『ディフェンダー』はいかにしてダカールを制したか(前編) 市販車クラス初参戦 栄光を掴んだ軌跡
ダカール・ラリーの「本質」
ダカール・ラリーのビバーク(参加者が集まるキャンプ地)は、大規模な移動コミュニティだ。荒れ果てたアラビア砂漠に、バンやトラック、テントが雑多に集まって形成される。
【画像】初参戦で優勝! 市販車クラス『ストック』を制したラリーカー【ディフェンダー・ダカールD7X-Rとチームを詳しく見る】 全29枚
キャンプを歩くと、まるで映画『マッドマックス』の世界に足を踏み入れたかのようだ。数千人もの人々が、バイクからバギー、トラックまで、派手で奇妙な車両の群れを世話している。

W2RCストッククラスにワークス参戦した『ディフェンダー・ダカールD7X-R』
しかし、今年のダカールではそのキャンプ地の真ん中に、整然として効率的で、非常に英国的な落ち着きを保つ小さなオアシスがあった。ジャガー・ランドローバー(JLR)の『ディフェンダー・ラリー』チームのサービスエリアだ。同チームは今年実戦デビューを果たしたばかりで、今後3年間、世界ラリーレイド選手権(W2RC)へ参戦する方針を固めている。
言うまでもないかもしれないが、ダカール・ラリーはもはやパリをスタート地点とすることも、セネガルの首都近郊を通ることもなくなった。今や完全にサウジアラビア国内で開催されている。
この開催地に対する道義的な異論はあるだろう(湾岸国家が国際的イメージ向上を狙って主催する他の多くのスポーツ・文化イベントと同様に)。しかし、ラリーレイドの開催地として適していることは否定できない。広大な砂漠地帯は、15日間で約8000kmを走るレースにさまざまな色合いと表情をもたらしてくれる。
今年の大会は紅海沿岸の港湾都市ヤンブー近郊でスタート&フィニッシュし、途中で首都リヤドの近郊を通過した。ダカール・ラリーは熾烈を極めるトップ争いが注目を集めるが、600台以上の出場車両(自動車、バイク、バギー、トラック、急増中のクラシックカーの各部門に分かれる)の大半にとって、本質は「冒険」にある。
ワークス初参戦を決めた経緯
その意味で、ダカール・ラリーはランドローバーのモデルラインから高級ブランドとして独立し、過酷な冒険に特化した『ディフェンダー』と相性が良いイベントであると言えるだろう。
ディフェンダー担当マネージング・ディレクターのマーク・キャメロン氏は、「ディフェンダーを立ち上げた時、わたしが最初に提案したことの1つは『ランドローバー史上初めて、ワークスチームとしてダカールに参戦したらクールではないか?』というものでした」。

W2RCストッククラスにワークス参戦した『ディフェンダー・ダカールD7X-R』
確かに、過去には多くのランドローバー車がダカール・ラリーに参戦してきたが、今大会に挑んだ3台の『ディフェンダーD7X-R』は初の完全なワークス運営マシンだった。
JLRはダカール・ラリーへの3年間の参戦を表明し、またイベント公式パートナーとしても名乗りを上げている。しかし、どれほど熱心に取り組んでも、総合優勝は期待できない。専用設計のスペースフレーム車両が支配する『T1+』クラスではトヨタ、フォード、ダチアが総合優勝を争っているが、JLRは市販車ベースの『ストック』クラスに注力しているからだ。
市販車で挑むことの意義
その理由について、キャメロン氏はこう説明する。「T1+クラスには興味がありませんでした。市販車とラリーカーの共通点を示したかったからです。それが参戦理由です。最も頑丈で、最も凶暴で、最も高性能の市販車であるディフェンダー・オクタを基に、それと繋がりを感じさせるマシンを作りたかった」。
問題はあった。市販車クラス『T2』の規定が、キャメロン氏の言葉を借りれば「目的に合致していなかった」のだ。規定は20年間更新されておらず、現代の市販車を反映したものではないため、関心は薄かった。

W2RCストッククラスにワークス参戦した『ディフェンダー・ダカールD7X-R』
ダカール・ラリー主催者はJLR、トヨタ、フォードなど各メーカーと協力し、新規定を策定。新たなストッククラスを創設した。このクラスでは、基本構造を保持した市販車ベースの車両の参戦が認められる。一定のパワーウェイトレシオによる性能制限が課され、サウジアラビアの過酷な地形を走破できる範囲での限定的な改造が許可される。
過去数年間T2クラスを支配してきたトヨタ・ハイラックスのピックアップトラックはボディオンフレーム構造を採用しているが、ディフェンダーはアルミ製モノコックボディだ。キャメロン氏は、モノコック構造の四輪駆動車が従来のラダーフレーム車と同様に過酷なオフロード走行をこなせることを証明できる点が、このクラスの大きな魅力だったと認めている。
ストックレーサーの製作
ディフェンダー・ダカールD7X-Rは、正真正銘のストックマシンだ。ボディシェルは、スロバキアのニトラにある市販車の生産ラインから調達した。
「この車両に使われているプレス加工品など、すべてがデファイダー110を購入した場合とまったく同じものです」と、プロジェクトの技術統合責任者であるジャック・ランバート氏は語る。同氏は基本的に、JLRと車両の製作・運営を担当するプロドライブ社とのパイプ役を務めている。

W2RCストッククラスにワークス参戦した『ディフェンダー・ダカールD7X-R』
「ニトラ工場のチームとは非常に緊密に連携しました。規定上、ダカールに向けてボディに小規模な改造を加えることが認められていますが、接着剤が硬化して接合した後の改造は非常に困難です。工場のチームは週末に、部品を誤って取り込まないよう特定のロボットを停止させたうえで、これらのボディを特別に組み立てます。つまり、すべて市販車基準で生産された、ラリー仕様のボディなのです」
ボディはその後、英国バンベリーにあるプロドライブの拠点へ輸送され、そこで手作業でラリーカーへ組み立てられる。ただし、ほぼ手つかずのまま残されている要素が1つある。パワートレインだ。
ベース車両はディフェンダー・オクタで、4.4LツインターボV8エンジンと8速ATを搭載する。しかし、出力規制のため、D7X-Rにはリストリクターが装着され、出力はオクタの635psに対し395psに制限されている。オフロードでの低速走行を考慮し、トランスミッションのファイナルギア比も下げられた。
(翻訳者注:この記事は「後編」へ続きます。)
