イギリスやイタリアをはじめとするヨーロッパ各国で、突然の高熱や手足の腫れ、血管の異常といった症状を呈する「川崎病」の症状を示す子どもたちの数が増加していると報告されています。これらの子どもたちの中には新型コロナウイルスの検査で陽性となったケースもあるそうで、川崎病の増加が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と関連している可能性も示唆されています。

Italy, UK explore possible COVID-19 link to child inflammatory disease - Reuters

https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-britain-syndrome/italy-uk-explore-possible-covid-19-link-to-child-inflammatory-disease-idUSKCN2292JM

Coronavirus and Kawasaki disease in children: it's an intriguing but unproven link

https://theconversation.com/coronavirus-and-kawasaki-disease-in-children-its-an-intriguing-but-unproven-link-137415



川崎病は主に5歳以下の子どもでみられる病気であり、年長の子どもが発症する例は少なく、成人はほとんど発症しません。1967年に日本赤十字社中央病院に勤務していた川崎富作氏が報告したことから「川崎病」と名付けられ、北東アジアで最も一般的なものの、ヨーロッパを含む世界各国で患者が確認されています。日本では年間数千人から1万数千人ほどが発症しており、女児よりも男児に多い傾向がみられるとのこと。

一般的に川崎病は血管に炎症を起こすとされており、免疫の過剰な活性化に起因するといわれています。川崎病の原因が感染症なのか自己免疫疾患なのかは特定されておらず、診断は患者が示す症状に基づいて下されます。川崎病の主な症状は以下の通りです。

・長時間の発熱

・発疹

・目の充血

・四肢の末端が赤くなり堅く腫れる

・唇や舌が赤くただれ(いちごのような舌)、痛みや腫れが出る

・首のリンパ節が腫れる



川崎病では心臓の血管で炎症が発生し、冠動脈の血管壁が損傷を受けて川崎病性冠動脈瘤が形成される重症例もあり、時には死に至るケースもあります。血液製剤を用いた免疫グロブリン療法を早期に行うことで冠動脈の肥大を予防することが、川崎病の治療において重要だとのこと。

一般的に川崎病は急性炎症性疾患であり、再発することはめったにありませんが、冠動脈に深刻なダメージを負った患者は生涯にわたって心血管疾患のリスクを持ち続けるそうです。この場合、成人後も薬を服用するなどして、心臓発作などのリスクを弱める必要があります。



新型コロナウイルスのパンデミックの最中、イタリア北部の医師は川崎病とみられる症状を示す9歳未満の子どもが増加していると報告しています。同様の例はイギリスやスペイン、ポルトガルなどのヨーロッパ各国で確認されており、患者のうち数人は新型コロナウイルスの検査で陽性だったとのこと。

例年の数倍以上もの子どもたちが川崎病に似た血管炎の症状を示していることから、イギリスの国民保健サービス(NHS)は臨床医に対し、新型コロナウイルスと川崎病の関連について検討するように通知しています。イングランドのNHS代表であるStephen Powis教授は、「私たちは子どもたちと若者のため、全国の臨床ディレクターに川崎病と新型コロナウイルスの関連を緊急の問題として検討するように依頼しました」と述べましたが、現時点では新型コロナウイルスと川崎病の関連は定かではないと指摘しました。

なお、新型コロナウイルス感染症で重症化する患者の中には、血液や血管に問題が発生しているケースが報告されています。

新型コロナウイルス感染症で重症化する患者は「血液」に大きな問題が発生している可能性 - GIGAZINE



小児科医は50年以上にわたって川崎病について調査しており、細菌やウイルスの感染、カーペット洗浄剤などが原因になっている可能性が指摘されています。また、2004年には川崎病の症状を示す乳児11人のうち8人からNL63と呼ばれるコロナウイルスが発見されたとの報告もありますが、この結果はほかのグループでは再現できなかったとのこと。

新型コロナウイルスに感染することで子どもたちが川崎病になるとの結論に飛びつくには、依然として症例の詳細が少なく、全ての子どもたちが新型コロナウイルスの検査で陽性だったわけでもないことから時期尚早です。また、今回のケースで川崎病の症状を示した子どもたちは典型的な川崎病患者よりも年上だとのこと。その一方で、新型コロナウイルスへの感染が患者の体の防御反応を弱め、別の細菌に感染したことで川崎病が引き起こされた可能性もあると専門家は指摘しています。

新型コロナウイルスに関しては未だにわかっていないことも多いものの、「子どもはCOVID-19が重症化しにくい」との指摘もあり、川崎病の症状を示す子どもも全体から見れば少数です。それでも、子どもが深刻な症状を示している場合は、COVID-19のパンデミックであろうとなかろうと、すぐに親は子どもを病院に連れて行くべきだと専門家はアドバイスしました。