たとえ古くなって壊れてしまったように見えても、実はメンテナンスを行うことで機械の機能が復活することはよくあるもの。およそ30年前に作られたとみられ、360度どこから見てもサビサビで朽ち果ててしまったように見える工具「万力」をパーツ単位まで徹底的に分解し、ピカピカに洗浄して新品さながらの状態にまでレストアしてしまうムービーでは見事なテクニックを見ることができます。

Rusty Deadlocked Vise - Perfect Restoration - YouTube

今回レストアするのは、スイスの工具メーカー「GRESSEL」の万力。



YouTubeのコメント欄によると、このタイプの万力は1991年まで製造されていたことが確認されているとのこと。少なくとも27年より前に作られた万力は見事にサビが浮いた状態で、このまま使えるとは全く思えない状態。



ハンドルを回す軸の付け根では、本来あったはずの半円状の部品がネジごとなくなってしまっています。



部材を挟む口金の部分も、まっ茶色にサビきっています。



本来なら前後に移動して部材を挟む「あご」の部分も完全に固着してビクともしない状態。



ここで取り出したのが、防錆潤滑剤のWD-40。日本ではKURE 5-56と並んで機械メンテの現場でよく見かけるスプレー剤ですが、パーツクリーナー的な色合いが強い5-56に比べてWD-40は「サビさせないための潤滑剤」という特性を備えています。なので、本当は5-56を使った方が効果は高そうですが、作業者が住むスイスで入手するのは難しそう。



WD-40をサビまくっている万力に吹き付け……



ハンマーで叩いて分解しようとしますが、頑固なザビには全く歯が立たず。



仕方ないので、巨大な2本のネジを使い、力ずくで分離を試みます。



可動部の分離が終わり、「すべり面」を確認すると状態は悪くなさそう。



固着していた口金はインパクトドライバーでネジを緩め……



ハンマーとポンチを使って分解。



このようにして、全てのパーツの分離に成功。



表面にあるサビの破片やゴミをこそぎ落とし……





ブラシでサビをあらかた落とし……



洗浄剤と水を使って汚れを洗浄。



平面仕上げされていた部分は、まず金やすりで荒く表面を整え……



ブロックに巻き付けたサンドペーパーで表面を仕上げ。



すべり面など、平滑度が求められる部位にはオイルストーン(油砥石)を使って平面を出していきます。



使えなくなったネジ部は、一度ドリルで穴を開け直してからネジ山を切り直す作業が行われる場合も。



次の作業に向け、取り出したのはアルミテープ。



この次の工程では、金属の表面にエアーで細かい研磨材を吹き付ける「サンドブラスト」を行います。表面の汚れを全て吹き飛ばしてしまいますが、その際にすべり面などせっかく磨き上げた部分を台無しにしてしまわないよう、アルミテープで保護するというわけです。



専用のマシンに入れ、研磨剤を吹き付けるとサビや汚れがみるみるうちに落ちていき……



こんなふうにピカピカの状態にまで復活。



アルミテープのおかげで、肝心のすべり面などは無事。



なお、金属のサビを落とすための道具として、レーザー光を照射してサビを高温のプラズマ状態にして吹き飛ばす「P-Laser」と呼ばれるものがありますが、今回の作業では使われていない模様。その理由は不明ですが、一つには「1台あたり500万円以上」ともいわれる高価な機材ということもあるのかも。

レーザー光を照射してキズ1つ付けることなく金属のサビを落としてキレイにする驚きのレーザークリーナー - GIGAZINE



表面を脱脂し、緑色のペンキを塗ってサビ止めと仕上げを行います。



メーカー名など、細かい部分はブラシやつまようじを使って作業。



硬度が要求される部品は「焼き入れ」を行います。ガスバーナーで300度以上に熱してから……



菜種油に「ジュッ」と浸して熱処理を行います。



部品の仕上げが完了し、あとは組み付ける状態にまで到達。



可動部を保護するため、大量のグリスを塗りつけ……



すべり面にもグリスを塗り、可動部を取り付け。いよいよ万力が在りし日の姿に戻ろうとしています。



ハンドルを回すと、見事に可動部がスルスルと閉じて行き……



見事、サビサビだった万力は新品さながらに生まれ変わりました。



粗大ゴミ寸前だった、真っ茶色の鉄くずが……



ピッカピカのキレイな万力として復活。



口金部分は、作業者の好みで少し違うタイプの新品パーツに換装。見事に現役の万力へとレストアが完了しました。