5年にもわたる泥沼の戦いを繰り広げてきたAppleとSamsungの特許侵害訴訟で、アメリカ・カリフォルニア州の連邦裁判所は、SamsungがAppleの特許権を侵害したと認めた上で同社製スマートフォンの販売を差し止める決定を下しました。

U.S. Court Backs Apple Motion in Patent Case Against Samsung - Bloomberg Business

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-01-19/u-s-court-backs-apple-motion-in-patent-case-against-samsung

Court bans Samsung from selling older smartphones you can't get anymore - CNET

http://www.cnet.com/news/court-bans-sale-of-old-samsung-smartphones-you-cant-get-anymore-apple-patent/

After five years of conflict with Apple, some Samsung phone features are banned | Ars Technica

http://arstechnica.com/tech-policy/2016/01/after-five-years-of-conflict-with-apple-some-samsung-phone-features-are-banned/

AppleがSamsungを特許侵害で訴えた訴訟で、2014年5月に陪審はSamsung側の特許侵害を認め、Appleへの1億2000万ドル(約144億円)の損害賠償を認定しました。しかし、Appleが主張していたSamsung製スマートフォンの販売差し止めについては、ルーシー・コー裁判長は「Appleが被った不利益は損害賠償によってまかなわれている」と述べて棄却していました。その判断を不服としたAppleは、米連邦巡回控訴裁判所に上訴したところ、2015年9月に米連邦巡回控訴裁判所は「競合相手による財産権の使用を排除する権利は重要なものであり、この排他性を維持する権利は、アメリカ合衆国憲法に由来する権利であり、特許権の本質である」と判断して、一審判決を破棄し、連邦裁判所に再審理を求めて差し戻していました。

そして、2016年1月18日に差し戻し審で、ついに「Samsungによる3件のApple特許侵害により、特許権を侵害する製品の販売差し止め」の決定が下されました。Samsungが侵害したと認定された特許は、「スライドでロック解除」「スペル自動補正」「クイックリンク」に関するもので、これらの技術を使用するSamsung製端末として、 Galaxy Nexus、Galaxy Note、Galaxy Note 2、Galaxy S2、Galaxy S2 Epic 4G Touch、Galaxy S2 Skyrocket、Galaxy S3などが挙げられています。なお、この決定の効力は、判決から30日後に生じますが、クイックリンクの特許に関しては、偶然にも2016年1月末日で特許権自体が消滅するので、Samsungはソフトウェア修正の義務を免れることになります。



今回の決定によって販売差し止めが認められた機種は、いずれも数年前に販売されていたスマートフォンであり、販売禁止の影響はSamsungに対してほとんど影響を与えないと見られています。しかし、特許権侵害によって製品の差し止めが認められたという事実は、Xiaomiを代表とする特許侵害の疑いが指摘されている中国メーカーのアメリカ市場進出に対するけん制にはなりそうで、Appleの今後の販売戦略上大きな意味を持ちそうです。

今回の決定に対してAppleは公式コメントを出していませんが、Samsungは、「Samsungの過去のスマートフォンを消費者が選ぶのに、Appleから横やりがはいったことに失望しています。今回の決定はアメリカの消費者にそれほど大きな影響を与えないでしょうが、今後の消費者の選択の幅をせばめるためにAppleが司法制度を悪用した例だと言えます」とコメントしています。

[Official Statement] Samsung's Response to Court Injunction - Samsung Newsroom

http://news.samsung.com/us/2016/01/19/official-statement-response-legacy-mobile-injunction/