「扱わない方がいい」池上彰氏 京都・男児遺体遺棄事件で主張した“報道抑制提言”に賛否…ベテラン元刑事は「犯罪の抑止にもならない」と猛反論
京都府南丹市園部町で行方不明になっていた小学生の安達結希(ゆき)くん(11)の遺体を遺棄したとして、養父・安達優季(ゆうき)容疑者(37)が逮捕された事件。
京都府警は4月15日に安達容疑者の自宅を家宅捜索し、翌日未明に安達容疑者を死体遺棄の疑いで逮捕。安達容疑者は「私のやったことに間違いありません」と容疑を認め、「首をしめつけて殺した」と殺害についても認めているという。
「結希くんが行方不明になった3月23日、安達容疑者は車で結希くんを自宅から小学校に隣接する学童保育施設の駐車場まで送り届けたと警察に説明していました。
警察や地元消防団らが捜索するなか、3月29日に結希くんの親族が園部町の山中で通学用かばんを発見。4月12日には結希くんが履いていたスニーカーとよく似た靴が園部町の山中で見つかり、翌日に遺体が発見されました」(全国紙社会部記者)
いっぽう司法解剖の結果、結希くんの死因は不詳とされている。さらに通学用かばん、靴、遺体の発見場所が離れていたことや、安達容疑者が遺体を移動させていたことなど不可解な点もまだ多い。
警察で慎重な裏付け捜査が進められるなか、テレビ各局の情報番組やワイドショーでは連日のように事件を特集。捜査関係者などの証言によって新たに判明した事実や、安達容疑者の人物象及び家族関係などが取り上げられている。
そんななか、4月20日放送の『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)にコメンテーターとして出演したジャーナリスト・池上彰氏(75)の“提言”が注目を集めている。
同事件を取り上げた番組で「ここまでの報道をどのように見ていますか?」と意見を求められた際、池上氏はこう苦言を呈したのだった。
「“あ、なるほど。こういうことだったのか”、あるいは、“警察がこうやって捜査をしてきたのか”っていうことがよく分かるんですが、ただ、見ている側からするとですね、もういいんじゃないですか、この話。容疑者が捕まって、容疑者が事件について認めているんですから。もうこれ以上、扱わない方がいいんじゃないかなと、すいません、私は思いましたけどね」
この意見に耳を傾けていた大下容子アナウンサー(55)は、神妙な表情で「そういう方も多くいらっしゃいます」と理解を示すにとどまっていた。
だが、池上氏の発言を取り上げたネットニュースのコメント欄では、書き込みが3000件を超えるほど賛否の声が相次いでいる(以下、引用はすべて原文ママ)。
《正論だと思います》
《私も池上さんの意見に賛成です》
《池上彰さんの言うことももっともだけど、これだけしつこくネットやニュースで追求したからこそ、有耶無耶にされずに捜査が行われて、加害者が逮捕されたのも事実だと思います》
《池上氏の意見に疑問。この様な事件を繰り返さず風化させないために、世論が求める以上少しでも取り上げたほうがよいと思う》
■「事件はまだ入口にすぎない」池上氏の主張に元刑事たちから異論が続々
同事件をめぐっては、テレビやYouTubeなどに識者として出演する元刑事たちの解説も注目を集めている。だが、そうした元刑事たちは、報道の在り方について池上氏とは異なる視点で捉えているようだ。
池上氏の発言を取り上げたネットニュースのコメント欄では、元埼玉県警捜査一課・佐々木成三氏が《報道のあり方についてのご意見は、とても理解できます。ただ一方で、報道によって救われる人がいることも、現場を見てきた中で強く感じています》と私見をつづっている。
佐々木氏は《今は、ネット上で根拠のない憶測が広がり、それによって苦しんでいる方がいます》とし、《そうした状況の中で、警察が公表している情報や、現場取材や裏付けのある事実を伝えるメディアの役割は非常に大きいと思います。正しい情報が示されることで、過度な憶測や誤った情報の拡散を抑えることにつながるからです》と主張。
自身が関わった事件の被害者が専門家の言葉によって救われた事例を挙げ、《こうした「誰かを守る言葉」を届けられるのは、責任ある立場で発信するメディアだからこそできることだと感じています》とコメントしていた。
また、自身のYouTubeチャンネルでさまざまな事件を解説している元警視庁捜査一課・佐藤誠氏も、池上氏の主張に異論を呈している。
佐藤氏は21日深夜に更新したXで、池上氏の発言を取り上げたニュース記事を引用。《は?この事件はまだ入口にすぎない》と切り出し、《「死体遺棄=事件の終わり」ではない。今回の本丸は、殺害の経緯、動機、事前兆候、防げたか?。これは供述だけでは確定しないだろ》と問題提起した。
続けて《「認めた=真実確定」ではない》とし、報道が止まることによる弊害を次のように提示。
《◯警察→捜査の甘さが検証されない ◯行政→福祉の見逃しが問われない ◯社会→構造問題が見えない ◯責任の所在がぼやける ◯まだ殺人の中身が未解明 ◯再発防止の材料が出ていない ◯社会構造の検証がされてない》
その上で、《勝手なことばかりほざくオールドメディアだな。辺野古事故はなぜやらない?不思議なオールドメディアだ》と苦言を呈していた。
■「犯罪の抑止にもならない」本誌取材に元ベテラン刑事も猛反論
池上氏の主張に疑問を抱いたのは、佐々木氏と佐藤氏だけではない。
「今回の事件が大きく注目された背景には、不可解な点がいくつもあった反面、安達容疑者が逮捕されるまでに警察から公表された情報が少なかったことも影響しているでしょう。世間の関心が高かったことから、テレビでも大きく取り上げられているのだと思います。
池上さんはジャーナリストとして著名な方ですから、発言の影響力も大きいでしょう。安達容疑者の事件に関する報道を控えるように求めるのであれば、“もういいんじゃないですか”と発言した理由をきちんと説明した方がいいように思います」
こう語るのは、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏(以下、カッコ内は)。自身のYouTubeチャンネルではさまざまな事件や社会問題を取り上げており、結希くんの行方不明事件についても自らの見解を語ってきた。
「今回の事件は、まだ安達容疑者が逮捕されたばかりで、捜査の入り口なのです。この先、結希くんが亡くなった経緯や安達容疑者の動機なども解明されなければなりません。また、安達容疑者が結希くんの養父であるなど複雑な家庭の事情があったことも判明しており、結希くんの母親と似た境遇の人の中には“自分事”として捉えている人もいます。
やはり同じような事件が繰り返されないためにも、真相究明をする必要性は高いと思います。ニュースに触れる人たちも噂を知りたいのではなく、正確な情報を知りたいはず。事件についてまだ明らかになっていない点も多いなかで、報道がストップしてしまったら、余計な憶測が広がってしまう恐れがあります。
テレビはメディアとして警察に正規の取材をし、事実を伝えることができます。池上さんが言うように報道を止めてしまえば、犯罪の抑止にもならないし、国民の知る権利を奪うことにもなりかねないのではないでしょうか」
