20分ほど異様な姿で泳ぎ続けていたサメ(画像は『New York Post 2021年11月24日付「‘Cannibal sharks’: ‘Half-eaten’ zombie shark still hunts for prey in video」(Caters)』のスクリーンショット)

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このほど研究者たちが海でサメの共食いを目撃した。サメの共食い自体は珍しいことではないが、それが記録として残されるのは滅多にないという。腹部をえぐられるように仲間に食べられてしまったこのサメは、出血しながら20分も泳ぎ続けていた。まるでゾンビのようなショッキングなサメの姿を『New York Post』などが伝えている。

今回“ゾンビサメ”と遭遇したのは、研究者であるマリオ・レブラトさん(Mario Lebrato、35)だ。マリオさんは、研究仲間たちとカマストガリザメ(Blacktip shark)を海にかえすためにスペイン沖にやって来ていた。

そして驚くべきことが起きたのは、連れて来たサメを海に放した直後だった。周囲に潜んでいたサメのグループが現れ、マリオさんらが放流したばかりのカマストガリザメに襲いかかったのだ。

「サメのグループの中には、300〜400キロもある大きなオオメジロザメもいました」とマリオさんは明かしており、海に帰ってきたばかりだったカマストガリザメは単体で戦うしかなかった。しかしカマストガリザメは大きくても体重は99キロほどしかなく、オオジロザメとの対格差には勝てず次々と攻撃を受けた結果、腹部が大きくえぐれるように食べられてしまった。

大量に出血しながらもカマストガリザメは必死に戦っていたが、最終的には逃げるようにその場を泳ぎ去った。その腹部はほとんど無くなってしまっており、背中の皮のみで繋がっているような痛々しい姿になっていた。生きて泳いでいるのも不思議な、まさにゾンビの状態のまま20分ほど泳ぎ続けていたが、最後には力尽きてしまったという。

今回のサメの共食いについて、オーストラリア海洋科学研究所のミーカンさん(Meekan)は「サメの共食いは凶暴なサメだけが行うものではなく、ある特定の種のサメが行う行動でもありません。多数の異なるサメが互いを敵対視するのです」と説明する。続けて「人間が飢えたサメを人々に近づかせないように対策しているために、サメ同士で攻撃し合う頻度が増えています」と明かした。

サメは一度人間に捕まると、助けを求める救難信号を出すという。ところが他の飢えたサメたちは手軽に食べられる食事がそこにあると考え、助けを求めていたサメを襲ってしまうのだ。

こうしたサメの共食いは今に始まったことではない。3億年前に生きていたというサメであるオルタカントゥスのフンの化石にはサメの赤ちゃんの歯が含まれていたことが分かっており、サメの共食いは大昔から続いている。

マリオさんは「サメの共食いを撮影して記録として残すことは、本当に難しいことです」と話しており、今回の出来事をカメラに収められたことに自身でも驚いているようだ。

画像は『New York Post 2021年11月24日付「‘Cannibal sharks’: ‘Half-eaten’ zombie shark still hunts for prey in video」(Caters)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)