「FROM JAPAN TO THE WORLD」とデカデカとコピーを掲げている

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ユニクロと無印良品とダイソーを合わせたような会社

なんてこった...。

コロンビア・メデジンについ先日オープンしたばかりの雑貨インテリアショップ「MINISO」の店舗に足を踏み入れた私は驚愕した。カップルから親子連れまで、無茶苦茶楽しそうに買い物を楽しむ客で溢れかえっていたのだ。

社名は「名創優品(メイソウ)」と言う。「中国系の会社?」と思う人が多いのではないか。実際そうで、日本にはあまり店舗がない(東京・高田馬場やイオンモールなどに5店舗出店)。

ところがオリジナル商品のパッケージには「Designed by Japan」と銘打たれ、店内のいたるところに「FROM JAPAN TO THE WORLD」とデカデカとコピーを掲げている。ほとんどの日本人が知らないブランドが、地球の裏側で、「日本押し」しまくっているのである。

「FROM JAPAN TO THE WORLD」とデカデカとコピーを掲げている

名創優品(店舗ブランド名・MINISO、メイソウ)は2013年、広東省広州からスタートした。中国全土に展開し、2016年に世界展開を開始。今や80か国に3600店舗を展開している。名創優品のCEOは中国人起業家の葉国富氏。資本や経営主体は中国にある。

そんな名創優品は「ユニクロ、無印良品、ダイソーを足して3で割った」ような中国企業として、数年前からネット界隈で騒がれてきたことで知られる。実際、日本を代表する人気ブランド企業3社をよくぞここまでミックスしたものを思いついたものだと感心してしまう。ある意味、見事なまでのコラボレーションである。

恐ろしい勢いで拡大中

なぜその中国企業がFrom Japanを掲げているかというと、実は東京・銀座でも会社登記がされており、文化服装学院出身の三宅順也氏という日本人がチーフデザイナーを務めていることによるらしい。だから日本企業ではなくても、商品はFrom Japanなのだというわけだ。

実はコロンビアを含む中南米では、一般的に日本企業の製品に対する信頼度はかなり高い。トヨタやホンダの自動車やヤマハのバイク、パナソニック、ソニーなどの家電製品のシェアがとにかく高いからだ。メイド・イン・ジャパンに対する絶対的信頼は色あせていない。

一方、中国企業の製品に対する評価は、「安かろう悪かろう」というものだ(ただし、ファーウェイのスマホを使っているコロンビア人も増えており状況は変わりつつあるが)。

そうしたことをわかってかどうか、MINISOは「中国生まれ」ではなく「ジャパンブランド」を押し出しながら、着実に中南米で店舗を拡大している。恐るべきなのは、前述した日本企業3社よりもずっと早く、世界市場を面で押さえてしまいそうなほどの勢いで展開していることだ。

ちなみにコロンビアにはユニクロ、無印、ダイソーの店舗は今のところない。

一方、MINISOはコロンビア国内に現段階で23店舗展開。私が住むメデジン市だけで6店舗あり賑わっている。また今年2019年3月にメキシコの首都メキシコシティに旅行に行ったコロンビア人から聞いた話でも、MINISOは至るところにあったそうだ。

事実、メキシコ国内に2018年末時点で約100店舗展開。2019年内に180店舗になると報告されている。

私は1年半ほど前にメキシコシティーに旅行に行ったが、その当時はMINISOはまったく見かけなかったので、途轍もない出店スピードだ。

数年以内にダイソーを凌駕しそう…

そこで、ダイソー(大創産業)、無印良品またはMUJI(良品計画)、ユニクロ(ファーストリテイリング)、MINISO(名創優品)4社の世界展開を比較してみた。

4社を比較して驚くのは出店している国の数だ。

名創優品がビジネスモデルの参考にしたとされる「本家」のダイソーは世界29か国に店舗を展開中。無印良品は28カ国、ユニクロは20カ国だ。3社とも日本国内やアジア圏においては圧倒的な勢いを持っているが、中南米を見ると店舗数は非常に少ない。

一方、名創優品は中南米はもちろん、世界80か国にも店舗を展開している。海外進出を始めてわずか3年で世界196カ国のうち4割を超える国に展開しているのだ。

メイソウ世界マップ
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日本企業はとても進出しないであろう小さな経済規模の国にも展開していて、ウクライナのキエフ市やリヴィヴ市、ジョージア、ミャンマーにまであるという。そして総店舗数でも、数年以内にダイソーを凌駕しかねないペースで成長しているのである。

名創優品に関連する最近のニュースを見ると、もはや一大企業となり始めていることもうかがえる。

2018年9月にはメッセージングアプリWeChat(微信)を運営する中国IT大手のテンセント(騰訊)とHillhouse Capital(高瓴資本)から10億元(約160億円)を調達している。また同年12月、名創優品は「2022年までに100カ国、1万店舗展開する」と公表している。

ブルームバーグの報道によると、近々、名創優品は香港もしくはアメリカでIPOし、10億ドル(約1700億円)の資金調達を計画中とのこと。

そしてさらにやばいと感じるのは、創業当初は明らかに低かったそのクオリティが、前述した3社に見劣りしないほど、格段に上がっていることだ。

なめていた…

今のMINISOのオリジナル商品のクオリティは、筆者の主観では、無印より商品のデザインは少し下だが、無印より価格は安い。ダイソーより価格は少し高めだが、デザインは少し洗練されている印象だ。

一体、名創優品の何が消費者の心を掴んでいるのか。私は地球の裏側のコロンビア・メデジンで名創優品の店舗で買い物をし、店舗にいた現地消費者に聞き取りを行った。

私がいつも週末に行っているショッピングモールに行ったところ、MINISOがオープンしていた。

店舗の外観はゆるキャラのぬいぐるみで埋め尽くされており、たくさん客が入っているのは店の外から見てもわかった。

ロゴデザインはユニクロにそっくり…。

そしてなんとなく既視感あるロゴが目に入る。ローマ字ではMINISOって書いてあるのにカタカナではメイソウ。どんな読みなんだ。そしてそのロゴデザインはやはりユニクロにそっくりだ…。

店舗内に足を踏み入れた。正直、事前には詰めの甘い雰囲気があるだろうと思っていた。だが、現実にはMINISOにはその様なものは感じられなかった。

確かにあちこち突っ込みどころ満載ではあるのだが、クオリティもきっちり「パクっている」。つまり、ユニクロ、無印、ダイソーのクオリティに引けを取らないほどの製品がズラリと並んでいたのである。なにも知らない外国人からしてみれば、これならば洗練された日本ブランドという印象を受けるのではないか。

洗練された内装。かなり、ユニクロっぽい。

店内には「今の生活が好き!だから、名創優品」というどこか無印チックなコピーのポスターが掛かっている。

内装はかなり凝ってる。「でもモノは安っぽいんだろうな」と若干上から目線で商品を手に取ってみたのだが…。

むしろ、イケてる…

驚いた。「なんだこれ。普通にイケてるじゃないか」と。

おしゃれなカトラリーセット8万4900ペソ(約3200円)

アロマディフューザー 10万9900ペソ(約4200円) パッケージがかなり無印。

プロダクトもかなり無印っぽい

財布4万4000ペソ(約1600円)

財布などはダイソーの財布より確実に質が高いと感じられる。価格は4万4000ペソ(約1600円)。縫い目がかなりしっかりしているし安めの財布にありがちな工場臭はしなかった。

Bluetoothのワイヤレスイヤホン8万9900ペソ(約3400円)

イヤフォンやヘッドフォン、スピーカーなどの家電小物も充実している。Bluetoothのワイヤレスイヤホンは8万9900ペソ(約3400円)

MINISOヘッドフォン

MINISOヘッドフォンで音楽を聞いてみることにした。着け心地は悪くない。スマホとペアリングして音楽を聞いてみたが音質も良い。

パソコン周りの危機も充実

フェイスローラー8900ペソ(約350円)

パッケージの裏側には日本語の説明書きが書かれているものが多い。もちろん中南米の人には日本語は読めないが、日本製をアピールするためなのか。

実際に買い物してみた

コロンビア・メデジンは湿度が低く肌や唇がカサカサになりやすいのだが、加湿器はほとんど売っていない。そこでミニ加湿器を購入。2万9900ペソ(約1100円)。USB経由で稼働するので仕事中も傍らで加湿し続けてくれ重宝している。

ミニ加湿器

私は大気汚染(メデジンでは今かなり深刻)のせいでぐんぐん伸びる鼻毛をカットするため眉ハサミ(鼻毛ハサミ?)を必要としていた。そこで眉ハサミを物色した。

普段、よく買い物をしているDollarCityでは爪切りと眉ハサミがセットで230円だった。MINISOでは眉ハサミのみで300円であり、価格ではDallarCityの勝ちだった。しかし結果としてMINISOを購入した。なぜかというとMINISOの方が高級感溢れ、モノが良さそうだったからだ。商品パッケージがまばゆいばかりの銀色で輝いていた。

名創優品の眉ハサミ8000ペソ(約300円)

右が古くなった眉ハサミで、左が名創優品の眉ハサミ。デザイン的に美しく、重厚感が感じられないだろうか。インテリアとして卓上に眉バサミを1つ飾るのも良いかもしれないと思うほどだ。ただ残念ながら切れ味はフツーだったのだが……。

右が古くなった眉ハサミ、左が名創優品の眉ハサミ。

ちなみに私はゴミ箱や食器、雑貨などちょっとした小物を購入する際は、前述したDollarCityという店で購入していた。多くのコロンビア人が私と同じだと思う。DollarCityに行ってみて、お目当ての物がない場合は中国人が経営する雑貨店に足を運んでいた。

DollarCityはカナダ企業Dollaramaが運営する店でコロンビア国内で91店舗展開されている。DollarCityで販売されている商品の価格帯は、特段高くもないし安くもなく、ほとんどMINISOと同じくらい。商品のデザインは平凡なもので、店のイメージとしてはホームセンターに近い。

飾り気のないDollarCity店内の内装

価格帯がほとんど同じなのであればより洗練されているオシャレな商品を購入したいというのが消費者心理だ。コロンビア人消費者がMINISOに殺到している理由は十分に理解できる。

コロンビア人が名創優品を支持する理由

コロンビア人消費者は名創優品についてどう思っているのか実際に話を伺ってみることにした。2人組の大学生。

ーー何を購入したのでしょうか?
アイスキャンディーメーカーとフェイスパック、弁当袋を購入しました。

ーーなぜMINISOに来たのでしょうか?
友達から「日本のものを売ってるおもしろいお店がある」と聞いて来ました。

ーー実際来店してみてどう感じてますか。
私たちにとってはこれまで見たことのないものがたくさんあって新鮮です。品質も高そうですし。

筆者はちょっと躊躇したが名創優品は実質中国企業であることを伝えることにした。

ーー実はMINISOは日本企業というより中国企業です。
えっホント?知らなかった...騙された...。

ーーそれでもMINISOの商品を購入しますか?
そうですね。ちょっと騙された気はしますがデザインはかわいいし品質は良さそうなので購入します。

彼女たち以外にも10数人のコロンビア人にも同様の聞き取りを試みたが概ね「比較的安めでかわいい、洗練されたデザインの商品もしくはコロンビアではあまり見かけなかった珍しい商品が購入できる」のがMINISOに来店した主な理由だった。

MINISOに来店したコロンビア人の一般的な購買行動を再現すると以下のような感じ。

ショッピングモールを歩いていると沢山人が入っておりガヤガヤ感のある店(MINISO)があった。「一体何の店だろう」と来店してみるとこれまでみたことのない「かわいらしい」小物がたくさんある。以降、何度もリピートして来店。

「日本」を押し出し品質の良いブランドだと訴求するのが名創優品の成功に貢献した側面は確実にあるだろう。

さらにこれまでなかった「手頃な価格帯✕洗練されたデザイン、品質の良い商品」ゆえに名創優品はコロンビア現地消費者の支持を得ている。消費者への聞き取りでそう理解できた。

「オリジナル商品」で競争優位性を磨く名創優品

名創優品のやり方が果たしてモラル的に良いかどうかは賛否両論があるだろう。

たとえば「商品パッケージから店内の内装にまで意図的に日本語を使いまくって日本ブランドと認知させるようなやり方はあくどい」という批判的な意見はある。

一方で、「過去にも日本企業を含め世界中の企業には別の国の他社のコンテンツをパクって発展してきた例も多いでしょ。だからこれもOKじゃないの」「日本料理店やってる韓国人は世界中にいる。ビジネスてそういうもんでしょ」という容認的な意見もある。

実際、名創優品の経営戦略がセーフなのかアウトなのかは私には判断しかねない。ただ、私は個人的には名創優品が「パクリかどうか」という議論にはあまり興味がない。

それよりも名創優品がMINISOというブランドをさらに洗練されたものへと変化させようとしている姿勢を垣間見、それを驚異的に感じる。たとえば名創優品は積極的に有名キャラクターとコラボした商品開発に取り組んでいる。

ハローキティ、アドベンチャー・タイム、ぼくらベアベアーズ、ピンク・パンサー、パントン、セサミストリート、マーベル・スタジオらと提携。これら提携企業のキャラクターを活用した商品開発を行っている。

米国の人気テレビアニメシリーズ「ぼくらベアベアーズ」のキャラクターをモチーフにした歯ブラシ9900ペソ(約370円)

米国の人気テレビアニメシリーズ「アドベンチャー・タイム」ののキャラクターをモチーフにしたスプーン・フォークセット1万5900ペソ(約600円)

日本人からすると馴染みのないキャラクターだが、コロンビアでは米国のアニメは結構視聴されているので、これらのキャラクターに馴染みがある子どもも多い。店内にいる子どもを観察しているとこれらのキャラクターグッズを購入しようと手に持っている子どもがたくさんいた。

またノルウェーのデザインスタジオPermafrostとコラボしてデザイン性の高いインテリアや家電などの商品を開発している。シンプルなデザインが特徴だ。

ワイヤレススピーカー9万4900円(約3600円)

名創優品CEO葉国富氏は2017年のインタビューで名創優品の起業のキッカケについてこう語っている。

葉国富氏は世界各国を旅し小売店を見て回る中で日本の100円ショップにアイデアを得た。またミニマリズムの流行の兆しも感じ取った。そこで100円ショップとミニマリズムのコンセプトを組み合わせシンプルで質の良い商品を販売する名創優品のコンセプトが生まれた。

当初はダイソー、無印、ユニクロを混ぜた良く分からない「パクリブランド」と呼ばれた名創優品。しかし、物凄いスピードで進化を遂げている。

もはや「そっくりブランド」ではない

葉国富氏の話によると名創優品では200人のバイヤーが最新トレンドを掴むべく世界中の都市を巡り新たな商品開発のための買い付けやアイデア獲得に動いているという。

バイヤーから次々提案される商品アイデアはチーフデザイナー三宅順也氏やノルウェー、スウェーデン、デンマークのデザイナーで構成されるデザインチームが審査する。その審査をくぐり抜けたアイデアが新たな名創優品の商品企画として上がるとのこと。

そして、消費者が店舗に来るたびにサプライズを感じてもらえるよう、7日ごとに商品ラインナップを更新しているというのだ。

こうして名創優品はオリジナル商品を矢継ぎ早にリリースし競合他社に勝る競争優位性を築き始めている。

グローバルに見ると、とりわけダイソーや無印やユニクロがまだ出店していない地域においては、名創優品は「日本そっくりブランド」などとはまるで認識されていない。もはや名創優品こそが「本家」として現地消費者から認知される基盤が出来上がっているようにさえ思われる。名創優品の起業から現在にいたるまでの詳しい経緯については、私のブログ記事を参照いただきたい。