岐阜で指揮を執る上野監督。「常に上を目ざして戦っていきます」と意気込む。(C)FC GIFU

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 2023年からJ3のFC岐阜の指揮を執っている上野優作監督。21〜22年末まで日本代表コーチを務めており、森保一監督や横内昭展コーチ(現ジュビロ磐田監督)のコーチングやマネジメントを間近で見ることによって、指導者としての自己研鑽を図ってきた。

 しかしながら、サッカー人としての長いキャリアの間には、上記2人以外の数多くの指導者にも接してきた。筑波大学を経て、アビスパ福岡入りした当時は清水秀彦監督の指導を受けたし、サンフレッチェ広島時代にはエディ・トムソン監督やミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現札幌監督)に師事。京都サンガ時代にはゲルト・エンゲルス監督のもとでプレーしている。

 上野自身が大型FWとして最も輝いたと言われる2003〜2005年のアルビレックス新潟時代には、現日本サッカー協会技術委員長の反町康治監督のもとで活躍。当時の経験は今に生きているという。

「反町さんとは3年間、一緒に仕事をしましたけど、ミーティングの仕方や練習メニュー、選手とのコミュニケーションの取り方など、いろいろ感じることはありました。反町さんはあまり選手と話をしない方でしたけど、それもまた、一つの監督像として自分の学びとなっています。一緒にプレーしたモトさん(山口素弘・現名古屋GM)さんのような先輩からも学ぶことは多かったですね」と上野監督は述懐する。

 現役時代のラストとなった2008年、そしてセカンドキャリアを歩み始めた2009年以降に栃木SCで長く共闘した松田浩監督(現テゲバジャーロ宮崎監督)も、恩師と言える人物の1人。インパクトは非常に大きかった。
 
「松田さんは指導者になってから最初の監督だったので、チームマネジメントはもちろんのこと、どうしたら4−4−2のゾーンディフェンスができるか、攻撃の組み立て方といった具体的な練習方法を学びました」

 特に松田監督はミーティング術に長けた指揮官で、選手の心に残る言葉を絶妙のタイミングで口にするのだという。

「『今は苦しい状況だけど、人生には表と裏がある。悪いことだけじゃなくて、良いこともある』といった声掛けは、僕自身もすごく響きましたね。昨季、ガンバ大阪を指揮された時も『松田さんに救われた』と言っていた選手がいたと聞きます。

 やっぱり選手を動かすのは気持ちの部分だと思うので、プレッシャーを少しでも楽にしてあげるだけで、結果は大きく変わってくる。指導者である自分が良い言葉、人の心を揺さぶれる言葉をたくさん持っていれば、それだけ選手のメンタルを前向きにできる。松田さんのようになりたいと思いますね」と、上野監督は最大級のリスペクトを口にする。

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 偉大な指導者との出会いを財産にしつつ、49歳の新人監督はJ2昇格の目標に突き進んでいく覚悟だ。岐阜は2020年から4シーズン、J3で戦っているが、何としてもカテゴリーを上げ、高いレベルを維持できるような体制を作っていくことが当面の最重要課題と言っていい。上野監督に託される部分は大なのである。

「オファーを受けた時、山道(守彦=スポーツダイレクター)さんからは『チームをしっかり安定させてほしい』という依頼を受けました。結果も大事ですけど、プラス、選手を成長させながら、しっかりしたベースを作っていくという2つ目の仕事も託されたので、それもやらなければいけませんね」

 過去の岐阜を振り返ってみると、元日本代表のラモス瑠偉監督を招聘したり、川口能活(現磐田GKコーチ)のような実績ある選手を呼んだ時期もあった。近年も柏木陽介、宇賀神友弥、田中順也らビッグネームを集めた編成で、一足飛びに昇格を狙うような雰囲気も漂った。だが、やはり「基盤をしっかり作らないとクラブとしての成長は難しい」という判断があったのだろう。

 その担い手として抜擢された上野監督は、地道にコツコツと若手を育て、ベテランとの融合を図り、攻守両面でバランスの取れたチームを作りつつある。

「選手が良いプレーをした時は本当に嬉しいし、楽しいし、勝った時に地域、サポーターが盛り上がるのはすごく幸せだなと思ってます。今後は短期的な目標ですけど、預かったFC岐阜を良いクラブにして、何とか昇格を達成させたい。そうすれば自ずと自分も一緒に上のカテゴリーの監督になれますから、より高いレベルの経験ができる。常に上を目ざして戦っていきます」と意気込みを新たにした。
 
 自身が離れた森保ジャパンもできる限り、試合をチェックしている様子。6月のエルサルバドル戦の前日には現地を訪問。久しぶりに森保監督とも話をしたようだ。

「日本代表には次の2026年北中米ワールドカップで目標のベスト8に到達してほしいなと思います。でも森保さんと遠藤航選手は『てっぺん(優勝)目ざす』って言ってるんですよね。なので、そこを本当に目ざせるようになってもらいたいですね。実際、今の代表はポジション争いも熾烈を極めているし、選手層は厚くなっていると感じるので、期待したいです」

 日本代表の進化を励みにして、2022年カタールW杯の代表コーチは、岐阜という地から日本サッカーを盛り上げていく構えだ。

※このシリーズ了

取材・文●元川悦子(フリーライター)