多くの人が気にする体脂肪率だが…

写真拡大

連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』41限目」

「THE ANSWER」の連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』」。現役ボディビルダーであり、「バズーカ岡田」の異名でメディアでも活躍する岡田隆氏(日体大准教授)が日本の男女の“ボディメイクの悩み”に熱くお答えする。41限目のお題は「体脂肪の理解すべき知識」について。

 ◇ ◇ ◇

 Q.マラソン、ウルトラマラソンが趣味の男性です。体脂肪率を測ると20%近くと女性並みに高く、ガッカリします。筋トレをすれば体脂肪率は落ちますか?

 まず理解してほしいのは、体組成計で表示される体脂肪率は推定値であり測定値ではない、ということです。

 体重は質量を、身長は長さを測るスケールが明確にあります。一方、体脂肪率は、一般的な人間を元に作り出した推定式に当てはめて算出します。つまり、一般的な人であれば体脂肪率をわりと推定しやすいだけであり、定量的に測定された確定された数値ではありません。ですから、数値が高く出ても実際には低いということはあり得ます。

 私自身の話をしましょう。私が競技者として続けているボディビル競技では、大会に向けていかにして体脂肪を減らすかを重視。“体脂肪ゼロ”に近づくような減量を行い、体を仕上げます。しかし、6年前、大会前日に体組成計(ジム仕様の高性能といわれる機種)で計測すると、出てきた数値は「体脂肪率20%」。腹をつまむと、ほぼ皮しかつまめない状態だったのに「20%」です。

 身長165cm、体重70kgだった私はおそらく、一般的な方程式に当てはめると“肥満推定”になったのでしょう。ちなみに、翌日の大会では優勝しています。結局、“ほぼ筋肉しかついていない”という体は一般的ではないので、推定できなかったのではないかと考えています。

 質問者の方も見た目が絞れているのであれば、体脂肪率が高く表示されたからといって、心揺さぶられることはありません。だいたい、20%近く体脂肪がついていたら、ウルトラマラソンで速く走ることもできないでしょうし、究極の持久的競技を行っているのだから一般人に括られる必要なんてありません。

高橋尚子さんは「体脂肪率2%」ってホント?

 もし、脱いだ時に体がのっぺりしていて恥ずかしい、というのであれば、筋トレで筋肉にメリハリをつけて、引き締まった体に見せるのもいいでしょう。体脂肪を低くするのではなく、低く見える体を演出するという効果を狙うパターンですね。

 ただ、体脂肪率を下げたいのであれば、筋トレよりも走る距離を稼ぐ方が効率はいいでしょう。もっと言うといらない筋肉をつければ、走るスピードが落ちる可能性もあります。

 元マラソンランナーの高橋尚子さんは以前お会いした時に「私、体脂肪率2%なんです」と言っていました。私が「そんなのあり得ませんよ」と言うと、周囲に国民栄誉賞の方に何を言っているんだと突っ込まれましたが、国民栄誉賞と体脂肪率は関係ありません(笑)。2%なんて、推定値だし、しかも誤差でしょう、と思いました。

 しかし、さすが国民栄誉賞、彼女の場合、体脂肪率の推定方法も我々とはまったく異なります。MRIで頭の先から足先までを撮影したそうです。おそらく多くの画像から体脂肪の体積を推定して算出したのでしょう。それなら正確性が高いのは確かです。それでも、「2%」という数値より「体脂肪はほぼついていない」という表現の方が正確でしょう。

 私が高橋さんとお会いして何より驚いたのは、体脂肪率ではなくふくらはぎです。高橋さんのふくらはぎは、めちゃめちゃデカく、かつ絞れている。つまりマラソンの原動力は脚であり、そこにエンジンが集中しているという証です。

 私が思うに、上半身は細くてもふくらはぎの筋肉は重量感があるというのが、長距離ランナーとしての最強の体形なのでしょう。せっかくマラソンが趣味なのであれば、「体脂肪が高い」と気にするよりも、「もっといい記録を狙おう」というポジティブな考え方で、例えばパフォーマンスアップにつながる脚の筋トレをするなどの体作りに取り組んでほしいですね。

 ちなみに、体脂肪の増減を把握したい方は、腹まわりの定点観測をするとよいです。お腹は内臓脂肪がつく唯一のエリアであり、かつ皮下脂肪がもっとも厚くつくエリア。ですから、体脂肪の増減が自分でも推測できます。計測の方法は2つ。おすすめは、へその横の肉をつまみ、その厚さをみる方法。これは皮下脂肪厚法(または皮脂厚法)という計測法のアレンジです。指でつまんでもわかりにくいので「キャリパー」というスケールを使って計測しましょう。プラスチック製のものでしたら安価で手に入ります。

ボディメイクは「数値」が正解に導いてくれるわけではない

 もう一つは、ウエストのサイズをメジャーで計る方法。女性はウエストのくびれの高さ、男性はへその高さで計ってください。

 常々思うのですが、皆さん、数値に振り回されすぎです。

 よくテレビや雑誌で、体を鍛えている芸能人が「体脂肪率10%を切っています!」といったり、写真やイラストで「体脂肪〇%の体」などと称して体型を表現したりしますが、「いやいや(そんなに低いなんて)ありえないでしょ!」という方は、たくさんいますからね。10%を切るか切らないか、完全にイメージが独り歩きしていると感じます。

 そもそも、体脂肪率が低く表示されても、結果、自分のなりたくない体になってしまったら意味があるのでしょうか? 「体脂肪率10%切っているのに、全然カッコいいって言われないよ! ふざけるな!」と怒りますか? そんなの、バカバカしいですよね。私は体脂肪率20%と出ても翌日ボディビル選手権で優勝したので、もはや笑い話でしかありません。

 ボディメイクは、数値が正解に導いてくれるわけではありません。「一般的」といわれる数値と自分の体を比べ、「体脂肪率が高くて恥ずかしい」「体重が何kgだから恥ずかしい」と感じるなんて悲しすぎます。まず数字にとらわれないこと。そして、他人と比べないこと。身長も体重も骨格も違う人と自分を比べても、何の意義もありません。

 自分の体と向き合い、自分が美しいと思う体、納得できる体を目指せばそれでいい。数字の呪縛から解き放ってあげたい。そんな世の中になれば嬉しいです。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。

岡田 隆
1980年、愛知県生まれ。日体大准教授、柔道全日本男子チーム体力強化部門長、理学療法士。16年リオデジャネイロ五輪では、柔道7階級のメダル制覇に貢献。大学で教鞭を執りつつ、骨格筋評論家として「バズーカ岡田」の異名でテレビ、雑誌などメディアでも活躍。トレーニング科学からボディメーク、健康、ダイエットなど幅広いテーマで情報を発信する。また、現役ボディビルダーでもあり、2016年に日本社会人ボディビル選手権大会で優勝。「つけたいところに最速で筋肉をつける技術」「HIIT 体脂肪が落ちる最強トレーニング」(ともにサンマーク出版)他、著書多数。「バズーカ岡田」公式サイトでメディア情報他、日々の活動を掲載している。