(※写真はイメージです/PIXTA)

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投資は自己責任」。当たり前の共通認識ですが、なかには真偽不明の情報や他人のアドバイスを盲目的に信頼した結果、重大な後悔につながるケースも少なくありません。50代専業主婦の事例をもとに、相場が不安定ないまこそ徹底すべき、投資のNGポイントをみていきましょう。※個人の特定を避けるため、事例は一部脚色して記事化しています。

“推し活”に励む50代女性の後悔

「彼の言うことだから間違いないはずだと思ってしまったんです。こんなこと、夫には言えません……」

都内在住のノゾミさん(50代・専業主婦)は、会社員の夫と二人暮らしです。子どもはおらず、夫の年収は約1,000万円と、ゆとりある生活を送っています。そんな彼女には、応援している“推し”の男性YouTuberがいました。

コロナ禍をきっかけに見はじめたその男性のチャンネルでは、主に投資に関する動画を発信しており、ノゾミさんは彼の影響を受け、資産運用に興味を持つようになったそうです。

「彼が言うなら間違いない」という思い込み

ことの始まりは2024年4月、イラン・イスラエルの軍事衝突を端に発した地政学リスクの上昇でした。このころ、中東情勢の緊迫化から日経平均株価が1日で1,300円を超えて下落するなど、リスク回避の動きが出やすい地合いとなっていました。

当時、彼女が応援するその男性が、自身のチャンネルで「今こそ追加で株を買うチャンス(押し目買いの好機)だ」という趣旨の発言をしていたそうです。さらに、彼が信頼しているという経済学者の意見も引用し、強気な姿勢を見せていたといいます。

ノゾミさんは「彼が言っていることなら間違いない」と確信し、翌日の始値で50万円分の株式を追加購入しました。テクニカル分析や業績の精査といった、投資本来のプロセスを一切省いて。

その後、彼の言うとおり株価は上昇基調に転じます。

「やっぱり彼の言うとおりだった」

そう思っていたのも束の間……ついにその時がやってきました。8月に起きた歴史的な株価暴落、いわゆる「令和のブラックマンデー」です。

どうしよう…パニックに陥ったノゾミさん

日経平均株価は、2024年7月31日(水)終値から翌月5日(月)までのわずか3営業日で約19.5%も下落。特に8月5日の下げはすさまじく、日経平均株価はこの日だけで4,451.28円も下落しました。

「どうしよう……」

これまで経験したことのない相場に、パニックに陥ったノゾミさん。推しが動画を出す前に、慌てて下落幅の大きかった銘柄を損切りしたといいます。その損失額は、約20万円にもおよんだそうです。

「彼が専門家ではないことは分かっています。でも、応援している人の言葉だったから、疑わずに信じてしまいました。今は金銭的な損失よりも、自分の判断へのショックで気持ちの整理がつきません」

「押し目買い」の危険性

投資の世界において「押し目買い」は有効な手法の一つです。しかし、それはあくまで個別の銘柄分析が伴って初めて成立するもの。特定の誰かが「チャンスだ」と言ったからといって、自分の資産状況やリスク許容度を無視して良い理由にはなりません。

最近でも、中東情勢の悪化による原油価格の変動など、相場が大きく動く局面は多々あります。そのたびにネット上には「絶好の買い場」という言葉が溢れます。

しかし、根拠のない情報を鵜呑みにするのは厳禁です。特に、憧れの人物や信頼しているインフルエンサーの発言には、無意識にバイアスがかかりやすくなります。

投資は自己責任

今回のノゾミさんのケースで救いだったのは、彼女がその“推し”を恨んでいなかったことです。「失敗は自分の責任」と受け止め、また一から貯蓄に励もうとしています。

投資は身近なものになりましたが、自己責任の世界であることに変わりはありません。しかし、投資経験が浅い人は、不確かな情報を「この人が言うなら間違いない」と、愛情や信頼によって盲目的に信じ込んでしまう危険性があります。

投資においては、どんな人から発された情報であれ、簡単に鵜呑みにすることなく、自らがしっかりと精査しましょう。

工藤 崇
FP事務所MYS代表
FP(ファイナンシャル・プランナー)