晋三首相と懇談するなど、解散のタイミングをめぐる動きは活発化。仮に自民党が議席を大きく減らせば維新に頼るしか術はなく、自公維連立の可能性も否定できない。

そのような中で都知事選や都議補選で日本維新の会が躍進した意味は非常に重い。夏にも政局は大きく動きそうだ。