首都圏で20年ぶりの大雪となった2014年2月8日夜、交通機関も大きな影響を受けた。その中でも京急は「東京電力からの電気の供給が不安定」という珍しい理由で約4時間にわたって全線で運転を見合わせた。

この日は電力使用率が14年の週末としては最も高い95%に達し、東電の基準では電力供給が「厳しい」状態だった。そのため、「事実上の計画停電」との憶測も流れたが、実際は、少し違ったようだ。

使用率は東電が「厳しい」と定める95%まで上昇

電力使用率は、最大電力(需要)をピーク時供給力で割った値。東電の「でんき予報」では90%未満を「安定的」、90%以上95%未満を「やや厳しい」、95%以上を「厳しい」、97%レベルを「非常に厳しい」と定めている。「非常に厳しい」状態になった場合は、計画停電のおそれがあるとして政府が「電力需給逼迫警報」を出す。

2月8日17時から18時にかけて、供給力4964万キロワット(kw)に対して最大電力需要は4750kwにまで高まり、使用率は95%に達した。95%に達するのは14年では1月15日以来2回目。ただし、1月15日は平日で、通常ならば電力需要が落ち込むはずの休日に95%に達するのは珍しい。2011年の東日本大震災後の冬シーズンでは初めてだ。また、休日で90%に達するのは13年12月23日以来約1か月半ぶり。

また、主に京急が走っている神奈川県をカバーしている神奈川支店の管轄エリアに限れば、この2月8日17〜18時という時間帯の需要は853万kwで13年度として最も多かった。

需給見通しでは「安定供給を確保できる見通し」だったが…

東電が13年11月1日に発表した13年度冬季の需給見通しによると、14年2月の需要予測は平年並みの寒さの場合で4870万kw、11年度並みの厳しい寒さの場合で4920万kwだ。これに対して供給力は、いずれの場合でも5424万kw。予備率(100%-使用率)は10%を超えており、「安定供給を確保できる見通し」だとしていた。

ところが、大雪が降った2月8日夕方の供給力は4964万kwと、かなり低い水準だ。東京電力広報部では、

「日々供給力は変動しており、必要な供給力を想定して調整している。想定した供給力の中で使用率が95%になったということ」

と話し、特段危険な状態だったわけではないとの立場だ。平日の供給力は5300kw程度で推移しており、工場の稼働が少なくなる土日は供給力を少なく見積もっていたようだ。

実は京急が運休になっていたのは、電力需要のピークの少し後だ。京急蒲田駅では、

東京電力から『安全な電力の供給ができない』旨の連絡が入っております。そのため京急線も全線にわたり運転を見合わせます」

とアナウンスされた。このアナウンスからは「電力不足で運転できない」とも理解できる。だが、結果的には若干ミスリーティングだったようだ。

電車は一度停電すると自動列車停止装置が作動して急ブレーキがかかる

京急広報課の説明によると、東電から供給される電力が不安定になり、横須賀地区を中心に10〜20秒停電しては復旧するという事態が頻発。電車は一度停電すると自動列車停止装置(ATS)が作動して急ブレーキがかかる仕組みになっている。このため、京急の総合司令所が「このままでは安全に運行できない」と判断し、19時55分から翌2月9日の0時5分まで全線で運転を見合わせた。

一方、東電広報部では、

「電力供給力が足らないことを理由に京急に電車を止めることをお願いした事実はない」

と説明。また、

「公共交通機関に限らず、2月8日は広域で停電を発生させてしまったことをお詫びしたい」

と陳謝している。

この間、ツイッター上では

「京急も\(^o^)/オワタ 東京電力のせいですwww」
「ついにここまで来たか」
「東電の電力供給が赤信号の模様。京急への供給削減で事実上の輪番停電実施」

といった声があがっていた。