蜜を狙う木登り名人!長舌スナイパー“マレーグマ”の生態とは!?【眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話】
長~い舌で、ハチミツを舐める マレーグマ
● U字形の模様:個体差はあるが、胸に明るいオレンジ色~黄色のU字形の模様がある。
● クマのなかでは最小サイズ:体長100~140cm、体重は25~65kgほど。見た目はまるで子グマのようである。
● 舌の長さは25cm超:細長い舌を使い、ハチミツや昆虫を舐め取る。
● 短い毛と大きな前足:熱帯の気候に適応。ツメが長く、木登りや掘削に特化している。
暑さに強く1日のほとんどを木の上で過ごす
マレーグマは、東南アジアの熱帯林に暮らす、世界でもっとも小さなクマです。体長は100~140cm、体重は25~66kgほどと成獣でも小柄。丸い顔に大きな目、つるりとした短毛並みから、可愛らしい印象を受けます。
その暮らしぶりはなかなかタフで、太く力強い前足と鋭くカーブしたツメで木にしがみつき枝から枝へと自由自在に移動します。というのも、マレーグマはクマ科のなかでも特に樹上生活に適応した種。実際、地上よりも木の上で過ごす時間のほうが長いといわれているのです。高い木の上に巣をつくり、昼間にそこで寝そべって休むこともあります。
また、熱帯の高温多湿な環境に合わせて毛が非常に短く、場所によっては皮膚が透けて見えるほどです。胸もとには、明るいオレンジ色や黄色のU字形の模様が存在感を放っています。これは個体によって形も大きさもバラバラ。この模様は名前の由来にもなっており、英語では「サンベア(Sun Bear)」と呼ばれています。
さらに特徴的なのが、なんと25cm以上にもなる細長い舌です。これを使って、木の割れ目に潜む昆虫やハチミツを器用に舐め取ります。その食性は雑食で、果実や小動物も食べますが、特に甘いものには目がないようです。
進化に関しては、ほかのクマよりも早い段階で熱帯に分化したと考えられ、インドネシア、マレーシア、タイなど、東南アジア一帯に広く分布しています。ただし、その数は減少しており、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは絶滅危惧種に指定されています。
可愛らしい見た目の裏に、したたかに生き抜く知恵と適応力を秘めたマレーグマ。今日もどこの木の上で、静かに熱帯の地を見下ろしているかもしれません。
クマなのにナマケモノっぽい だけど、やるときはやる
マレーグマは、小ぶりな体格とのんびりとした性格から「ナマケモノみたい」といわれることがあります。実際、ナマケモノのように昼間は木陰や木の上でじっと休み、ほとんど動かない時間が長く続きます。これは、熱帯の過酷な蒸し暑さを耐えしのぎ、体力をしっかり温存しておくためのすべです。
とはいえ、さすがクマだけあって攻撃力は高い。何か起これば俊敏に反応します。長く鋭いツメで木の幹や地面をガリガリと掘り返し、敵に遭遇すれば頑丈な歯でかみついて応戦します。特に、かむ力はクマのなかでもトップクラスで、硬いココナッツの殻すら砕いてしまうともいわれるほどです。
のんびりして見えて、やるときはやる。そんなギャップがマレーグマにはあります。
個体数が年々減少 現在は絶滅危惧種に
マレーグマは、熱帯の密林にひっそりと暮らしています。夜に活動し、昼間は木の上にじっと潜んでいることがほとんどです。人目につかないその習性から、野生での観察例は極めて少なく、比較的生態に関する情報が少ない種であるといえます。
さらに現在、森林伐採や開発、密猟によって生息域が大きく失われつつあります。野生での個体数は把握すら難しい状況です。とはいえ、その数が年々減ってきているということは確かであり、積極的な保全活動の実施が求められています。
まだ私たちの知らない「密林の物語」が、この小さなクマのなかに静かに息づいています。声を上げないその存在は、森とともに消えゆこうとしているのかもしれません。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話』監修:山粼晃司

