密かなブーム 1匹250万円からの超高級”癒やし”ペット「ビントロング」 別名”クマネコ”の姿
熊のような顔で猫のように愛らしい
丸い目をした愛らしい顔のモフモフ動物……。一見、毛の長いカワウソのように見えるが、その名を『ビントロング』という。
今、このビントロングが女性の肩に乗ったり抱かれたりしている動画がYouTubeやTikTokなどで散見されており「癒やされる〜」と、若い女性の間でバズっているのだ。
ビントロングは、犬と猫の中間に位置するグループのジャコウネコ科の動物で、日本ではハクビシンが知られている。生息地は日本以外のアジア全域で、別名「クマネコ」とも呼ばれている。つまり、「熊のような顔で猫のように愛らしい」ところから来ているそうで、体長も全長1〜2mと幅広く、大きいサイズのものは大型犬とさほど変わらない。
国内の動物園でも飼育されており、実際に目にしている人は多いはずだが、話題に上ることはほとんどなかった。それは動物園にいるビントロングに”かわいい”というイメージがそれほどでもなく、檻(おり)の外からしか見ることができない動物だったからではないか。ところが動画では、ペットショップやペットカフェを訪れた客がビントロングと直接、触れ合い、戯(たわむ)れている。つまり、ペットとして購入することも可能だという。
フライデーデジタルは、そんなビントロングと直接、触れ合うべくエキゾチックアニマルに囲まれてお酒や食事を楽しむこともできるペットショップ&カフェバー『パライゾ』(千葉県我孫子市)を訪問。ここでは、つがいで飼い、繁殖もさせているという。
そこでわれわれが目の当たりにしたビントロングは、想像していたよりかなり大きかった。体重は20kgほどで、ちょっと太った中型犬といったところか。小森裕太店長に話を伺った。
「見るからに愛らしい姿に加え、なんといっても人間に懐(なつ)いて触れ合うことができる希少な野生動物です。ウチにいる子はインドネシア生まれですが、現地に行っても簡単に出会うことはできません。森の奥に住んでいて普段は樹上で生活しています。ですから、ごく一部の珍獣好きのマニアにしか知られていなかったのです」
店内で“ビンちゃん”と呼ばれている、このビントロング、現在妊娠中で出産が近く、ナーバスになっている。そのため、刺激しないようにとのことだったので、残念ながら抱っこはできなかった。それでも、こちらがケージに近づくと、すぐに顔を近づけてくれた。顔の輪郭といい、まんまるの目、黒くしっかりした鼻は、確かにクマっぽく見えるが、愛らしい仕草に思わず抱きしめたくなってしまう。
店長がケージの扉を開けると、すぐに顔を出し、手を伸ばして甘える仕草をする。筆者が前に手を差し出すと、警戒する様子はまるでなく顔をすり寄せてくる。頭や体をなでても嫌がるそぶりはまったくなかった。
店長の背中に乗って戯れる姿は長毛種のネコのようで、なるほど別名“クマネコ”に納得だ。動物好きなら、一日中、触れ合っていたくなるだろう。この間、ビンちゃんが鳴くことはなかった。お店の人の話では、赤ちゃんの時は呼び鳴きをすることもあるが、成体になるとほとんど鳴かないという。では、体臭はどうか。ビントロングにも他の動物のように臭腺があり、見た目からも悪臭を放ちそうなイメージだが……。ビンちゃんに鼻を近づけてみると、かすかではあるがポップコーンのような匂いがした。動物臭が苦手な人でもスキンシップがとりやすいと感じた。
価格は250万円〜400万円
今、ビントロングが人気を博している理由について、小森店長はこう語る。
「ビントロングの生息地はインドネシアやフィリピンなどの島国と中国やベトナムなどの大陸と大きく2つに分かれています。国内の動物園にいるのは、その大半が毛の色が黒っぽく、顔つきもちょっと厳つい大陸系の個体なので熊っぽい。それに対し、ペットとして扱われているのはインドネシアの個体で大陸系より一回り小さい。パッと見て愛らしい目がハッキリと確認され、かわいいという印象が強いんです。性格もわりとおとなしいですからね」
どんなに愛らしくても動物園でしか見られないレッサーパンダと違い、ビントロングは扱っているペットショップに行けば間近に見ることができる。最近は、ペットカフェにもお目見えしており、直接触れられることも大きいという。
ビントロングを輸入している業者によれば、受け入れ先はほとんど動物園だというが、
「うちでお迎え(購入)された一般の方もいますよ。エサは動物園で使っている専用のフードとかお猿さん用のモンキーフードやフルーツです。バナナなら1日5〜6本くらい。日常のケアに関しては、散歩はさせなくても大丈夫。野生動物なので、どんなトラブルが起きるかわかりませんから外で散歩させることは推奨しません。家の中での運動で十分だと思います。爪切りは時々しますが、シャンプーなどは必要ないです。トイレも覚えてくれて、決まったところでしてくれます。ケージの外で遊ばせていても自分でケージに戻って用を足しますので心配ありません」
こんな愛らしい動物と一緒に暮らせるなら、さぞかし楽しいだろうが、ただ「そう簡単に手を出せる動物ではない」(小森店長)という。
まず、値段が250万〜400万円と超高額。ケージも飼育する場所も広くなければならない。ビントロングに詳しい獣医も限られるので、病気になったときに診てもらえる動物病院を確保しなければならないなど、飼育環境をしっかり整える必要がある。犬や猫とは違い、ハードルはかなり高い。
「簡単に飼えるというイメージを持ってもらっては困ります。私たちは『どうしても飼いたい』『どうしても一緒に生活したい』『(生態を)勉強したい』という人たちに向けてお店をやっています。ですから、流行りや勢いで飼ってもらいたくないのです。問い合わせはたくさんありますが、お断りさせてもらう場合も多いです」(小森店長)
ビントロングは第一に経済力、そして相当な覚悟がなければ、手を出してはいけないペットだということだ。愛らしさを実感したいならペットショップやペットカフェに足を運ぶのが無難なのでは──。
取材・文:佐々木博之
