サッカー日本代表「パリ世代」インタビュー05
鈴木彩艷(浦和レッズ/GK)前編

 プロ野球の球団などと違い、Jリーグのクラブはそれぞれ自前の選手育成組織であるアカデミーを持っているのが特徴だ。

 アカデミーで育ち、トップチームで活躍する選手は、クラブにとっても、応援するファン・サポーターにとっても特別な存在。まして、ジュニア(小学生チーム)からのアカデミー育ちともなれば、もはやクラブの宝と言ってもいいのかもしれない。

 そんな"生え抜き中の生え抜き"選手として、浦和レッズでプレーするのが鈴木彩艷である。

 身長190cm、体重93kgという恵まれた体躯を生かし、GKに必要な要素をことごとく備える多才な20歳は現在、浦和でのレギュラーポジションを掴むべく、日々競争に励んでいる。

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鈴木彩艷(浦和レッズ)2002年8月21日生まれ

---- 鈴木選手はジュニアからのアカデミー育ちです。どんなことがきっかけで浦和に入ったのですか。

「もともと地元が浦和で、浦和レッズは地元のクラブ。はじめは少年団(通っていた小学校のチーム)に入っていたんですけど、自分が小学5年生の時に浦和レッズのジュニアチームが立ち上がると聞いて、もう受けない選択肢はなかったですね。

 小さい時から埼玉スタジアムへ試合を見に行っていましたし、兄が少年団の時に当時のボーイズマッチ(現・URAWA KIDS MATCH。さいたま市内のスポーツ少年団によるJリーグの前座試合)に出たのも、スタンドから見ていました。なので、やっぱりこのスタジアムでやりたい、という思いが強くて、ジュニアのセレクションがあると聞いた時は、すぐに受けようと思いました」

---- セレクションに受かった時は、これで憧れのレッズに入れるんだ、と。

「(セレクションの前に)母に『もうGK(で選ばれる選手)は決まっているらしいよ』と、けっこうプレッシャーをかけられるようなことを言われていて、本当にやばいと思って最後のセレクションを受けていたので、受かったと聞いた時は本当にうれしかったですね。まあ、母の話はウソだったみたいなんですけど(笑)」

---- 小さいころから浦和の試合を生で見てきて、印象に残っている試合はありますか。

「中学2年生の時に、Jリーグチャンピオンシップファイナルのセカンドレグで、試合前にセンターサークルのバナーを持たせてもらったんです。試合前の雰囲気をピッチの上で感じられて、それは本当に鳥肌が立つような、すばらしいものでした。

 試合はスタンドから見ていて鹿島アントラーズに負けて(年間優勝を逃して)しまい、トップチームの選手ではなかったですけど、ジュニアユースに所属する浦和レッズの一員として、本当に悔しかったことも覚えています」

---- サッカーを始めたころからGKだったのですか。

「幼稚園の年中の時に兄の影響でサッカーを始めて、そのころはまだGKはやっていなかったですけど、小学校に入って親友と放課後サッカーをするとなった時は、もうずーっとGK。ボールを蹴ってもらって止める、ということをやっていました。

(浦和ジュニアに入る前の)少年団でも基本的にはGKだったんですけど、上の代のチームに入ってやる時はGKをやって、自分の代でやる時はフィールドもやる、みたいな感じでしたね」

---- それはGKにもフィールドプレーヤーを経験させよう、というコーチの方針だったのですか。

「いや、そういうわけじゃないと思います。たぶん、上の代だとフィールドでは通用しないってことだったんでしょうね(笑)」

---- フィールドをやるのも好きだったのですか。

「小学校低学年ぐらいの時は、どっちも楽しかったですね。でも、小さいころはボールを遠くに蹴れて、足が速ければ何とかなるところもありますけど、だんだんレベルが上がっていくにつれて、自分がこう......、フィールドでは何もできなくなったっていう感じです(笑)」

---- 浦和ジュニアの一期生として入った鈴木選手は、その後、クラブ初のジュニア出身のトップ選手になりました。

「ジュニアに入った時から、この浦和レッズでトップチームに上がること以外考えていなかったので、そこをクリアできてうれしいとともに、ここからだなという気持ちが強かったです」

---- トップに上がってからが本当の勝負ということですが、自分自身の現状についてはどう感じていますか。

「試合に出るために日々トレーニングしていますけど、チームのなかでの競争に勝てていないですし、まだ自分の力が劣っていると感じています。

 今シーズン、(国際試合を除いて)日本では4試合(リーグ戦2試合、ルヴァンカップ2試合)に出場していますが、自分としては数少ないチャンスでアピールしなければいけなかったのに、そこでも結果としていいプレーというか、いいアピールができていない部分がある。まだまだ何かが足りないのかなと痛感しています」

---- ユースチーム所属の高校生の時に2種登録されて以来、今季でトップチームでの4シーズン目となります。全体を通して振り返るとどうですか。

「やっぱりユースの時は試合に出ていた分だけ、トップでも試合に出たいという気持ちは強かったですけど、最初の1年はまったく試合に出られなくて、そこから徐々に増えて去年が一番多くプレーした(リーグ戦6試合、ルヴァンカップ9試合)とは思いますけど、また今シーズンはなかなかプレーできていない。

 細かいところを見たら年々成長しているのかもしれないですけど、数字や結果で見たら、試合に出場できていないという事実があるので、自分としてはこのままではヤバいというか、本当に危機感を持って今はプレーをしています」

---- Jリーグでは、若い選手が出場機会を求めて期限付き移籍をするケースも珍しくありません。

「もちろん、自分がこの先成長していくうえで、試合に出てプレーすることが非常に重要だということはわかっています。(浦和から)外に出て試合を経験するということも視野に入れながら、その可能性も考えながらやっています」

---- そこはフィールドプレーヤーとは違う、GKならではの難しさがありますか。

「そうですね。GKはひとつしかないポジションでもありますし、トレーニングのなかで成長できる部分はありますけど、試合を通して成長できる部分が非常に大きいとも感じているので。

 試合をして、次の試合までにすごく間が空いてとなると、試合勘といったところでの難しさもありますし、やっぱり試合に出続けながらやっていくほうが、メンタル的にもプレーしやすいかなとは思います」

---- 「自分の武器はこれだ」というのは、どんなところですか。

「守備では自分の身体能力を生かした伸びのあるセービングでゴールを守っていくことが強みとしてありますし、攻撃ではキックに飛距離が出るので、一発でチャンスメイクできるところが自分の強みではあります。ただ、その精度は、もっともっと磨いていかないといけないとも感じています」

---- キックだけでなく、スローも距離が出ますよね。

「U−17ワールドカップを見た人から、『スローが得意だね』と言われることは多いですけど、これくらいはほかのGKも投げられると思うので、そこまで強みとしている部分ではないです。ジュニアやジュニアユースの時はスローがめちゃ下手だったので、うまいと言われることに不思議な感じがします」

---- 今後ポジションを掴んでいくために、自分の課題だと考えているのはどんなところですか。

「まずは試合での安定感。細かいところですけど、一個のパスをずらさないとか、一個のキャッチをしっかり取りきるというところを含めた安定感です。

 それとクロスへの対応。どこにボールが落ちてくるかの判断や、ボールをしっかりと取りきる技術というところは伸ばしていきたいなと思っています。ただ、練習では起きないようなことを試合で経験することも多いので、やっぱり試合で学びながら進んでいくことが大事かなと思います。

 あとは、先ほども話した強みの部分の精度を上げることですね。キックの飛距離が出るからといって、ただ蹴って味方につながらなかったら意味がないですし、その成功率を上げるというところは、もっともっと磨いていきたいなと思います」

---- プレーの不安定さを自分でも感じている、と。

「試合中はいくらミスしても、メンタル的には気にせずやっていますけど、試合が終わって振り返ったときに、ちょっとドタバタさせてしまったなと思うことは多々あります。(西川)周作さんの試合に比べると、落ち着きだったり、安定感というところが足りないなと感じる試合は多いです」

---- やはり西川選手はいいGKですか。

「本当にすごいGKだと思います」

◆鈴木彩艷@後編はこちら>>20歳が見据えるパリ五輪、ワールドカップ、プレミアリーグ


【profile】
鈴木彩艶(すずき・ざいおん)
2002年8月21日生まれ、埼玉県さいたま市出身。ガーナ人の父と日本人の母との間に生まれる。小学時代から浦和レッズのアカデミーで育ち、2021年よりトップチームに昇格。3月2日に公式戦初出場を果たしてクラブ最年少出場記録を樹立し、ルヴァンカップではニューヒーロー賞を受賞する。日本代表はU−15から各年代で経験。2022年はU23アジアカップに飛び級、同年7月にはE-1サッカー選手権に出場するA代表に初めて選出された。ポジション=GK。身長190cm、体重93kg。