さらに注目は、佐田が自ら持ち込んだ私物の展示だ。当時の学生服と特攻服に加え、渡り(裾幅)が100センチという規格外のボンタンも登場する。

佐田 「会場にカタログが置いてあって、一番太いもので渡り80センチまでだったんですが、僕のは渡り100センチ。みなさん見たことないと思います。片方1メートルあるから、両方合わせると2メートルですよ。たぶんちょっとした山なら、繋げてムササビみたいに飛べますよ(笑)。証拠として、中学校のときに制服を着ている写真も展示します」

 特攻服の刺繍にも、見る者を圧倒する迫力がある。会場には実際に着用されていた本物の特攻服が並ぶが、なかには50万〜100万円近い価値を持つものも。フルオーダーで、職人が一針ずつ手で打つ刺繍の美しさは格別だ。

佐田 「自分で一生懸命考えるんですよ、あの文言は。僕の学生服の刺繍も『今宵最後の親不孝』とか、『不良という名に憧れて十四、十五が華だった』みたいな、中二病全開の自分が書いた詩が入っていて(笑)。誤字脱字があるかもしれないのがまたリアルで。なんでこれを書いたんだろうと想像しながら見るのも楽しい」

岩橋 「背中の一番大きい文字を見ると、糸の打ち方が綺麗かどうかでわかる。昔の特攻服は全部フルオーダーで作っていて、うまいところは本当に綺麗ですよ」

 グッズ面でも見逃せないのが、80年代に一世を風靡した「なめ猫」との完全コラボだ。今回の目玉は「なめ猫マイナンバーカード」。前回のなめ猫免許証は数千枚を完売した実績があり、今回は大増刷で臨む。さらに「アルプスの少女ハイジ」との公式コラボも展開。ハイジの周囲の登場人物がどんどんヤンキー化していく中、ハイジが奮闘するというコンセプトで、フォトスポットや限定グッズを用意している。

◆■ 時代劇化するヤンキー文化の現代的意義

鈴木 「40、50代の方が展示の前で『俺はああだった』『私はこれだった』とすごく語ってくれるんです。中には3世代で来てくれた家族もいた。19、20でお子さんを産んでいる方はもうお孫さんも連れてこられるというわけで、さすがヤンキーだなと(笑)。うちの息子が小5なんですけど、『え、本当にこんなの着てたの?』って言うんですよ。僕らが初めて戦国ものを見たときと同じ感覚です。ヤンキーというのはもう完全に時代劇的なジャンルになってきている。東京リベンジャーズがタイムリープの設定を使っているのも上手くて、任侠ものと並ぶような一種の時代劇ジャンルだと思っています」

“ヤンキー”はしばしば“ワル”と混同されることがある。だが両者の間には決定的な違いがあるという。鈴木氏が続ける。

鈴木 「かっこいいことを言うと、ワルというのは誰かを傷つけるんですが、ヤンキーは誰かを守ろうとする心や強さが根底にある気がするし、そうであってほしい。私はヤンキーじゃなくて、むしろボコボコにされた側なんですけど(笑)。それでもずっと憧れはあります。」

岩橋 「ヤンキーは生き様で、ワルは犯罪。自分の中でそこの線引きをしっかりできるかどうか。心の中の支えとして持っておくのは絶対大切で、ヤンキーの連中って意外と潔いんですよ。覚悟が決まってるんです。ヤンキー文化は絶対アナログのつながりが大事で、誰かと知り合って話して答え合わせをすることで軌道修正される。ぜひ大ヤンキー展に来て、自分のヤンキー魂が歪んでいないか確かめてください」

ギャル文化と同じように確実にカルチャーにおける絶対的な市民権を得つつあるヤンキー。鈴木氏が今後見据える先はどこにあるのか。

鈴木 「幕張メッセです。大恐竜展のような規模感で。名古屋、北九州、福岡、大阪、岐阜と全国からオファーをいただいていて、まずは全国巡業しながらパワーアップして、最終的には幕張メッセで一カ月開催したい。改造バイクをズラッと並べてメリーゴーラウンドにして、屋根ぶった斬りの改造車も飾って、全国から集まる大きなイベントにしたいですね」

 北九州の特攻服がパリコレ的に展示されたことや、暴走族を口を開けて見つめる外国人の動画が話題になるなど、ヤンキー文化の国際的な関心も高まっている。「日本が世界に誇る裏文化を、全世界に広めたい」と鈴木おさむは力を込める。

 今しか見られない、触れられない--ヤンキー魂の全てが、北千住に集結している。

取材・文/週刊SPA!編集部  撮影/須藤リョウジ