■当たり確率10%なら、10回引けば当たる?

スマートフォン向けのソーシャルゲームで人気の「ガチャ」。カプセルトイの「ガチャガチャ」のスマホ版で、1回数百円を課金し、ほしいキャラやアイテムを引き当てるゲームだ。何が当たるかは運次第なので、お目当ての品を獲得するにはけっこうな金額を払うことがある。そのため規制問題が取りざたされてきた。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/takasuu)

今回は、このガチャを例に確率について考えてみたい。最近のガチャは出現確率が表示されているものが多い。たとえば、あるアイテムの出現確率が10%だとしよう。このアイテムをゲットするためには何回トライすればよいだろうか。

「確率10%だから、少なくとも10回引けば手に入る」。そう考えたならば、間違いである。これは多くの人が誤解しやすい確率のワナだ。実はガチャを10回引いて当たりが出る確率は65.1%なのだ。なぜ? と不思議に思うかもしれない。どういうことか見ていこう。

ここでは計算しやすい方法として、「当たりの確率=全体−ハズレの確率」と考える。10回連続でハズレる確率を算出し、それを全体(100%)から引き、当たる確率を出すという手法だ。

10%の確率で当たるということは、90%の確率でハズレるということだ。つまり、1回目にハズレる確率は90%である。2回連続でハズレる確率は、その90%のうちの90%だから、「0.9×0.9=0.81(81%)」となる。3回連続でハズレる確率は、「0.9×0.9×0.9=0.729(72.9%)」。というように計算していくと、10回連続でハズレる確率は、「(0.9)10=0.349(34.9%)」となる。

つまり、10回引いて当たりが出る確率は、「100%−34.9%=65.1%」ということになる。この数字をどう見るのかは、人によってさまざまだろう。「10%の確率なのに、案外当たらないものだな」というのが一般的な感想かもしれない。しかし実際は、当たらないときはとことん当たらず、22回連続でハズレる確率は10%、44回続けてハズレる確率もわずか1%ながらありうるのだ。

さて、以上のことから得られる教訓は何だろうか。今回のポイントとしてまず押さえておいていただきたいのは、10%の確率で当たる場合、6、7回目でようやく当たる確率が50%程度になるということだ。これは逆の見方をすると、9割の確率で当たらないものであっても、6回か7回がんばって続ければ、約50%の確率で当たるということである。

■諦めずに粘り強くがんばること

ビジネスに置き換えて考えてみよう。テレアポや飛び込み営業は非常に難しい営業手法だ。仮に、ある商品を飛び込みで販売するとして、売れる確率が10%だとする。ガチャと同じように、とにかく10軒回れば、1つは売れる可能性が約65%ある。軒数を増やせば、それだけ売れる確率は高くなる。したがって、10軒ダメでも諦めずに粘り強くがんばることが大切だ。

ただし、非常に運が悪い場合は、22回連続で売れない確率も10%ある。さらには44軒連続で回っても1つも売れない確率が1%ある。「運が悪かった」と言い訳したいところだが、1%はとても小さい確率ではある。売れない理由が何かあるかもしれないと考えることが合理的だ。改善策をきちんと考えるべきだろう。

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堀口智之
和から 代表取締役
山形大学理学部物理学科卒業。2010年、大人のための数学教室「和(なごみ)」を創業。月間600人を超える社会人が学ぶ。著書に『「データセンス」の磨き方』がある。

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(和から 代表取締役 堀口 智之 構成=田之上 信 写真=iStock.com)