しかし、厚生労働省の検討会報告書や東京都の施策資料等でも、当事者から「マークを付けていると嫌がらせを受けた」「舌打ちをされた」といった声が課題として報告されています。本来、安心を与えるためのシンボルが、時にトラブルを招く不安要素になっているという悲しい実態があるのです。

2. 誰もが「誰かの優しさ」を必要とする場所

今回のエピソードで、妊婦に足を引っかけた女性が語った「中絶の痛み」。その悲しみ自体は否定されるべきではありませんが、それを赤の他人にぶつける行為は、結果的に自分自身の心をさらに深く傷つける「自業自得」な結末を招いてしまいました。

また、困っている人を前に「見て見ぬふり」をしてしまう空気も、私たちの心を殺伐とさせる要因の一つです。

「自分も疲れているから」「関わると面倒だから」……。そんな心の壁を、ほんの少しの想像力で取り払うことができれば、電車内はもっと呼吸のしやすい場所になるはずです。

すべてをルールで縛るのではなく、隣にいる誰かの背景を思いやる。そのささやかな優しさが巡り巡って、いつか自分が困った時の救いになる――。今日もしっかりと足元を確かめ、誰もが安心して目的地まで辿り着けるような、温かい車内環境をみんなで育んでいきたいものです。

<TEXT/chimi86 再構成/日刊SPA!編集部>

―[乗り物で腹が立った話]―

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。