【フォトルポ】リニア中央新幹線の「2037年開業」は実現できるのか…″課題は山積み″という現実
総工費は11兆円に倍増!
新緑がまぶしい南アルプスの山奥で、「起工式」がいよいよ行われることになりそうだ。リニア中央新幹線において、最後まで手つかずだった「空白の8.9km」――南アルプストンネル・静岡工区に、ついに重機のドリルが打ち込まれる。
長年リニア問題を取材してきたジャーナリストの小林一哉氏は、膠着(こうちゃく)状態だった国家プロジェクトがようやく前進し始めた背景をこう解説する。
「事態が動いた最大の要因は、トップの交代でしょう。’24年に川勝平太前静岡知事(77)から後を継いだ鈴木康友現知事(68)は国が進める事業に協力的ですから。
リニアに関して、静岡県とJR東海の間にはこれまで環境保全などに関する28項目の課題が残されていましたが、3月下旬の専門部会においてすべて了承され、遅くても6月中には起工式があるのではないかと聞きました。
着工へ踏み出したこと自体は評価できますが、南アルプスの地下深くには未知の断層が待ち受けており、途方もない時間がかかる難工事が予想されます。リニアは入り口に立っただけで、本当の試練はこれからですよ」
最大のハードルは1km超えの土被り
最大のハードルは、南アルプストンネルの掘削(くっさく)工事だ。立ちはだかるのはトンネルの上に被さる山の高さ(通称「土被(どかぶ)り」)で、最大1400mにも達する。
この前代未聞の圧力は「山跳(やまは)ね」(高い地圧によって掘削面の岩盤が突然弾け飛ぶ現象)や「突発湧水(とっぱつゆうすい)」を引き起こす危険性を含んでいる。
さらに、物価高騰と難工事により、総工費も当初の5.5兆円から約11兆円へと倍増。今年着工した場合の最短で「2037年開業」(品川-名古屋間※1年の試運転期間含む)という見通しは、「工事が順調に進む」前提条件に依存した″仮置きの未来″に過ぎない。
「山梨・長野の工区ですら当初10年と言っていたのに、今や15年かかると言っている。しかも静岡工区はその両方より難しく、完成が遅れれば費用も膨らむ。本質的な水や環境の問題はまだ解決されていないものもある。行政は起工式に向けてスピードを上げていますが、″開通までの課題は山積み″というのが現実なのです」(小林氏)
一方、全長754.2mでリニア最長の『釜無川橋りょう』やJR橋本駅近くの『神奈川県駅(仮称)』の工事は順調の様子。FRIDAY記者が現場へ向かうと、橋や駅の基本構造は出来上がっているように見えた。
リニアを担うJR東海に「2037年開業」の実現性や地質リスクの対応について問い合わせると以下の回答が届いた。
《トンネル掘削工事に着手できていない静岡工区が開業の遅れに直結しており、現時点では全線開業時期について申し上げられる段階ではありません。また、静岡工区は不確実性を伴う極めて難易度が高い工区のひとつであります。大井川の水資源や南アルプスの環境保全に十分配慮して工事を進める必要があることを踏まえると、さらに工期が延びる可能性もあると考えています》
動き出した「国家プロジェクト」は、はたして完成するのだろうか。
