『風、薫る』佐野晶哉が気になって仕方がない 『カムカム』松村北斗に続く飛躍なるか?
NHK連続テレビ小説『風、薫る』第3週「春一番のきざし」より、佐野晶哉演じるシマケンこと島田健次郎(佐野晶哉)が登場。副題の通り、一瞬にして人を惹きつけるオーラを持った佐野の存在が物語に“春一番”を運んできた。出演シーンはまだわずかだが、すでに彼のことが気になって仕方がないのは筆者だけではあるまい。
参考:Aぇ! group 佐野晶哉&林裕太、『風、薫る』2ショット 「変わり者(?)がもう1人」
本作は、同じ養成所で西洋式の看護学を修め、日本初のトレインドナースとなった一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)が、医療現場でぶつかり合いながら共に成長していくバディドラマだ。
主な舞台となるのは、明治時代の東京。りんは栃木の村で生まれ育ったが、嫁ぎ先での酷い仕打ちに耐えかね、娘・環(宮島るか)を連れて東京に逃げてきた。しかし、なかなか働き口が見つからずに途方に暮れていたところ、偶然出会った男性・清水卯三郎(坂東彌十郎)に拾われ、彼が営む舶来商店「瑞穂屋」で働くことに。そこに客として現れたのが、シマケンだった。
無造作な髪に銀縁の丸メガネ、シャツに羽織袴と出で立ちは書生風だが、その正体はいまだヴェールに包まれている。彼自身、自分のことをあまり語りたがらない。外国人客の対応に困っていたりんを流暢なフランス語で助けてくれたシマケン。りんが「学校の先生? オランダの通詞?」と職業を明らかにしようとすると、彼は「どうしてそんなに何者かにしたがるんですか」と呆れた様子を見せる。
唯一分かっているのは、言語オタクであること。りんの栃木訛りにも「西の言葉の抑揚ではなさそうだ」と即座に反応。またフランス語のみならず、複数の言語に通じているようだ。佐野は、早口でボソボソした喋り方や、気怠そうな体の運び、引き攣った笑みなどでシマケンが相当な変わり者であることを視聴者に印象づけていた。だが、不思議と嫌味はない。佐野が持つ柔らかい雰囲気によるところも大きいが、環に対して目を細める仕草といい、その頭をポンポンと撫でる優しい手つきといい、随所に人の良さを感じさせる。
■『カムカム』松村北斗に重なる佐野晶哉の可能性 視聴者の最も大きな関心事は、そんなシマケンとりんが今後どのような関係になっていくかということだろう。『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 風、薫る Part1』(NHK出版)で、佐野は「(シマケンは)りんの何気ないひと言に心をつかまれ、やがて恋という初めての感情に出会うんです」と語っている。いずれはりんが互いに思い合っていた幼なじみ・虎太郎(小林虎之介)とも出会うようで、三角関係に身を投じることになるのではないか。
数多くのキャラクターが登場する朝ドラの中でも、特に耳目を集めるヒロインの“恋のお相手”。『あまちゃん』(2013年度前期)の福士蒼汰、『半分、青い。』(2018年度前期)の中村倫也、『スカーレット』(2019年度後期)の松下洸平、『おむすび』(2024年度後期)の佐野勇斗など、ブレイク前夜の俳優陣が視聴者の心を鷲掴みにし、さらに飛躍を遂げていった。
近年で最も印象深いのは、2021年度後期放送の『カムカムエヴリバディ』で初代ヒロインの安子(上白石萌音)が恋に落ちる稔を好演した松村北斗(SixTONES)だ。太平洋戦争で戦死してしまい、出演は最初の4週のみとなったが、松村が体現する王子様のような好青年ぶりに魅せられる人が続出した。その後、松村が『夜明けのすべて』『ファーストキス 1ST KISS』『秒速5センチメートル』で立て続けに名演を重ね、日本映画界に欠かせない存在となっていったのは周知の事実。Aぇ! groupのメンバーで、松村の所属事務所の後輩にあたる佐野もまた同じ道を歩むのではないかという期待を抱かずにはいられない。
もっとも、佐野はすでに映画界で多くの爪痕を残している。2022年には、『20歳のソウル』にて主人公・大義(神尾楓珠)と同じく吹奏楽部のメンバーで、パーカッションを担当する佐伯斗真を演じた佐野。団体行動に馴染めず、青春を遠ざけていたところから、何事にも一生懸命な親友の姿に突き動かされる等身大の若者像を繊細に見せていた。普段はアイドルとしてステージ上でキラキラとした輝きを放っている佐野だが、俳優業では憂いを帯びた表情が印象に残ることが多い。2025年公開の映画『か「」く「」し「」ご「」と「』での“ヅカ”こと高崎博文役が顕著で、明るくクラスのムードメーカーでありながら、どこか周りを俯瞰的に見ている彼の二面性を佐野は見事に表現している。だが、決して冷淡なキャラクターではなく、人としての温かみも付随させる難しい技をやってのけているのだ。今回のオファーもそんな実績を買われてのことだろう。起用理由については「佐野晶哉さんは切ない表情が印象的で、あふれる知性を持ちながらも自らの生き方を模索するシマケンをぜひ演じてほしいとオファーしました」(※1)とのこと。心の機微を表現できる佐野は、シマケンを演じるのに適任というわけだ。
佐野がインタビューで「りんさんはシマケンに看護婦としての将来を相談してくれるんですけど、シマケン自身は『ちゃんと相談に乗ろう』としているわけでもなくて。だからこそ、少し距離を保ったまま投げられる言葉があって、その一つひとつがすごく印象的なんです」と語っていることから(※2)、シマケンは単なるりんの恋の相手としてのみならず、その人生に並走する心強いパートナーになっていくと思われる。すでにその予兆を感じさせるが、回を追うごとにシマケンの魅力に虜になりそうで、少し怖くもある。
参照※1.https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/33a6e175bcbe0b122765c2887e66ab9fe3b377f1※2.https://realsound.jp/movie/2026/04/post-2363515.html(文=苫とり子)
