通信制高校から目指す甲子園&東大進学 日ハム教育担当が異例の転身…大谷翔平も使った育成術とは?
大谷の若き日を見守った本村幸雄氏、四谷学院高で目指すもの
2026年春、異色の高校野球部が活動を開始する。有名予備校を運営する四谷学院(東京)が、茨城県に校舎を持つ広域通信制高校に硬式野球部を創部するのだ。夏の選手権から甲子園、そして日本一を目指して戦う予定となっている。監督に就任したのは、プロ野球の日本ハムで選手教育ディレクターを務めた本村幸雄氏。高校野球の指導には、2010年以来16年ぶりの復帰だ。異色のタッグは何を目指して立ち上がったのか。
通信制高校の野球部は近年、存在感を増しつつある。甲子園にも2012年夏の地球環境高(長野)を皮切りに、クラーク国際高(北北海道)、未来富山高(富山)といった学校が出場を果たした。全日制より柔軟にカリキュラムを組み、時間を使える通信課程の特色から、野球に打ち込みたいという生徒に注目されている。
ただ本村監督は、四谷学院高の野球部は、既存の通信制野球部と一線を画すものになると言う。「野球のために、ではないところに魅力を感じたので来たんです。あくまでも文武両道。学校の成り立ちからして、進学に特化した通信制の高校ですから。中には東大を目指したいという生徒もいますよ」。1期生となる15人にも、この点を伝えた上で入学意思を確認した。この考え方に共鳴したのは、プロの選手を見てきて感じたことも一因にある。
「プロ野球で活躍できている選手も、結局は文武両道なんです。学力は個人によって違うかもしれませんが、学ぶという意味ではみんなに共通していましたね」
本村監督は甲子園出場13回の伝統校、習志野高(千葉)から日体大に進み、卒業後は光明相模原高(神奈川)で教師となった。野球部の指導に17年間携わる中で出会ったのが、選手の目標達成を助けるツール「原田メソッド」だ。大谷翔平投手(ドジャース)が花巻東時代に「8球団からのドラフト1位指名」を目標として書いたシート「オープンウィンドウ64」を知る人も多いだろう。本村監督がこのツールに出会い、野球部に導入してからの9年間で、大きな変化があったという。
「導入するまではトップダウン型の指導だったんです。ただ原田メソッドは自立型人間を育成するためにある。考えることをサポートする方向にやり方を変えると、まったく部の雰囲気が変わりました」
選手は自身で目標を立て、そのためには何が必要かをオープンウィンドウ64に記し、達成度を日誌で振り返ることを繰り返す。「監督がいないときの練習が、一番変わりましたね」。誰に見られているから練習するという空気は一掃された。
大谷翔平を見て実感…「うまくなる選手」に備わる同じ能力
ここに目を付けたのが日本ハムだった。3年間にわたって口説かれた本村監督は高校教師を辞し、2011年から昨年まで15年間、千葉県鎌ケ谷市にある日本ハムの球団寮で若手選手の教育を担当した。そこで感じたことがある。高校、プロとステージは違っても、自分でうまくなれる選手には共通の資質があるのだ。
目標設定や、日々の振り返りをしたときに「1軍で長く活躍できる選手は、やっぱりちゃんとできるんですよ。そしてやらされてる感がない」。その典型が大谷だった。
四谷学院高は現在、1期生がやってくる日に向けて寮や練習場を整備中。寮では個室が与えられ、平日の練習時間も午後2時から3時間を基本とする。その後は自習や自主練習に使う。チームとしては3年後の日本一を目標にスタートするが、その中で個々の目標はまた別だ。それぞれの目標を達成するための行動が、チームのためにもなるという考え方。本村監督は言う。
「今までにない高校野球をやりたいと思ってるんです。日本一という目標があっても、そこを目指すにあたっては個々の役割が色々ある。個人の目標を考えて、そこに向かって取り組んでもらう。みんなで手を取り合ってという高校野球じゃなくて、一人一人の役割を遂行して、それが繋がればいいと思っているんです」
目標設定と振り返りという「原田メソッド」のサイクルは、もう一つの目標でもある大学進学にも生きる。四谷学院の予備校は、受験に必要な学習を中学レベルから東大受験レベルまで55段階のステップに細分化し、着実に習得していくシステムが売りだ。
「そこは四谷学院高の得意分野なので、プロにお願いします。僕たちが勉強を教えられるわけじゃない。そこもある意味プロ野球と一緒かもしれませんね。それぞれに指導担当がいるっていうね」
プロ野球が使うものと同じシステムを導入する、四谷学院の高校野球。新たな挑戦で、生徒はどのような成長を見せてくれるだろうか。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
