ゲームやYouTubeにハマる子が増えています。「ゲームはダメ」「やめなさい」と感情的に否定されると、子どもは納得するどころか、ムキになって執着します。成田先生が推奨するのは、子どもと一緒に「わが家のルール」を作ること。

■すべてのゲームが悪という話ではない

「うちの子は、ずーっとゲームしてるんです。いっそ、ゲーム禁止にしたほうがいいでしょうか……」

親御さんからこうした相談を受けることは少なくありません。最近では、「YouTubeばっかり見ていて……」といったケースも増えてきています。

私はいつも「少し立ち止まって考えてみましょう」とお伝えしています。

なぜなら、親がゲームやYouTubeを一方的に敵視すること自体が、子どもの脳にとってはマイナスに働くことがあるからです。

「ゲームはダメ」「やめなさい」と感情的に否定されると、子どもは納得するどころか、ムキになってゲームに執着しやすくなります。親の目の前では我慢しても、隠れて遊ぶようになってしまうことも考えられます。

そもそも「ゲームやYouTubeは百害あって一利なし」と言い切ること自体、私は論理的でも、科学的でもないと考えています。

ゲームの中には、状況を判断したり、先を読んで戦略を立てたり、ルールを理解して進めたりと、論理的思考をはじめ前頭葉の働きを必要とするものも少なくありません。YouTubeの中にも、普段の生活では知ることができない情報を紹介するものや、型にとらわれないユニークな発想で作られたものもあります。「すべてのゲーム=悪」「すべてのYouTube=害」という単純な話ではないのです。

では、私がゲームやYouTube推奨派かと言われれば、もちろんそうではありません。ゲームやYouTubeにハマり過ぎてしまうことによって、子どもの脳の発育によからぬ影響が生じかねないのは事実だからです。

状況を整理しましょう。ここで大切なのは、感情で判断するのではなく、「何が問題なのか」を明らかにすることです。

イラストレーション=タケウマ

■音や光の強い刺激を連続して受ける

ゲームやYouTubeにハマることの問題の一つめは、生活習慣の乱れです。

ゲームなどに熱中するあまり、勉強はもちろん、食事や片づけなどがおろそかになったり、お手伝いをしなくなったり、就寝時刻が遅くなってしまったりなどの乱れが起きやすくなります。就寝が遅れれば起床も遅くなるのは当然。脳が休息し、情報を整理するための時間である睡眠時間も不足してしまうでしょう。子どもの脳は、生活リズムが整ってこそ健やかに育ちます。育脳の土台ともいえる部分が危険にさらされることになります。

二つめは、音や光の強い刺激を連続して受けることです。

デジタルデバイスからの音や光の刺激は非常に強く、それらに長時間さらされると、本来五感を通して感じ取るべき、においや温度、手触り、体の動きといった感覚が入りにくくなります。これは決して小さな問題ではありません。

三つめは、睡眠の質の低下です。

就寝前に強い光を浴びると、体内時計に関係するメラトニンの分泌が抑えられ、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりします。脳の回復や成長にとって、これは大きなマイナスです。

四つめは、体験の偏りです。

ゲームしかやらない生活が続くと、外遊び、人とのやりとり、家族との触れ合いなど、子どもの時期に体験しておきたい多様な経験に触れる時間が失われてしまいます。これらの経験は、将来、論理的に考えるための「材料」として脳に蓄積しておくべきもの。それが不足してしまう恐れがあるのです。

最後に、家庭内の雰囲気のことも忘れてはなりません。

「ゲームばっかりして」と親が常にイライラし、子どもは「うるさい」と反発する。こうした状態が続くと、親子関係がぎくしゃくし、本来、安らぎの場であり休息の場であるべき家庭が、その役割を担えなくなってしまいます。

つまり、問題の原因は、ゲームやYouTubeそのものというよりも、それらを楽しむためのデジタルデバイスの使い方や、生活の中でゲームやYouTubeをどう位置付けるかというところにあるのです。

一般的に、ゲームやYouTubeなどについて、「わが家のルール」を作って楽しむということが推奨されています。ルールを作ること自体は正しいと思いますが、ここまで述べてきたような問題点を踏まえたものになっているかどうかが肝心なところです。

「平日のゲームは1時間まで」というルールを決めたところで、「なぜ平日は1時間なのか」の理由が子どもも納得のいくものになっていなければ、ルールとは名ばかりの、親からの強制に過ぎません。

ゲームの時間は守れたとしても、「楽しいものでも、メリット・デメリットを考えて、一定の枠の中で楽しまないといけないな」という発想を子どもがもつことにはつながらないのです。

こうした問題を防ぐために必要なのは、ゲームを禁止することではありません。

私が勧めているのは、子どもと一緒に「わが家のルール」を作ることです。時間、場所、遊ぶタイミングを話し合い、親が一方的に決めるのではなく、子ども自身が納得できる形で共有する。

ゲームやYouTubeには、確かにリスクがあります。しかし、適切な距離感で付き合うことができれば、これらの良い面が生きてくる可能性もあります。

「どうすれば生活が乱れないか」「どうすれば楽しく遊べるか」を一緒に考えること自体が、子どもの論理力を育てる大切な経験になります。

ゲームやYouTubeの良い面と悪い面を子どもと一緒に整理し、検証してみる。その姿勢こそが、子どもの脳と論理力を育てるのだと、私は考えています。

※本稿は、『プレジデントFamily2026春号』の一部を再編集したものです。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)
文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表
小児科医・医学博士・公認心理士。1987年神戸大学卒業後、米国ワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング』(共著、合同出版)、『子どもの隠れた力を引き出す最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)など多数。
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(文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子 構成=金子聡一 イラストレーション=タケウマ)