「眠くて午後、仕事にならない…」ウトウトする人を尻目に、仕事のできる人がランチで“選ばないメニュー”の正体。夕方に〈集中力のピーク〉を創り出す、元・米メガバンク管理職の休憩の仕方
朝一番のメールチェックでタスクに翻弄され、昼食後の眠気に襲われ、夕方には燃え尽きてしまう――。そんな「時間に追われる日々」から脱出する鍵は、単なる時間管理術ではなく、脳のエネルギーである「認知資源」をいかに采配するかにあります。米国のメガバンクで管理職を務め、激務の傍らハーバード大学のエクステンション・スクールで認知神経科学を学んだエグゼクティブコーチの吉川ゆり氏は、集中力こそが「よりよい人生を生きるためのスキル」であると提唱しています。本記事では、同氏の著書『なぜ、あなたは時間に追われているのか』(日経BP)より、「集中力」の仕組みを活かした1日のタイムマネジメントをみていきましょう。
1日の生産性を高めたい…朝の3分・30分・90分をどう過ごすか
ここからは、それぞれの時間帯でやったほうがいいこと、やるべきでないことについて紹介します。
まずは起床後の時間です。この時間帯は、脳が休息から回復したばかりでリフレッシュしています。この時間に何をするかで、1日の生産性や結果が大きく変わると言ってもいいでしょう。所要時間別に、おすすめの過ごし方を紹介します。
朝の過ごし方1:1日の意図を決める(所要時間…3分)
時間がない人でも、できればこの時間に、どんな1日を過ごしたいかという「意図」を設定してみてください。コーチングでは、人間は「意図」によって行動を決めていると考えられています。「今日はこんなふうに過ごしたい」「この仕事だけはやりきろう」など、カレンダーを見ながら1日の予行演習をするといいでしょう。
3分程度の時間があれば、今日予定されている出来事がすべて良い方向に進んでいる、というイメージをするのもおすすめです。これは、スポーツ選手のメンタルトレーニングと同じです。
1日の予定を立てようとすると、ついスマホを開きたくなるかもしれません。カレンダーを確認するくらいなら問題ないでしょう。ただし、朝イチでメールやチャット、SNSを確認するのはおすすめしません。なぜなら、メールやチャット、SNSに書かれているのは主に「他人のアジェンダ」(要件)だからです。うっかり見てしまうと、そこに書かれている内容が気になり、自分のことに意識が向きません。
朝一番にそれらに返信することは、自身が本来やるべきことよりも相手のアジェンダのほうが大事だと、相手に対しても、自分に対しても認めていることになります。他人のアジェンダで1日を始めない。これが、時間の満足度を高める上で、とても大切です。
朝の過ごし方2:解決したい課題を書き出す(所要時間…30分)
もし30分程度の時間があるなら、仕事で解決しなくてはならない直近の課題を、手帳やメモなどに簡単にリストアップするのもおすすめです。
1980年代に人気を博した米国のテレビドラマ『冒険野郎マクガイバー』のクリエイター、リー・デイヴィッド・ゾロトフ氏は、著書『ザ・マクガイバーシークレット』で、創造的な発想と問題解決について述べています。
主人公のマクガイバーは、行く先々で答えのない困難な課題に直面しますが、身の回りにある道具をうまく使い、機転を利かせて危機を乗り越えます。ゾロトフ氏はこのテレビドラマを作るとき、デスクに座っている時にはアイデアが思いつかないのに、運転していたりシャワーを浴びていたりするときにアイデアがたくさん出てくるのに気がつきました。
なぜだろうと不思議に思って考えた結果、テレビドラマの制作とは関係がない運転やシャワーなどの行動が、問題を潜在意識レベルに落とし込み、解決へと導く役割を果たしていると気づいたそうです。つまり、「この課題を乗り越えたい」と意識すると、脳はそのための情報を無意識のうちに集めたり、つなぎ合わせたりして、自然と解決に導こうとする、というわけです
『ザ・マクガイバーシークレット』で紹介されている考え方は、私たちの課題解決にも応用できます。ここでは、実践しやすい3つのステップに整理して紹介しましょう。
1.質問を紙に書く…解決したい課題や問いを、具体的な質問形式で紙に書き出します。
2.別のことをする…質問を書き終えたら、一旦その問題から離れ、朝食作り、皿洗い、軽い運動など、脳への負荷が低い別の活動に切り替えます。
3.再度、頭に浮かんだことを書き出す…しばらく時間をおいた後、書き出した質問について、頭に浮かんだことを何でも自由に書き出します。この時、自然と解決策やアイデアが現れることがあります。1日で現れないこともありますから、焦らずに、何日も繰り返してみることをおすすめします。
この方法は、実際に試した多くの人が「本当に役立った!」と驚きます。実は私たちの脳には、何か特定のことに集中しているときだけでなく、ぼーっとしているときや、リラックスした状態のときにも活発に働いている部分があります。バックグラウンドで活動するこの脳のネットワークは「デフォルトモードネットワーク」(DMN)と呼ばれ、私たちが意識しないうちに、これまでの記憶を整理したり、一見関係のない情報同士を結びつけたりして、新たなアイデアや深い洞察を生み出すと考えられています。
1〜3まですべて行う時間がない場合、1の「質問を紙に書く」という行為をするだけでもいいでしょう。日中の活動中にふと解決策がひらめくことがあります。
朝の過ごし方3:勉強またはクリエイティブな作業をする(所要時間…90分)
朝型で4〜6時に起きる人なら、朝の時間がたっぷりあります。脳がすっきりしているこの時間に、資格の勉強などを集中して行うのもいいでしょう。
朝は寝起きのぼんやり感が残っているため、注意力や素早い反応が求められる仕事にはあまり向きません。一方で、脳が心地よさを感じている時間帯でもあるため、情報と情報がつなぎ合わされて新しいアイデアが生まれたり、ひらめきや直感がさえわたったりします。家で仕事ができる人なら、この時間に企画、アイデア出し、デザインなど、「ものを生み出す」タスクに取り組むと、驚くほど仕事がはかどるでしょう。
実際に私も、勉強や仕事に集中して取り組みたいときは、朝5時の起床後から子どもが起きてくる7時までの2時間、作業に没頭しています。脳がまっさらな状態で、外部からの情報(メール、ニュース、SNSなど)に触れる前に、自分の内側から湧き出るアイデアに耳を傾ける。このことが「時間に追われる感覚」を和らげ、人生の満足度を高めてくれるでしょう。
電車通勤をしている人は、これまで見てきた「朝の過ごし方」について「通勤電車の中でやればいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、通勤電車の中はどうしても情報があふれかえり、手持ち無沙汰にスマホをチェックするなどしてしまうため、脳が情報過多になりやすいのが欠点です。電車に乗る前に少しでもこの「まっさらな時間」を確保し、自分とじっくり向き合うのが理想的です。
昼食後の眠気、どうすればいい?ランチが集中力に与える影響
昼食の後、決まってやってくる眠気や集中力の低下に悩んでいる方は少なくないでしょう。「ランチを食べないほうがいいのか」「どのくらい休むべきか」といった疑問をよく耳にします。
しかし、眠気の原因を突き詰めていくと、そのメカニズムが見えてきます。眠気の主な原因は2つあります。1つは「血糖値のスパイク」、もう1つは「体内時計」です。
血糖値のスパイクとは、食後に血糖値が急激に上昇し、その後急降下する現象を指します。これが眠気を引き起こすことはよく知られており、一般的に食事から1〜2時間後に眠気を感じることが多いようです。
しかし、たとえこの血糖値のスパイクがなかったとしても、私たちはサーカディアンリズムやウルトラディアンリズムといった体内時計の影響で、定期的に集中力の低下や眠気が訪れるようになっています。朝型や中間型の人の場合、そのタイミングは昼食後(午後)に当たることが多いです。つまり、ランチを取るかどうかにかかわらず、生理学的な要因として、昼の眠気はある程度、避けられないものだと考えられます。
では、全く対策がないのかと言えば、そうではありません。食事のほうは対策が可能です。ランチを食べるのであれば、やはり、血糖値の安定を意識したメニューを選ぶことが大切です。
具体的には、「低脂質、高タンパク、低糖質」の食事をおすすめします。鶏肉やサーモンなど、タンパク質が豊富な食材は血糖値を緩やかに上昇させ、その後の急降下を防ぎます。
一方で、注意したいのが、白米、ラーメン、パスタといった高糖質な食品。血糖値を急激に上げてしまうため、ランチ後の眠気が引き起こされやすくなります。また、たくさん食べすぎないことも大切です。適量を心掛け、体が重くならないように意識してみてください。
外回りで疲れた体でも、午後にもう一度集中する方法
クロノタイプが中間型の人や朝型の人にとっては、午前中にディープワークに取り組むのが理想的だと紹介してきました。しかし、外回りの多い営業職など、午前中から夕方まで体を動かし、疲れた状態でオフィスに戻ってきてから資料作成などの作業に取り組まなければならない、という人も多いでしょう。
体が疲れているなかで集中力を維持するのは至難の業です。このような方々に向けて、私は「第2のウィンドウ」、つまり夕方から夜にかけて訪れるもう1つの集中力のピークを最大限に活用することをおすすめしています。朝型や中間型の人の場合、午後に一度落ちた集中力が、夕方からもう一度回復の軌道に乗り始めるからです。
「第2のウィンドウ」を活用するためには、夕方にオフィスに戻った時点で燃え尽きていてはいけません。頭がぼーっとし、作業が進まなくなってしまいます。1日の終わりに燃え尽きるのを避けるには、外回り中にこまめに短い休憩を取って、脳と体を回復させる必要があります。
カフェや電車の中で座ることができたら、5分程度目をつぶって静かにじっとしてみるといいでしょう。息を深く吸って、ゆっくりと吐き出すことで、副交感神経が優位になり、リラックス効果を得ることも期待できます。
移動中にSNSや電車のつり革広告を熱心に見るのは、脳の休息につながらないためおすすめしません。回復のための休憩を積極的に取りましょう。
吉川 ゆり
Mental Breakthrough Coaching™スクール 代表
