アントニオ猪木(撮影:野原誠治)
 芥川賞作家の辻仁成が監督を務め、アントニオ猪木が初主演を務めた映画「ACACIA-アカシア-」。息子を失った元覆面プロレスラーと、親の愛情を知らない少年との心の交流を描いた感動作だ。今回は、自身も過去に娘を亡くした経験を持ち、本作で演技未経験ながら圧倒的な存在感を見せた、アントニオ猪木に出演の感想や、今後の目標を聞いた。

――猪木さんにとって「ACACIA−アカシア−」が、映画初主演ということですが、出演を決めたきっかけは何ですか?

アントニオ猪木(以下、猪木):俺は俳優じゃないから、どう料理してくれるのか面白そうだなと。後はとにかく、監督の辻さんの熱い想いが伝わってきて。要は、口説かれました(笑)。

――元プロレスラーという役だからこそ、オファーを受けたという事はありますか?

猪木:そこまで意識はしていなかったけど、実際演技をする時は昔を思い出して。それこそ、俺も身体はぼろぼろだし引退して時間も経ってるから、そういうものになるとまた別の思いがでてくるじゃないですか。

――リングにあがるシーンもありましたが、特別な想いはありましたか?

猪木:あまりリングには上がりたくなかったなーというのが本音(笑)。正直言って、身体がもう腰が悪くてね、膝も。だから動きのある演技が本当にちょっともしあったら困るなと思ってた。でも、今はすっかり回復しているので、今撮影できたらもっと動けたのにな。

――映画を拝見して、猪木さん演じる大魔神の住民とのやり取りがとても暖かくて優しい気持ちになりました。実際の現場の雰囲気はいかがでしたか?

猪木:ベテランの方から、子役まで色々な俳優さんが揃っていた現場でしたね。タクロウ役の林君は、俺の事をおじいちゃんという感じで慕ってくれていました。

――大魔神という役柄は、猪木さんよりも年配な72歳という設定ですが、演じる苦労はありませんでしたか?

猪木:自分の爺さんと昔はよく一緒にいたから、ブラジルに行ったりね。小さい頃は同じ布団で寝ていたし、爺さんはこんな感じだったなと思いながら演じました。

――団地という設定が、人間関係を描く上で重要なポイントになっていたと思ったのですが、いかがですか?

猪木:俺毎年ホームレスの炊きだしをやってるんですよ。もう9年目でね。本当は、「ホームレスなんかやってないでもっと頑張れ」ってそういう人には否定派だったけど、みんなそれぞれの事情があるんだなって今は思う。「猪木さん、すまねえ。こんな無様な格好見せたくないんだけど」って手を握ってくる人もいたり。

この映画に出てくる団地も、ある意味世の中から過去になっていく人達が集まっている場所で、その中で他人同士が力を合わせて生きている。そういう意味で、団地のシーンは好きですね。

――映画の終わりの方では、号泣されるシーンがありましたが、どのように感情を高めたのでしょうか?

猪木:泣くっていうのは一番難しいとは思ったね。本当に心の中から感情を高ぶらせて、自分の爺さんの式とか、亡くした娘の事とか色々思い出して。目薬じゃなくて本当の涙を流せたらと思いながらやってましたね。