Nakamu、水溜りボンド・カンタ(撮影=池村隆司)

写真拡大

 400万人超えのYouTube登録者を抱えるチャンネルのブレーン的役割を担い、「佐藤寛太」名義でミュージックビデオなどの映像作家としても目覚ましく活躍する水溜りボンド・カンタと様々な業界のクリエイターが、クリエイティブの源流を含む創作論について語り合う連載企画「クリエイティブの方舟」。

(関連:【写真】水溜りボンド・カンタとNakamu、仲睦まじい対談風景

 第5回は、同級生6人組実況グループ・White Tails【ワイテルズ】(※現在無期限活動休止中)の発起人でプロデューサーのNakamuが登場。カンタ率いる映像制作会社・Arks株式会社が、2025年1月に日本武道館で開催された同グループのイベントの様子を収めたBlu-ray『WhiteTails “最初で最後が武道館”』の制作を請け負ったことで知り合った2人は、YouTubeクリエイターや会社経営者という共通点をもつ。今回はそんな2人に、武道館イベントの裏側や経営者としての悩みを赤裸々に語ってもらった。(編集部)

■2人をつないだ“武道館イベント”の制作秘話

ーーまずお2人の出会いについて教えてください。

カンタ:たしかオンラインでの打ち合わせが最初だったような……。

Nakamu:そうですね。僕らの武道館イベントで、人気ラジオ番組やイベントを手掛けてきた石井玄(玄石)さんにプロデューサーとして入っていただいたんですけど、そのときに「DVDやるんだったら、せっかくだし」ということで、最初に名前が挙がったのがカンタさんのチームでした。まずYouTubeで活動しているところにシナジーがあって、培ってきた編集スタイルと、1日目の公演中に撮った映像を2日目に流すというスピーディーな編集に対応できるということで、僕の方からも「ぜひ」と、お願いしました。

カンタ:石井さんとは『水溜りボンドのオールナイトニッポン0(ZERO)』からのご縁があって、Arksを立ち上げたこともお知らせしていたので推薦してもらったんだと思います。夜中に編集したものが次の日の公演で流れるのは、めっちゃ新鮮な経験でした。

ーーお互いの第一印象は覚えていらっしゃいますか?

カンタ:僕はゲーム実況者の実態がつかめていないというか、人によって違うんだろうなと思っていたんですけども、ワイテルズのみんなはYouTubeで見るまんまに感じて。

 ドキュメンタリーも撮ってはいますけど、普通に考えたらその道のプロにお願いしてもいいところを頼んでもらったので、YouTubeクリエイターならではの関係性とか、どの部分を見せたいか、見せたくないか、完成形がこうなったら嬉しいとか、自分ごとのように思えたというのが第一印象です。

Nakamu:僕はグループのなかでプロデューサー的なポジションにいたので、お2人でやられているチャンネルのプロデュースをしているカンタさんとは、グループに対する葛藤だったり、大変な部分も共有できるからこそ、ドキュメンタリーも生々しく撮っていただけるだろうという気持ちでした。

カンタ:俺も同じ感覚で。YouTubeクリエイターというものでくくったときに、仲のいい友だちでやっているけど数字で判断される世界にいなきゃいけないし、9年を経て、それぞれがやりたいことを見つけたり、家族ができる人がいるかもしれない。フェーズがどんどん変わっていくなかで最初で最後のイベントを武道館でやって、活動休止するという決断したというその思いを聞けばきくほど、同業の自分だからこそ、いい選択なんじゃないかと思ったり。

 Nakamuくんは全員の関係性が悪くなる可能性があるのに活動を続けていくことについて「ファンは本当に求めているのか」ということをずっと葛藤していて。それが正しいかどうかもわかんないけど、イベントをやろうと。メンバーも初めは、「やるの?」みたいな感じだったよね(笑)。

Nakamu:そうですね。2023年の10月に活動休止したいとメンバーに伝えたときには、すでに武道館の日程を押さえていたんですよ。そのうえで「グループの活動を休止したい。で、武道館も抑えてきた」「武道館までは頑張るし、みんなが輝けるようにするから」と言ったときの最初の返事は、「休止はいいけど、別に俺らは武道館やりたいと思っていないけどね」みたいなものでした。

カンタ:グループを一番見てきて肌で数字を感じたり、みんなの雰囲気でそういう選択をしたけど、うちのチームが密着してドキュメンタリーの素材を何十時間、何百時間と撮影していくうちに、だんだんとひとつになっていったような感じがしました。でも1年前にミーティングしたときは、けっこう孤独だったよね。

Nakamu:マジで孤独でした。それこそカンタさんチームと石井さんとのファーストコンタクトでは、ワイテルズ側は僕しか参加していなくて。そこで僕は「メンバーはまだそこまで前向きじゃないので、なるべくうまくカバーしていただいて」と、当時の本音もしっかり話しました。

ーーグループのリーダーとしての話も含めて、見えすぎるがゆえのものをファーストコンタクトで感じとったんですね。

カンタ:考えすぎているなと(笑)。だからどういうドキュメンタリーにするか考えたときに、ワイテルズのみんなにとっていいものにしたいから、全員がカッコよくみえる、楽しいものにしようと、そういう目線で追っていきました。

 相当みんな優秀だし、能力があるからこそ絡まっている糸みたいになっているけど、武道館に向かっていくにつれてそれが解けていっているのがドキュメンタリーに出ていると思いますね。

ーーカンタさんだからこそ作れたような感じがしますね。

Nakamu:間違いないと思います。一般的な映像制作会社に頼んだ場合、そこの温度感が見ている側にどう伝わるか、インフルエンサーレベルで理解するのは難しいと思っていて。カンタさんはご自身のファンだったりこれまでの経験から、僕らと僕らのファンの関係性や、ファンへの向き合い方を理解してくださっていて、ドキュメンタリーにはそれがすごく表れていると思います。

カンタ:編集をしていくにあたって、ワイテルズを見てきた人たちが気づいているであろう、「ここは友達なんだけど、ここは戦友だろうな」というメンバー間にあるニュアンスがわかるような、ファンが見たいものになっていると思いますね。

Nakamu:6人が完全に横並びじゃない感じですよね。矢印の向きだったり太さみたいなものがちょっと違うみたいな。

カンタ:編集すればするほど、それが自分でもわかってきて。武道館のステージを見終わったあと、全部のカメラの映像を確認したときは必要以上に時間がかかりましたね。「この表情、ドキュメンタリーに入れたいな」とか。武道館が終わったあとも、どんどん好きになっている(笑)。

ーー愛ですね(笑)。映像制作以上のことをされていますよね。

Nakamu:ほかの方に頼んでいたら絶対になかったクオリティ……エモーションというか、感情の部分がすごく映像のなかに垣間見える。ただ効率のいいカットとか、ただよく見えているわけじゃなくて、その裏にちゃんと編集者の愛があることは僕も感じているので、それはカンタさんに頼まないとできなかったことだと思います。

カンタ:みんなが限界すぎてカメラを回せない瞬間もあったんですけど、一応先輩だから、無理やり撮影するみたいな。普通のディレクターだったらやめておこうとなるところを、ここは絶対映像に残さないと自分がやっている意味がないと思って。もうてんやわんやでしたよ。

Nakamu:2日目はBroooockくんが作ったゲームが止まったりとか、本番2時間前にコントのセットが逆向きになっているのがわかったり。ほかのこともいろいろ同時多発的に起こっていて、ずっと走り回ってました。

カンタ:これはいいドキュメンタリーになるぞと思いました(笑)。でも素晴らしいなと思ったのが、3日間のうちの1日目はメンバーが緊張するかもしれないとか、あまりにやることが多いと大変だからというので、メンバーは本当に何も知らない状態でやっていたところですね。

Nakamu:リハーサルみたいな体をとって、ミスしても何とかなるみたいな空気感を作って。最終日は本当に本番としてやらなきゃいけないんですけど。

カンタ:だから3日中2日はけっこう和やかな空気だったんですけど、3日目は急に「ヤバいぞ」という空気に変わったもんね。素材を見ても、最終日は前の2日間と比べると、誰もカメラに向かって喋っていないし、尺が短いんですよ。でも本当のワイテルズらしさが入っているから、武道館に来た方でDVDを買っていない人は見てほしい。

Nakamu:準備のプロセスや緩んでいる時間と、「ヤバい」となってからの全員のピリついた空気感とか。

カンタ:これまでこういうドキュメンタリーを作ったことはなかったから、すごく不思議な気分。裏側も知っていて、「あの人たちがいま、舞台に立っている」という見方をしたときに、自分も大きな会場でのイベント経験があるからすごく共感もできるし。YouTubeクリエイターのイベントはファンも仲間なんで、「大丈夫っしょ」という感じで臨んでいたけど、実際にステージに立つと、「ファンがいっぱいいる」みたいな。それを俯瞰して見ているような感覚でした。

Nakamu:追体験チックだったんですか?

カンタ:「輝いているな」みたいな。自分のファンもこうやって見にきてくれていて、こうやって感動していたんだろうなと。でも、この6人はやっぱりすごいなと思って。なるべくしてなったんだということも、お客さんが感動する理由もすごくわかったから、YouTubeを含めて自分のやっている仕事は面白いなと思いましたね。

ーーいろんな思いがあったと思いますが、制作を進める上で印象に残っていることはありますか?

カンタ:一番はモザイク処理が大変すぎること。ワイテルズは顔出ししていないので、顔が映らないような画角で撮ることもできたけど、それだとなんかおもしろくないと思って顔も写していたんです。そしたら顔が鏡に反射しているとか、そういう映り込みがものすごく発生していて。ワイテルズメンバーやスタッフの方と一緒にチェックしたり、本当に大変でしたね。

Nakamu:本編は全員マスクを被っていたんですけど、ドキュメンタリーがね。とてつもない物量だったと思います。

カンタ:武道館でMVを撮ったことはあったんですけど、編集はしたことがなかったんで、単純にテンションが上がるという。

Nakamu :音ハメもしてくれたりしてたんですよね。これは僕からの注文ではなくて、カンタさんが……。

カンタ:やりたかったから、勝手に(笑)。好きなアーティストのライブ映像をいっぱい見て、サビは引きの方がいいんだなとか、疾走感はこうやったら出るんだみたいなことを、改めて理論化してやらせてもらえたのが個人的には楽しかった。遊ばせてもらいました。

Nakamu:めっちゃカッコよくなっていましたからね。エンドロールはDVD限定のものがついているんですけど、それもカンタさんが作ってくださって。

カンタ:「ジブンシ」というオリジナル曲に3日間のイベントの様子とドキュメンタリーを合わせた総集編みたいなものを勝手に作って、最後に差し込みました(笑)。

ーー出来上がった動画を見たときは、率直にどう思いました?

Nakamu:なにかやっているところをあとからカメラの視点で見ることはなかったので、「こんな風にみえるんだ」「この言い方しがちだな」とか、自分のよくないところがすごく目につきました。僕が知らないところでメンバーにひとりずつインタビューしてくれた映像では、メンバーが僕のことを褒めてくれるシーンがあって、グッとくるところもありましたね。

カンタ:男同士はめんどくさいですよね(笑)。直接言えばいいものを、カメラを介すると「よくやってくれていますよ」みたいな言葉が出てきたりするから。残しておくべきものだったなと思っていますね。

Nakamu:ドキュメンタリーには、カンタさんの目線で切り取ったワイテルズが出ていると思っていて。そこは僕が触るより、カンタさんに編集していただいたものの方がきっと写りがいいはずなので、信頼して任せていましたね。

ーーそういう意味では、ある程度節目のタイミングで初めてグループを俯瞰で見た感じですよね。どう見えましたか?

Nakamu:やっぱり6人って仲がいいんだな、というのが率直な感想です。僕らはみんな不器用で、全員変にプライドが高いので、自分の気持ちを素直に相手に伝えることができない。「いつもありがとう」とか「ごめんね」というワードが出ないんですけど、そういうのも実はボディランゲージのなかに含まれているんだと。そうやって僕らは関係を築いてきて、いまここにいるんだということが明らかになったなと思います。

カンタ:普通に考えたら9年間、同性の人間が6人でなにかをするとなると、どこかで足並みは揃わなくなっていくはずなんですよね。僕らのような2人組でもそうですけど、毎日一緒にいて、一緒に住んでいることが仲いいのかっていったら、いろいろあるじゃないですか。けど、なにかしら関係性が続いてるという時点で、仲はいいんだろうね。

Nakamu:間違いないですね。とくにオープニングは、全員別のドアから登場したんですけど、バラバラになったときでも心がつながっている感じがあって。音楽がかかって、全員が花道の先にあるセンターステージに集まる瞬間の、全員の目のギラつき具合というか、「よし、やるぞ」というスイッチが入って、「ここはマジで乗り越える場所」みたいな空気感は改めて仲のよさを感じました。

カンタ:本当に大切なときに助け合えるわけだから、仲は良いでしょ(笑)。武道館やってよかったよね。

Nakamu:僕らにとってはめちゃくちゃよくて。ファンの人にも同じような気持ちになってもらえたらいいなと思います。

■同性の友だちで長年YouTubeをやり続けることの“難しさ”

ーーワイテルズがデビューした2016年は、すでに水溜りボンドは活動をしていましたが、Nakamuさんは水溜りボンドの活動をどう見ていましたか?

Nakamu:僕らがYouTubeを始めたタイミングは黎明期を過ぎたぐらいで、ゲーム実況でいうと、ちょうどニコニコからYouTubeに切り替わりはじめたぐらいの時期でした。活動をはじめた当時僕は高校2年生で、都市伝説とかが好きだったんで、水溜りボンドのことは知っていました。会議室みたいなところでキュウリにトランプを投げているころから見ていたので、面白い人たちだなと思っていて。YouTubeクリエイターとゲーム実況者はまた違いますけど、僕らはこうなっていける世代にいるんだと、背中を見させてもらっていましたね。

カンタ:Nakamuくんは『M-1』のステッカーをスマホに貼ったりするくらいお笑いが大好きだから、お笑い好きのよくないところが出ているなという(笑)。僕もお笑い好きで、お笑いサークルに入っていたYouTubeクリエイターとなると、悩むところも一緒だし、いまは会社もやっているし、ここから先どういうことになっていくんだろうと、すごくワクワクしています。

ーーカンタさんはゲーム実況とはカテゴリ的に離れているところにいますが、ゲーム実況者はどのように見えていますか?

カンタ:それこそポッキーさんとかと話していてもそうだし、今回ワイテルズのみんなと触れ合ってみて、「同じだな」と思いました。関係性を見せていくし、日々更新していくし、リアルタイム感があるじゃないですか。だから変な話、勝手に「フィッシャーズ」みたいだなと思って。メンバーそれぞれの特色があって成り立っていて、やっていることは実は近かったりするのかなと。

ーー関係性を見せるための媒介としてゲームがあるということですね。グループのなかでいろんな関係性があるという話がありましたが、ワイテルズも同じだというのがわかったのは、昔から一緒にやってきたフィッシャーズや東海オンエアなどの大人数グループと接してきた経験があるからでしょうか。

カンタ:だと思うし、Arksのメンバーも大学時代からの友だちで、グループ的な要素もあったりするので、彼らから学ぶところは多いんで。奇跡的な集団ですよね、改めて思うと。6人の男が7、8年一緒にいるというだけで、レア度は高いと思います。

ーーフィッシャーズと聞いてどうですか?

Nakamu:遠からずですけど、本当に意識はしていなくて。幼馴染というか、ある程度成熟する前の思春期あたりを一緒に過ごした人たちというのは、インフルエンサーじゃなくても、4、5人だろうが6人だろうが、どこの幼馴染もみんな同じ空気なんだろうなと。見ている人のなかでそこが日常の延長線上にあるから、画面の向こう側であっても共感できるのかなと思いますね。

カンタ:そう考えると、6人でゲーム実況やる方が難しそう。生身の人間で出ている方が、ニュアンスもちゃんと伝わりやすいし、表情があるし。

Nakamu:それ、すごく苦労しました。僕がとくにツッコミ役かつ言葉選びがちょっと強めで、感情が声に出やすいタイプなので、表情が見えないと6人のなかでは何事もなく終わっていることが、見ている人からすると言葉がすごく強く聞こえたり。トークがベースゆえに、自分の見せ方がわかんなくなった時期もありましたね。

カンタ:僕たちは顔が見えるからこその悩みはあるけど、根本的にはやっていること自体の骨組みは同じなので、共鳴し合える部分が多いのかなと思います。

ーーお2人には会社経営者という共通点もありますね。プレイヤーと経営者には違う難しさがあると思いますが、Nakamuさんは難しさを感じていることはありますか?

カンタ:ワイテルズが一旦区切りがついてさ、いまはどうするかというタイミングでしょ?

Nakamu:いままではプレイヤーとして自分の成長に目を向けないといけなかったのが、いまはスタッフの成長に目を向ける時期に入ったと思っていて。それこそプレイヤーのときは全員のケツを叩いている感じだったのが、いまは僕が旗を振って、後ろからみんながついてきてくれるので、道の伝え方は変えていかないといけないなと思います。

カンタ:すごく面白い。普通、人生でどっちも経験できないじゃん。こんなにいろいろ経験ができて、むしろ変化していかないといけない仕事でもあるから、同じことを言っていたらダメで。もう1回、ゼロからやっているみたいな。

Nakamu:間違いないですね。会社を作ったのもワイテルズのイメージを一回外して、自分がやりたいことをもう少しフリーダムにやりたいとか、そういう看板がなくても評価されるような人間になりたいという気持ちがあったので、そこもチャレンジですね。自分でも成功の道筋はまったくもって立っていないですけど、なんか面白そうだし、一度しかない人生だから、やりたいことやってみようというスタンスです。

■YouTubeから社会という海へ出た2人の現在地

ーーNakamuさんが会社を作られたのが今年の4月ということで、経営者としてもカンタさんの方がちょっと先輩ですよね。

カンタ:やめてください(笑)。みんなついてきてくれていますけど、水溜りボンドというものや過去に自分がやってきたものの影響下から出ていこうとして、こういうDVDのお仕事をさせてもらうときというのは、まったく違うコミュニケーションになるんですよ。納期もいままでは「遅れてすみません」みたいな感じでいけていたことが、仕事がちゃんとできるところをみせないと許してもらえないというか。本当の実力はやっぱりそういうところなんですよね。同じフィールドなんだけど、まったく違うゲームをやり始めたみたいな感じです。

Nakamu:耳が痛いですね(笑)。僕はカンタさんとはこのお仕事しかご一緒していないので、カンタさんはそういうのがスタンダードでできる人だと思っていたんですよ。カンタさんも頑張っているんだと感じたからこそ、できないことを言い訳にしちゃいけないなと思って。いまの話を聞いて、僕も頑張らないといけないという気持ちになりました。

カンタ:俺もさ、ものづくりをするとなったら時間なんて気にしたくないよ。経費周りとか、お金の数字みるのも嫌いだし。でも出役としてだったらいつもタクシーに乗っていくところを、自分で車を運転して行ったり、電車に乗って移動しようとか。そういうスタンダードがわかっていなきゃいけないし、いまそれに苦しめられていて。だから自分もちゃんとアップデートして、あのころは大丈夫だったことが実はいま、大丈夫じゃないかもしれないと、日々考えてやっていますね。

Nakamu:「わかるー」と思って聞いてました(笑)。

カンタ:社会人になったことがないので、みんなで社会人になろうとしているときに、自分が理解していないと言えないから。これはちょっと難しいですね。

Nakamu:ファンが相手じゃなくなるというのが、社会人ということだと思うんですよ。多少ガタツキがあるところが愛嬌だった部分が、僕らがちゃんとしたものを出していかないといけないし、より襟を正さないといけない。もっと判定がシビアになっていっている感覚ですよね。全然違う海に飛び込んでいる感覚があるので、水の温度に慣れながら泳ぎ方ももう1回模索したい。とりあえずジタバタする夏なんだろうなと思っています。

ーー学びの1年になりそうですね。ワイテルズは現在無期限活動休止中ですが、Nakamuさんのこれからの活動を教えていただけますか?

Nakamu:自分が出力できるものの幅をとにかく広げようと思っていて。ずっと絵本を作りたいと思っていたので、いまは絵本のお話を書いたり、油絵を描いたり、漫画の原作やラジオをやらせていただいたり。舞台もやろうと思っているので、その脚本も書いています。

 僕がいち個人のクリエイターとしてやっていけるところを見せるのが、ここまで僕についてきてくれているスタッフを支える土台になってくると思うので、仲良くさせてもらっている企業やワイテルズ時代にお世話になったイベンターの方々に向けた提案書を作ったりもしています。

ーー映像だけにこだわらないということですね。

Nakamu:僕はあまり媒体にこだわりがないので、自分が面白いと思ったものをどの媒体で出すのが一番いいかを考えています。アクション漫画にしたら面白いと思ったら漫画にしてみたり、より彩色豊かに、子どもでもわかりやすいような言葉で伝えていくことが大事だと思ったら絵本にしてみるとか。どこに出せば一番いいのかを模索しながらやっていくというのが、うちの会社の方針です。

カンタ:ヒット作をつくりたいみたいなのはあるの?

Nakamu:30歳までに代表作をひとつ作りたいという、でっかい夢はありますね。世の中の人に、「僕が作った」と胸を張って言えるようなものを出す。そのためにいろいろやっている感じですね。

■“バズ”に対しての向き合い方

ーーNakamuさんはいろんなことに興味があるようですが、そもそもなぜワイテルズはゲーム実況だったのでしょうか。

Nakamu:家でゲームを禁止されていて、高校生のときにスマホを買ってもらってから、その反動でめっちゃ遊び始めたんですよ。そこからYouTubeのゲーム実況に出会ったんですけど、そのとき抱いた感情は「ゲーム実況がやりたい」じゃなくて、「見た人はこのなかに入れてほしくなるよな」と、そういうところにすごく引力を感じたんです。僕はいつかオフラインイベントで人を感動させるようなことをしてみたい、人の心を動かすようなクリエイティブを作ってみたいという気持ちがすごくあって。ゲーム実況を続けていけば、最終的に武道館みたいな場所に立てるかもしれないと思ったのが、ゲーム実況を選んだ理由ですね。

 ゲーム実況をやっていくなかで、ただゲーム実況で数字を出すんじゃなくて、あくまで僕らはじっくりと、バズらないで自分たちの力だけで人気を集めていこうと。大きな一歩を踏み出さずに、とにかく煮詰めて強いコミュニティを作って、イベントに変換していこうという作戦を9年間続けて、ようやく武道館が実現したという感じです。

ーーカンタさんはバズらないでやっていくという戦略は、どう思いますか?

カンタ:すごくわかります。バズることは消費されることなんで、「“あれ”の人だよね」となっちゃうと、そのあとがけっこう難しい。ジリジリとやっていくからこそちゃんと身になるというか、大きなイベントを早めにドカーンとやったら、それでファンが満足しちゃうところを、ファンのみんなを連れていく最終的な目標が武道館で、実際に3日間できたのも集大成だと思う。すごく戦略的ですよね。

Nakamu:地道にロードマップを敷いて、やってきたつもりです。武道館と決め打っていたわけじゃないですけど、武道館ぐらいみんなが知っている場所で自分が演出とかディレクションを全部やったうえで舞台に立つことをすごく夢見ていました。

カンタ:異常ですね(笑)。

Nakamu:あまり信じてもらえないんですけど、本当に最初からそれは考えていました。武道館がなかなか押さえられないことは、これまでイベンターの人たちから聞いていたんです。どうやったら押さえられるかを考えていたときにラジオの話がきて、「TOKYO FMだったらいけるかも」と思って、そこで番組をやり始めて。

 でも、メンバーは全然ラジオをやりたがらなかったんです。ゲーム実況とラジオは、顔が見えない、喋りでいくという部分がすごく似ているので、コンテンツが寄るんですよ。そのなかでもラジオを続けた理由は、最終的に武道館につながると、なんとなく僕のなかにあったからですね。

ーーラジオにもそんな裏話があったんですね。せっかくの対談なので、普段聞きづらいけど聞いてみたいことがあれば。

カンタ:すごく能力が高いし、ロードマップを敷いて夢を叶えるところまで達成しているけど、自分に自信があるのか? これは聞かれたくない質問かと思う。

Nakamu:自信がないから作戦を立てるんですよ。前に進むための推進力を得るために設計図を書いて自信をつけて、「これならいける」と思って進む。なので、自信があるともいえるし、ないともいえるんですよ。でも、デフォルトはめちゃくちゃ自信ないです。

カンタ:一緒ですね、僕も自信ないから。自信がある人って不思議じゃないですか。表面上必要なときがあるにしても、「明日はできないんじゃないか」と思わないと、明日も頑張れない。いまこの記事を読んでいる人からしても、Nakamuくんは“人生思い通りになってきた人”じゃないですか。言った通りにできてきたことが、次こそはできないんじゃないかっていう恐怖で、またやらなきゃいけなくなるという。この呪われているという事実だけ知れたから満足です(笑)。

Nakamu:最近、星野源さんのインタビュー記事を読んだんですけど、星野さんも同じように、ずっと自分に満足してないから前に進まないといけないみたいな話をしていて。彼ほどではないですけど、武道館の反省点はいっぱいあるし、次にまた自分が大きいイベントを作るときがきたら、もう少しこういうものを作りたいとか、あとから思いついた面白いこともたくさんあるんで、まだ止まれないなと思いますね。

 カンタさんはいま会社を経営していて、個人としても水溜りボンドとしてもチャンネルをやられていますけど、そのどれかを脱ぎたくなる瞬間はないんですか?

カンタ:それはないね。3つあるから成り立っているというか。モノって3点あったら立ったりするじゃん。ああいう感覚で、水溜りボンドだけだとその柱が細くなったときに不安定になるから、別のとこにも柱を立てていって。水溜りボンドで僕らが求めていることは楽しく活動することだから、お金が稼げないとか未来が不安だということが一番避けたい事象なのよ。だから増していっているのかも。

Nakamu:仲良くなれないかもしれない(笑)。僕は草鞋を1足しか履けないんですよ。だから自分のやりたいことをやるために、一度ワイテルズを止めざるを得なかったんですよね。

ーーいま、いろんな表現を複数の媒体でやっているのは、ある種それに近いことでもあるんじゃないですか? もしかしたら、作ることのストレスを作ることで発散しているとか。

カンタ:その循環で全部が上手いこと回っているみたいな。

Nakamu:言われてみると、そんな気もしてきますね。僕はワイテルズの看板を下ろしたら、ワイテルズって呼ばれなくなると思って生きてたんですけど、まだワイテルズはついてくる。自分で作った鎧が強すぎて、ワイテルズよりもデカい何かを作らなきゃいけなくなったんですよ。だからそれは、“打倒ワイテルズ”なんですよね。自分が9年間かけて育ててきた“過去の自分”という巨大な城と戦うってことなのかなと。

カンタ:まさしく僕も日々そう思っています。水溜りボンドもこれからも続いていくとはいえ自分が作った作品ではあるので、それを超える超えないじゃなくて、同じようなものを作るのは非常に難しいですよね。その人にはその人の地獄があるわけだから、もし2つ目を成し遂げた暁にはまた新しい大きな悩みができて、そこに共感してくれる人は減っていく。どんどん孤独になっていくという、この苦しさを相談できる人はいない。

 YouTubeクリエイターでこの悩みを持つ人はそこまで多くはないので、けっこうレアケースだと思いますけどね。Nakamuくんとはこれからすごく長い関係になるかもしれない。なにか一緒にやりたいですし、これもきっとご縁なので嬉しいですね。

(文=せきぐちゆみ)