(イラスト:大内郁美)

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トイレの心配や外陰部のトラブルなど、年齢を重ねるとともに増えてくる下半身の不調を、「老化現象だから」と諦めていませんか。「閉経後の長い人生を楽しむために、日々のお手入れは不可欠です」と語る専門医の関口由紀先生に、セルフケアについて聞きました(構成:浦上泰栄)

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腟まわりのトラブルを日々の習慣で改善

日本では腟など陰部のことを「デリケートゾーン」と呼ぶ習慣がありましたが、近年は「フェムゾーン」という新しい呼び名が定着しつつあります。腟と陰部には女性の美容と健康を守る重要な働きがあるため、「デリケートな部分」として触れないのではなく、状態をよく知って、きちんと手入れをしてあげるべき。フェムゾーンという呼び名には、そんな思いが込められているのです。

このフェムゾーンに起こるトラブルの多くは、腟を取り囲む「骨盤底筋」の力が低下することが大きな原因の一つ。骨盤底筋とは、骨盤の底でハンモックのように広がって内臓(子宮・膀胱・直腸など)を支える、ひし形をした筋肉群のこと。

女性の骨盤底筋には腟、尿道、肛門という3つの臓器の開口部が集まり、尿道や肛門の開閉をコントロールして、排泄のタイミングや排泄量を調節するという重要な役割を担っています。

ところが、ほかの筋肉と同様に骨盤底筋も妊娠や出産、運動不足、肥満、生活習慣、閉経による女性ホルモン(エストロゲン)分泌量の減少など、さまざまな要因によって柔軟性や弾力性、筋力が低下。その結果、頻尿や尿もれ、便もれ、外陰部の違和感などの不快な症状に悩まされてしまうのです。

閉経後に増えるフェムゾーンのトラブルをまとめて「GジーSエスMエム(閉経関連尿路性器症候群)」と呼び、50代以上の女性の2人に1人が、GSMを抱えているといわれています。

私のクリニックでもっとも多い訴えは「外陰部の乾燥やかゆみなどの違和感」で、2番目が「頻尿や尿もれ、再発性膀胱炎」、次に「性交時や、性交後に起こる痛みや出血」が挙げられます。

GSMは、すぐに命にかかわる病気ではありません。とはいえ、「外陰部が乾燥して、下着でこすれるとヒリヒリする」「尿もれが頻繁にあり、臭いが気になる」といった不健康な状態が長く続くと、QOL(生活の質)が低下し、前向きに生きようという意欲が失われてしまいます。

頻尿を気にして外出の回数が減り、コミュニケーションの機会が奪われることも問題で、認知症のリスクが高まることに。また、姿勢の悪さや猫背も、骨盤底筋の衰えと無縁ではありません。骨盤底筋力が低下すると、骨盤が後傾して猫背や巻き肩になりやすく、歩行時の姿勢が崩れ、歩幅も小さくなって転倒リスクが増えてしまうのです。

まずは、次のページのチェックリストで、自分の骨盤の状態を知りましょう。腟の中に指を2本挿入し、腟壁に直接触れて、骨盤底筋と腟、両方の柔軟性や弾力、締め上げる力を確認する方法もあります。

また最近は、「骨盤臓器脱」を発症する人が増加。これは骨盤底筋のゆるみがひどく、子宮や膀胱、直腸などの骨盤内臓器が本来の位置からずり落ちて腟内に垂れ下がったり、体外にはみ出したりする病気のことです。

股の間にピンポン球が挟まっているような不快感や、排尿・排便が困難になるなどの症状が表れ、手術が必要になるケースも。60代以降は注意が必要です。

現代は床の雑巾がけをする、階段を上がる、和式便器を使用するなど、下半身の筋肉を動かして骨盤底筋を鍛える機会が減っています。そこで本誌で紹介している骨盤底筋のトレーニングと腟ケアを毎日の習慣にしましょう。

適切なケアによってフェムゾーンのゆるみが改善され、血行が良くなると、頻尿などのトラブルが解消。さらに腟が潤いを取り戻すことで、性交時の痛みや出血がなくなる、骨盤底筋に支えられて背筋がシャンと伸びる、といった効果も期待できます。

人生100年時代に健康寿命を延ばして、最後まで活力に満ちた人生を送るためにも、さっそく今日からフェムゾーンのケアに取り組んでください。

骨盤底筋の「ゆるみ度」チェック

一つでも当てはまるものがあれば、骨盤底筋力の低下が進行中です!

□ 咳やくしゃみをしたときに尿の「ちょいもれ」が起こる

妊娠・出産経験がある

□ 姿勢が悪い、猫背だといわれることがある

□ 座っているときにひざを閉じにくく、開いてしまう

□ 定期的な運動習慣がない

□ 下腹部を触ると冷えを感じる(または下腹部が冷たい)

□ 日中、9回以上トイレに行く

□ 排尿後、尿がちょろちょろともれることがある

□ トイレに行く途中、尿意をガマンできず尿がもれる

□ 腟に何か物が挟まったように感じることがある

□ 排便時にかなりいきまないと便が出てこない

□ 長時間、座っていることが多い