山下リオと祷キララが過ごした「癒しの町」奈良県宇陀市の「宇陀タイム」とは? 不器用で愛おしい“寄り道”の物語
奈良県宇陀市の柔らかな空気感と、どこか不思議で愛おしい時間が流れる映画『トランジット・イン・フラミンゴ』。なら国際映画祭の映画製作プロジェクト「NARAtive」から誕生した本作は、恋人を失った女性、冷蔵庫を背負った女性、そして土地から離れられない男という、見知らぬ3人が織りなす「寄り道」の物語だ。公開を控え、主演を務めた山下リオさんと祷キララさんに、撮影の舞台裏やロケをした宇陀での日々について聞いた。
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山下リオ(左)/祷キララ 撮影:三宅史郎
映画『トランジット・イン・フラミンゴ』あらすじ
奈良県宇陀市。去っていった恋人の不在を抱えるサエ(山下リオ)は、亡き親友との思い出を探しに冷蔵庫を背負ってやってきたアカリ(祷キララ)、そして地元の町から離れられないまま日々を過ごすリュウタロウ(細川岳)と出会う。フラミンゴを探すという奇妙な目的のもと、1台の冷蔵庫と共に歩き出す3人。銭湯やラーメン屋、スナック……あてもない寄り道を繰り返すうちに、彼らは心の奥底に沈めていた本音を少しずつこぼし始める。
ヒューマン・ロードムービー
―― 一言では言い表せない不思議な余韻のある作品ですが、お2人はこの映画をもしお友だちに紹介するとしたらどんな言葉を使いますか?
山下リオ(以下、山下) うーん、そうですね……。一言で言うのは本当に難しいですけど、あえて言うなら「ヒューマン・ロードムービー」でしょうか。
祷キララ(以下、祷) 私は……タイトルの「トランジット」という言葉がしっくりきます。飛行機で目的地に直行するんじゃなくて、経由地で過ごす長い時間。効率的ではないけれど、その場所、その道筋でしか気づけないものに触れて、心がほどけていく。そんな映画かなと思います。
―― そもそも、お2人はどのような経緯でこの映画に出演することに?
山下 最初は河荑直美さんプロデュース、堀内友貴監督で、(細川)岳君が主演の別の企画があったんです。私は皆さんとお仕事ができるなら「ぜひ!」とお受けしていたんですが、いろいろな事情から、当初予定していた場所では撮れなくなり、脚本が「まるまる一冊」変わってしまって。それで、なぜか私が主演になり、キララちゃんが加わり、作風も全く違うものになりました。出演の経緯としてはかなり珍しいですよね(笑)。
祷 私はその企画が変わった後にオファーをいただいて(笑)。脚本を読んだら「冷蔵庫を背負っている」って書いてあって(笑)、「これ、やってみたい!」と直感的に思いました。
適当に喋っていたところが使われていて
―― 劇中では、細川さんも含めた3人の空気感がとても自然で魅力的でしたが、演出によるものなのか、それともアドリブ的な要素が強かったのでしょうか。
山下 アドリブ、めちゃくちゃ多かったよね(笑)。
祷 そうですね! というか、私たちが適当に喋っていたところがそのまま本編に使われていたりします(笑)。
山下 堀内監督は、現場で生まれるものをすごく大切にしてくださる方。最初に役柄についてガッツリお話はしましたけど、現場に入ってからは私たち3人のチューニングが合っていくのを信じて任せてくれました。私、この映画の空気感を「宇陀タイム」って呼んでいるんです。
―― 「宇陀タイム」?
山下 撮影をした宇陀という土地に、早くもなく遅くもなく、でも独特のゆっくりした流れを感じていました。そして、その流れの中で自分に帰れるような時間が生まれる。次第に3人のチューニングが合っていって、だからこそあんな「あり得へんこと」がスッと入ってくる映画になったんだと思います。
宇陀には撮影の後に両親と再訪しました
―― 皆さん、宇陀には2週間ほど滞在されたそうですね。
祷 私は撮影した2年前はまだ自動車免許を持っていなかったので、空き時間は駅でレンタサイクルを借りてブラブラしていました。新緑の時期で、道にまで伸びてきた草に当たりながら自転車を漕いで。そして湖や山を眺めているうちに、「私ってちっぽけだな」って思ったんです。それは寂しいんじゃなくて、すごく安心できることとして入ってきたんです。いろいろ気負っていたものから自由になって、フラットになれる場所でした。
山下 宇陀は「癒しの町」ですよね。薬草や薬湯でも有名ですけど、神社一つとっても歴史が深くて、そこに行くだけでエネルギーをもらえる気がしました。私は撮影が終わった後、実は両親を連れて宇陀に旅行に行ったんです。
祷 そうなんだ。
山下 別の作品の撮影でボロボロになっていたときで(笑)、あの宇陀の癒しを両親にも紹介したくて。旅館に泊まって、ただ両親と散歩しました。何があるってわけじゃないんですけど、本当に心が浄化されるんです。まだ観光地として「バレていない」良さというか、汚れが一切ない空気感が最高でした。
楽しかった撮休日の鍾乳洞
祷 撮影中には、リオさんの運転で岳さんと3人で鍾乳洞に行きましたよね! あれは「別編トランジット・イン・フラミンゴ」っていうくらい面白かった。
山下 私が自分の車で奈良入りしていたんです。撮休の日に車で1時間少しのところにある面不動鍾乳洞(天川村)というところに一人で行くつもりだったんですけど、2人を誘ったら来てくれて。そこは鍾乳洞の入り口まで森をトロッコに揺られて登っていくんです。
祷 まるでアトラクションみたいなんです。ヘルメットをかぶって、雨の中トロッコで急勾配を登って行った(笑)。とても楽しくて、3人でずっと大笑いしていました。
山下 そうそう。
祷 あの日の体験があったから、私、撮影が終わってからすぐに免許を取りました! 自分で運転してその土地を回れるようになれば、もっといろんなことが知れるんだなって、リオさんに感化されたんです。
岳君が話しかけても全然聞いていない
―― 最後に、この映画のお2人の「お気に入りのシーン」を教えてください。
山下 3人で飲んでいるシーンですね(笑)。酔った岳君が「聞いて、聞いて」って話しかけてるのに、私とキララちゃんはツボに入っちゃって笑いが止まらなくて、全然聞いてないところ(笑)。あれは本当にただ笑っているだけなんです。だけどあの、お芝居で再現しようとしてもできない空気感は、この3人ならではだったなと思います。
祷 私は、最後のほうである衝撃的なことがあったあと、サエ(山下)が一人でズンズンズンッて歩いて去っていく姿です。すごく心に来ました。3人でいながらも、それぞれが立ち入れない孤独を抱えていることが伝わってくる。あのショットがあるからこそ、その後の会話やラストの空気感がより豊かなものになっていると思います。
山下リオ(やました・りお)
1992年生まれ、徳島県出身。2007年、12代目リハウスガールとしてデビュー。以降、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。近年の主な出演作に、映画『あのこは貴族』『母性』『零落』『ペナルティループ』『雪子a.k.a』などがある。近作に『遺愛』(6月公開)など。
祷キララ(いのり・きらら)
2000年生まれ、大阪府出身。幼少期より俳優活動を開始。出演作『堀川中立売』で注目を集める。映画『左様なら』『サマーフィルムにのって』『やまぶき』『HAPPYEND』など話題作に出演。
(山下リオ)
ヘアメイク:徳永舞/スタイリスト:町野泉美
トップス、スカート、ピアス すべてBASICKS/靴 スタイリスト私物
(祷キララ)
ヘアメイク:山口恵理子/スタイリスト:和田ミリ
トップスOPEN SESAME CLUB/ラップスカートROLF EKROTH/シューズADIEU
『トランジット・イン・フラミンゴ』
監督・脚本:堀内友貴/エグゼクティブ・プロデューサー:河荑直美/出演:山下リオ、細川岳、祷キララ、古川琴音(声の出演)/2026年/日本/98分/配給:Stranger/©2026‟Transit in Flamingo” NARA INTERNATIONAL FILM FESTIVAL/5月15日(金)より新宿武蔵野館・Strangerほか全国順次公開
(週刊文春CINEMAオンライン編集部/週刊文春CINEMA オンライン オリジナル)
