アワスさんの墓の前で悲しむ親族ら(22日、ヨルダン川西岸のムガイヤル村で)

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 ヨルダン川西岸で、イスラエル人の入植者がパレスチナ人集落を各地で襲撃した。

 22日のイスラエル独立記念日に合わせたものとみられ、西岸中部ムガイヤル村では21日、学校の前で14歳の少年ら2人が銃で殺害された。パレスチナ自治政府によると、西岸で今年、入植者に殺害された住民は16人に上っている。(ヨルダン川西岸ムガイヤル村 福島利之、写真も)

 西岸の拠点都市ラマッラから20キロ・メートル北東のムガイヤル村では22日、2人の葬儀が営まれ、集まった数千人の村人らが憤りをあらわにした。少年が殺害された際に一緒にいたムハンマド・ナサンさん(14)は「今も同級生の親友が殺害されたことが信じられない」とぼうぜんとしていた。

 目撃者によると、村西部にある男子校付近に21日正午頃、銃を持った4人の入植者がイスラエル兵を伴って現れ、学校に向けて銃の乱射を始めた。集まった村人が石を投げてけん制しながら生徒らを下校させようとしたところ、入植者がさらに発砲。アワス・ナサンさん(14)とジハード・ナイームさん(32)を殺害し、3人を負傷させた。

 アワスさんの父親ハムディさんも2019年にオリーブの実を摘んでいた際に入植者に銃殺された。アワスさんの叔父アッターフ・ナサンさん(45)は「親子が入植者に殺されるなんて、悲劇だ」とつぶやいた。

 人口約3300人の村は43平方キロ・メートルの広さで、オリーブの産地だ。だが、イスラム主義組織ハマスが23年10月にパレスチナ自治区ガザから越境攻撃した後、入植者は村人を追い出そうと襲撃を強めた。

 入植者は村を取り囲むように9か所のアウトポスト(前哨基地)を建設し、村周辺に広がるオリーブ畑をほぼ取り上げた。今では居住地域の0・95平方キロ・メートルの土地しか残っていない。イスラエル軍は昨年8月、数千本のオリーブの木を根こそぎ抜いた。

 入植者は、独立記念日の高揚感から攻撃を激化させているとみられる。23日にはディール・ディボワン村でも32歳の男性が銃殺された。それでも、入植者が訴追されることはない。

 ムガイヤル村には22日、イスラエル軍の車両が葬儀の前後に侵入し、催涙弾で群衆を解散させた。アミーン・ザグルール村長(54)は「入植者や軍が攻撃しても村人はこの土地を離れない。自分たちの手で守る」と話した。ただ、防衛する手段はない。