さらに、「僕は身体が小さいので、プロになるためには当たり負けしないようにすることと、ただ筋肉量を増やすだけではなく、持ち前のスピードやバネ、アジリティを損なわないようにすることを意識しました。そのために筋トレの量、食事の量やバランスをしっかりと自己管理しました」と語るように、きちんと正しい方向に努力ができる選手でもあった。

 心技体をしっかりと揃えている選手だからこそ、突然訪れたチャンスを逃さなかった。

「喜田拓也選手、渡辺皓太選手のように視野が広くて、頭の良い選手が自分の特長を引き出してくれたということもありますが、自分の中で感覚を掴めたというか、連係しやすかった。内側を取ってどんどんゴール前に行くプレーが出せたと思います」

【PHOTO】横浜の出場16選手&監督の採点・寸評。身体を張って粘り強く守った畠中。A・ロペスは常に駆け引きして攻撃の起点に
 
 2月21日から25日までに大阪で開催されたデンソーカップチャレンジプレーオフに九州選抜の一員として出場したが、チームは本大会に進むことができなかった。だが、2月28日から開催されているデンソーカップチャレンジ茨城大会では、プレーオフ選抜の一員として出場。

 グループリーグ第2戦の関東選抜Aとの大一番では、右サイドバックとして激しい球際や効果的な攻撃参加を惜しげもなく披露。4−0で迎えた65分には、右CKからニアサイドで垂直跳び66センチのジャンプ力を披露して、高い打点のヘディングシュートを突き刺した。

 その小さな身体になぜそこまでのバネとパワーを兼ね揃えられるのか。吉田を見れば見るほど、その魅力に引き込まれる。マスカット監督も彼を一目見て、その魅力に一気に引き込まれたのだろう。このシンデレラストーリーは偶然に見えるが、必然であった。

「開幕戦の川崎フロンターレ戦、第2節の浦和レッズ戦を見て、やっぱり強いなと思いました。右サイドバックの松原健さんはものすごくレベルが高いですし、小池さんが怪我から復帰すれば、さらに僕が食い込むには難易度が上がると思います。でも、そのほうが僕は成長すると思うんです」
 
 自分が一番の環境よりも、常に自分より上の選手がいて、その選手に追いついて、追い越すためにはどうすればいいかを考えるほうが伸びる。自分自身をしっかりと理解している賢い吉田だからこそ、これからの道の厳しさを歓迎し、向上心と思考力に変えている。

「マリノスに内定したことで、周りの自分を見る目は一気に変わると思います。でも、僕は僕。もともと頑張ることはベースにありますが、経験を重ねていくうちに、『頑張りどころ』をかなり意識するようになりました。どこに走ったらいいか、どこにポジションをとったらいいか、どうすれば自分の特長をチームのために活かせるか。この思考はこれからも続けていきたいと思います」

 九州での名声から全国区へ。これから先、横浜サポーターを魅了していく彼の姿が今から楽しみでならない。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)