現役を引退したマリナーズ・イチロー【写真:Getty Images】

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サイ・ヤング賞のポーセロ「打ち取るには最高のチェンジアップを投げるしかない」

 21日のアスレチックス戦(東京ドーム)を最後に現役を引退したマリナーズのイチロー外野手。数々の偉業を達成したレジェンドにはチームメートのみならず、他球団の選手も最敬礼で見送る一方で、天才打者の引退にホッと胸をなで下ろしている投手もいる。

「リック・ポーセロはイチロー・スズキの引退を見送ることを悲しまない」と特集したのは地元紙「ボストン・グローブ」だった。

 レッドソックス右腕ポーセロは2016年シーズンに22勝を挙げ、サイ・ヤング賞に輝いた名手。昨季は17勝7敗でワールドシリーズ制覇に貢献している。だが、イチローとの通算成績は33打数13安打。打率.394と背番号「51」のお得意様状態だった。

「彼は本当に独特な打者だった。彼はボールを引きつけて、レフト線上にヒットを打ってくる。インコースギリギリにファストボールを投げることができれば満足なんだけれど、それでも彼は打ち返してしまうんだ」

 ポーセロは天才打者との対決をこう振り返ったという。ツーシームを軸にする30歳にとって、イチロー攻略は至難だった。

「彼にはフライを打ち上げて欲しかった。ほとんどの打者にはそんなことを思わないけれどさ。彼はただただ、問題を突きつけてくるんだ。打ち取るには最高のチェンジアップを投げるしかない。さもなければ、彼はストライクゾーンの全てを網羅してしまうんだ」

中継ぎ右腕ワークマンもイチローへの悪夢が…

 ベストな軌道を描くチェンジアップ以外では打ち取れないと、ポーセロは嘆いていたようだ。

「あんなふうに打つ人は他にいない。彼は僕にとって試練だった。でも、たくさんのピッチャーにとってもそうだった」

 ポーセロはイチローの恐ろしさを改めて振り返る一方、レッドソックスの中継ぎ右腕のブランドン・ワークマン投手にも忘れられないイチローの悪夢があった。

 通算7打数2安打のイチローがヤンキース時代の2013年9月8日。ルーキー時代のワークマンは打ちのめされたという。

 3-3で迎えた9回裏。イチローはワークマンから中前打で出塁。そして、盗塁と犠牲フライで三塁に進んだ。韋駄天で鳴らした背番号「51」のスピードというプレッシャーにさらされたのだろうか。ワークマンは正念場でまさかの暴投。イチローは決勝のホームを踏んだ。

「サヨナラ暴投。試合を終えるには素晴らしい形とは言えないね」。ワークマンはこう振り返ったという。

 昨季のワールドシリーズ王者の脳裏にもイチローの脅威は深く刻まれているようだ。(Full-Count編集部)