地球が完全に氷に閉ざされていた「スノーボールアース」の時期に奇妙な気候サイクルが存在した可能性

10億〜5億4200万年前の新原生代中期に起きたスターティアン氷期では、地球が熱帯地域や赤道付近も含めて完全に氷に覆われる「スノーボールアース」の状態になったとされています。このスノーボールアース状態の地球には、知られざる「奇妙な気候サイクル」が存在していた可能性があるとの研究結果が発表されました。
Repeated snowball-hothouse cycles within the Neoproterozoic Sturtian glaciation | PNAS
Snowball Earth may hide a far stranger climate cycle than anyone expected
https://sciencex.com/news/2026-04-snowball-earth-stranger-climate.html
スターティアン氷期の正確な期間については諸説ありますが、およそ約7億1700万〜6億4300万年の間に、約5600万年もの長期間にわたって氷期が続いたとされています。この時期の地球については、完全に氷に覆われる「スノーボールアース」だったというシナリオか、熱帯地域に薄い氷やわずかな水域を残すだけだった「スラッシュボールアース」というシナリオで説明されてきました。しかし、この説には矛盾があるとのこと。
氷期を引き起こす地球規模の気候変動は炭素と酸素の循環に関連しており、大気中から炭素を取り除くシステムのひとつに「炭酸塩-ケイ酸塩サイクル」というものがあります。炭酸塩-ケイ酸塩サイクルは、ケイ酸塩で構成された岩石が風化する際に二酸化炭素および水と反応することで、二酸化炭素が大気中から除去するというサイクルです。
氷期になると、この炭酸塩-ケイ酸塩サイクルが著しく遅くなるか、あるいは停止することさえあるそうです。その結果、火山性の二酸化炭素が大気中に蓄積して気温が上昇し、ある程度の気温に達すると氷河が溶け始めて氷期が終わります。
ハーバード大学の研究チームは、この氷期が終わるサイクルの時間的スケールは約400万年ほどであり、スラッシュボールアースのシナリオではさらに短くなると指摘。これは、スターティアン氷期が約5600万年にわたって続いたとされる説と矛盾しています。また、氷期が長く続きすぎると酸素が枯渇してしまうそうで、本来であれば5600万年も生命が存続できなかったはずだとのこと。

研究チームはスターティアン氷期のに関する地質学的・生物学的観測結果に適合するモデルを探すため、地球の気候・炭素・酸素の循環をシミュレートしました。また、火山活動やケイ酸塩岩の風化速度、フランクリン巨大火成岩岩石区(FLIP)の規模に関するさまざまなパラメータもテストしました。
FLIPはカナダの北極圏にある大規模な火成岩地域です。研究チームは、この地域における著しい火成岩の風化によって世界の二酸化炭素の大部分が消費され、地球規模の氷期の引き金になったと考えています。
研究チームは論文で、「巨大火成岩岩石区による風化作用の促進は、地質時代を通じて重要な気候変動要因として長らく認識されてきました。FLIPは約7億1700万年前に形成され、これはスターティアン期の開始とほぼ同時期(100〜200万年以内)です。これが二酸化炭素を吸収して地球規模の氷期を引き起こすのに十分な量の、新鮮な玄武岩を供給した可能性があります」と述べています。
モデルでは、「FLIPの風化作用によって大気中の二酸化炭素が取り除かれると氷期が訪れ、それによって風化作用が停止すると今度は二酸化炭素が蓄積され、温かくなると再びFLIPの風化作用が始まる」という周期的なサイクルが繰り返されることが示されました。このサイクルが5600万年にわたって続いたのが、スターティアン氷期だったというわけです。
研究チームは、「FLIPの一部だけがスノーボールの初期段階で風化によって消失したとしても、残りの玄武岩は氷河融解後も風化を続けます。そして間氷期の温暖な気候下で二酸化炭素の吸収が再び始まり、次のスノーボールが引き起こされるサイクルが繰り返されます。この極端な気候の間を行き来するサイクルは、FLIPの風化していない玄武岩が枯渇するまで続いたのでしょう」と述べました。

by Richard Droker
なお、今回のモデルはあくまで単純化されたものであり、考えられるすべてのプロセスを網羅したものではありません。しかし、スノーボールアースとスラッシュボールアースの説明における、いくつかの矛盾点を説明するものとなっています。
