極細タイヤで驚きの速さ『ジャガー SS100』 不気味なほどに優秀『BMW 328』 1936年生まれの2台(2) 隔世の違い
1930年代のスポーツカーそのままな佇まい
ジャガー SS100には、新旧の技術が入り混じっていた。シャシーはボックスセクションで、サスペンションは前後ともリーフスプリングにビーム/リジッドアクスル。カーリング社製の機械式ブレーキと、ウォーム&ナット式のステアリングラックが組まれた。
【画像】1936年生まれのスポーツカー BMW 328とジャガー SS100 同時期のクラシックたち 全148枚
ボディは、木材のアッシュ材をフレームに、アルミ製パネルを固定したもの。優雅に後方へ伸びる、トレードマークといえるフェンダーは、外注されていた。

ジャガー SS100 2 1/2リッター(1936〜1940年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
ELK 4のナンバーで登録された今回の車両は、1937年式。シャシー番号は49002で、戦争を挟み、1960年にはブランズハッチ・サーキットでスプリントレースに参戦している。1度アメリカへ運ばれるが、1987年にグレートブリテン島へ戻ってきたという。
巨大なルーカス社製ヘッドライトに、ル・マン仕様の燃料タンクを備え、佇まいは1930年代のスポーツカーそのまま。丸くえぐられたドアに、リア積みのスペアタイヤ、低いフロントガラスなど、同時期のどんなモデルを持ってきても魅力度で劣らない。
運転体験へポジティブなモス社製4速MT
ステアリングホイールとシートの間に太ももを滑り込ませ、小さなバケットシートへ腰を下ろす。足元の空間は狭く、ペダルの間隔も近く、ソールが広い靴では2枚を同時に踏んでしまいそう。ツインカウルのダッシュボード下へ腕を伸ばし、シフトノブを探す。
前方には、ルーバーが切られたボンネットが伸び、ロマンティック。正面には、クリーム色に染まった盤面のスミス社製メーター。SSのロゴが誇らしげだ。

ジャガー SS100 2 1/2リッター(1936〜1940年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
ステアリングのボスには、点火タイミングのレバーが備わるが、スタートボタンへ触れた途端に6気筒エンジンは目覚めた。クラッチは軽く踏め、滑らかにつながる。ゆっくりアクセルペダルを傾けると、モス社製のストレートカット・ギアが鳴き始める。
エンジンは粘り強く扱いやすい。30km/hを過ぎたら、3速を飛ばし4速へ入れて巡航できる。戦後のモス社製マニュアルは評判が振るわないが、SS100に載るユニットは運転体験の印象へポジティブ。スロットへすんなり入り、心地良い。
細いタイヤで驚く速さのコーナリング
刺激の濃さでは、BMW 328の方が遥かに上。向こうの方がパワーデリバリーは積極的で、コーナリングや乗り心地でも敵わない。もっとも、SS100が扱いにくいわけではなく、年式を考えると328が桁違いに優秀なだけに過ぎない。
タイヤは細いが、コーナリングの速さへ驚く。硬いリーフスプリングがロールを抑え、旋回時のバランスも素晴らしく、限界を事前に挙動で教えてくれる。他方、ヘアピンで大胆に扱うと負荷へ堪えきれない。荒れた路面では、振動を抑えきれない。

ジャガー SS100 2 1/2リッター(1936〜1940年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
深追いしなければ、SS100の個性へ惚れ惚れする。温かい季節の夕暮れ時に、弾けるような排気音へ包まれながら、優しく灯るスピードメーターを眺めれば、幸せに違いない。究極的な充足感で328に及ばなくても、心を許せるドライバーズカーだ。
いくつかの弱点は、乗る時間が長くなるほど気にならなくなる。滑らかなアスファルトなら、速さを謳歌できる。ソリッドでキレの良い328に対し、世代の異なるスポーツカーに思えるかもしれないが。
不気味なほど優れたBMW 328
戦前のクルマには、ドライバーを戸惑わせる例が珍しくない。そんな中で328は、5分も走らせれば、否定的な評価が殆どない理由へ納得できる。1930年代としては小型・高出力のエンジンを小柄なボディへ搭載し、路面を問わず高い速度域で安定している。
戦争へ突き進む戦前のドイツ政権の資金力で、BMWが技術を高めたことは事実。だとしても、フランスやイタリアのライバルが叶えることができなかった、優れた性能を量産化していたことも事実。今でも、不気味なほど優秀に思える。

シルバーのBMW 328と、アイボリーのジャガー SS100 2 1/2リッター マックス・エドレストン(Max Edleston)
運転の魅力という、新たなクルマの評価基準を生み出した328。裕福な人なら、ディーラーから届いたまま日曜日のレースで勝利し、平日には仕事へ向かうことができた。
1936年6月のニュルブルクリンクで、エルンスト・ヘンネ氏が駆る328は圧倒的な速さを見せつけた。戦前のル・マンでも、クラス優勝を遂げている。1950年代に入っても、競争力は高いままだった。近年の高騰へ、理解を示せたとしても不思議ではない。
協力:クラシック・モーター・ハブ社
328とSS100 1936年生まれの2台のスペックBMW 328(1936〜1940年/欧州仕様)
英国価格:695ポンド(新車時)/70万ポンド(約1億4700万円)以下(現在)
生産数:459台
全長:3912mm
全幅:1524mm
全高:1400mm
最高速度:149km/h
0-97km/h加速:12.0秒
燃費:8.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:816kg
パワートレイン:直列6気筒1971cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:81ps/5000rpm
最大トルク:12.8kg-m/4000rpm
ギアボックス:4速マニュアル/後輪駆動
ジャガー SS100 2 1/2リッター(1936〜1940年/英国仕様)
英国価格:395ポンド(新車時)/60万ポンド(約1億2600万円)以下(現在)
生産数:459台
全長:3886mm
全幅:1600mm
全高:1372mm
最高速度:152km/h
0-97km/h加速:12.8秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1043kg
パワートレイン:直列6気筒2663cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:103ps/4600rpm
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:4速マニュアル/後輪駆動

BMW 328(1936〜1940年/欧州仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
