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希望の光になった170 Vの生産ライン

第二次大戦で荒廃したドイツには、暗く沈んだ空気が立ち込めていた。アメリカの爆弾が容赦なく落とされ、旧ソ連の戦線は西へ前進。大きな通りへ面する建物は破壊され、ナチスへ屈しないという世界の意志が武力で示された。

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しかし、奇跡的に生き延びた施設もあった。ドイツ南西部のシュトゥットガルトには、メルセデス・ベンツのウンターテュルクハイム工場の一部が残っていた。


メルセデス・ベンツ170 S カブリオレB(1949〜1951年/欧州仕様)

戦火が静まった1か月後には、アメリカの監督下で、少数の労働者が働き始めた。シュツットガルト兵器修理工場と名称は変えられ、瓦礫が撤去され、アメリカ軍車両の修理が行われた。同時に、メルセデス・ベンツ170 V用の生産ラインが修復された。

1946年1月に自動車の量産が認められると、その生産ラインは希望の光になった。戦前の繁栄に並ぶペースとは程遠くても、170 Vはメルセデス・ベンツを救った。ドイツ全体の再建へ必要とされた、車両の供給にも繋がった。

メルセデス・ベンツ・ブランドを立ち上げたダイムラー・ベンツ社は、1926年に創業。1930年代半ばにリリースされた、新モデルのW136型170 Vは、他を圧倒するほど先進的なモデルといえた。当時の中流階級の心を掴み、ブランドの地位を確立させた。

サイドバルブの直列4気筒エンジンはスムーズに回転し、堅牢だった。スチール製ボディは均整が取れ、高品質だった。価格も高すぎず、1935年から1942年までに9万1048台が売れている。

働くクルマの土台になったW136型のシャシー

厳しい時代を経て、1946年に大きな意味を持ったのはW136型の優れたシャシーだった。それ以前の特徴といえた、U字型セクションフレームではなく、1931年のW15型と同様に、中央がクロスした十字型バックボーンフレームで構成されていた。

サスペンションも従来的なリジットアクスルではなく、前後ともに前衛的な独立懸架式を採用。ブレーキは油圧式だった。


メルセデス・ベンツ170 S カブリオレB(1949〜1951年/欧州仕様)

量産許可が出た直後は、貨物バンやピックアップトラック、救急車といった働くクルマのベースに。1947年からは、乗用車ボディの生産も認められた。

その後、アメリカの管理下に置かれていたマンハイム工場と、フランス管理下だったガッゲナウ工場でトラックの生産が再開。ウンターテュルクハイム工場は乗用車へ本格的にシフトし、近郊のジンデルフィンゲン工場で最終的な組み立てが行われた。

1949年5月に、ドイツ北部のハノーバーでテクニカル輸出フェアという展示会が開かれる。そこでメルセデス・ベンツは、戦前のデザインと殆ど変わらない合理的な乗用車、W136型とW191型の2台を発表した。

W136型の170 Dは、ガソリンより大幅に安価だった軽油を利用するため、1697ccの直列4気筒ディーゼルエンジンを搭載していた。上級仕様に設定された、W191型の170 Sには、僅かに強力な1767ccの直列4気筒ガソリンエンジンが載っていた。

ドイツの奇跡的な経済発展を力強く牽引

チーフエンジニアを努めたのは、ハンス・ニーベル氏。彼は、1937年から1939年に活躍したグランプリマシンへ向けて設計したフロントサスペンションに手を加え、170 Sのシャシーへ与えた。

ベーシックなW136型では、横向きにリーフスプリングが2本組まれる構成だが、コイルスプリングへ変更。ダブルウイッシュボーンへ改め、テレスコピックダンパーも装備された。さらに、ブレーキも強化されていた。


メルセデス・ベンツ170 S カブリオレB(1949〜1951年/欧州仕様)

170 Sのボディは、僅かに長く幅も広い。上級仕様らしくヒーターがオプションで設定され、ボンネット・サイドのルーバーには、クロームメッキの装飾が施された。バンパーも大きく、ウインカーも装備していた。

今回ご紹介する170 S は、1951年に生産されたカブリオレBだ。この頃までに、内装も多くのクロームメッキ・トリムで飾られるようになっていた。

さらに、ヘッドライトがフロントフェンダーと一体になった、ひと回り大きいW187型が登場。直列6気筒エンジンを搭載し、2+2のシートレイアウトは220 カブリオレA、より広い4シーターは220 カブリオレBと名付けられた。

1951年には、旧西ドイツの初代連邦首相を努めたコンラート・アデナウアー氏を乗せた、リムジンのW186型300も発表。量産モデルの輸出は本格化し、メルセデス・ベンツだけでなく、ドイツの奇跡的な経済発展を力強く牽引することになった。

この続きは、メルセデス・ベンツ170 S 秘密情報部員が乗ったカブリオレ(2)にて。