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安心安全な大相撲観戦でした!

行ってまいりました、大相撲初場所千秋楽に。東京含めて全国各地に緊急事態宣言が出るなかではありますが、徹底した対策のもとで安心安全な開催を追求している大相撲。これまでの本場所の実例からしても、さまざまなイベントのなかでも非常に対策に気を配り、さまざまな工夫を凝らしているのが大相撲です。「どうにかしてできるようにする」ための人柱として、僕も奮って参加します。

↓合言葉は「みんなでコロナを押し出そう」です!


「押し出してヨソの国へ…」
「全部ヨソに行かないかな…」
「うわー、押し返された!」

などと言ってはいけない!気持ち、意気込みの話です!



今場所も対策は徹底されていました。緊急事態宣言のなか閑散とする両国駅前で、マスク&フェイスガード装備の係員がしきりに何かを呼び掛けています。どうやらチケットの裏面に名前と連絡先を書けと言っている模様。もしも誰かに感染の兆候が見られたなら、すかさず周辺座席の来場者に連絡を取ろうということのようです。

という話を聞くと、「じゃあ全部電子チケットにしてですね…」というIT回答をしてしまいそうになりますが、きっとそれはやっている側も見に来る側も理解を超える内容なのでしょう。わからない人を相手に「全部電子チケット化しましてですね…」などと正しい答えだけを述べても意味はありません。理想ではなく現実と向き合っていく、そんな大相撲の心意気が大量に用意されたゴルフ場とかに置いてある使い捨ての鉛筆に滲みます。

↓大量に用意しすぎて、別の場面では「どっちも未使用の箱」という罠もあったりしたが…!


うわ、うかつに右のボックスに使った鉛筆を投げ入れそうになったわ!

どっちも未使用という斬新な罠、さすが大相撲です!

(※使った鉛筆は係員に戻してくださいね)


消毒、検温、接触確認アプリの導入呼びかけ、ソーシャルディスタンス、換気、マスク着用、アクリル板、頻繁な清掃、飲食の制限…およそ考えられることは徹底して取り組まれた場内。入場者全員に注意喚起の冊子が配布されたり、東京都が作ったコロナ情報冊子が配布されていたり、一番ダメそうな大相撲こそ逆に勉強熱心な団体であったりする様子がそこかしこに現れています。ちゃんこを食べたり、マス席で語らったり、そういう楽しみは控えざるを得ませんが、一番大事な「相撲」をつづけてくれているのは本当にありがたいことです。

場内の掲示には休場者の名前がズラリと並んで一大勢力みたいになっていますが、それもまた致し方ないこと。できる範囲でできることをやっていくしかありません。誰かがいなければ、代わりに誰かが奮闘すればいいだけのことです。ウイルスを撲滅するのも相当に難義なことですが、ウイルスが人間の営みを止めることも容易くはないのです。人間には「助け合い」というチカラがあるのですから。

↓来場所は休んだぶんを取り戻すくらいの相撲を見せてほしい!


鶴竜はとりあえず顔だけでも出すように!

先生怒らないから!


客入りは芳しくはありませんが、そのぶん場内には熱気が満ちています。ディズニーランドで言えば、今このパークには「ミート・ミッキー」しかないような状態ですが、だからこそその一瞬に全力を注ぐことができます。アレを食べて、コレを買って、コレを見て、なんてことではなくただひたすら土俵と相撲に目を注ぐ。それは観戦の原点に立ち返るような気持ちです。飲んで騒ぐ輩もおらず、皆が静かに拍手の応援を送る空間は、もしかしたら以前より心地よいかもしれないくらい。

するとご褒美のような珍事も起きます。幕下で優勝決定戦が行なわれることになったのですが、何と進出者が9人もいるという異例の多さに。名前を呼ばれて次から次へとぞろぞろと出てくる幕下力士たち。仕組みとしてそういうこともあるというのはわかってはいるのですが、改めて9人出てくると「ここまでの十五日(※幕下は7番)は何だったんだ…」「逆に、いつもこんなにもつれないのがスゴイのか」「十両は全体で9番とか10番とかしかやってないのに」「幕下の優勝決定戦が8番つづくのか…」「もう最初からトーナメントでよくない?」などとニヤニヤしてしまいます。

結局、「9人という歪な人数でのトーナメント戦のため、2人だけ1番余計に相撲をとることになったうちのひとり」である魁が、決定戦だけで4番を勝ち抜いての幕下優勝。仕組みの時点であからさまに不公平がある相撲らしい仕組みの戦いですが、それを「4番くらい何でもないです」と笑い飛ばすのもまた大相撲らしさ。厳密さと正確さを追及すれば滞るものを「ごっちゃんです」のどんぶり勘定で片づけていく。ギスギスした現世と離れた異世界を見るようで、何だか癒されます。こんな歪なトーナメント戦、ほかの競技でやってたらすぐSNS荒れそうですよね!相撲だと「へー」で終わりですけど!

↓もうちょっと事前に絞ろうやwww


「あー、いっぱい同点者が出てしまったな…」
「誰かひとりくらい全勝すればいいのに…」
「ま、いいかトーナメントで決めれば」
「ん?9人いるからやりづらい?」
「ま、いいんじゃん?」
「3番やるも4番やるも変わんないだろ」
「できるできる」
「相撲をできる喜びを感じればできる」



幕内では2敗の大栄翔が「勝てば優勝」という展開。負ければ大関・正代と決定戦の可能性もありますが、千秋楽の相手は隠岐の海ということで、突き押しの大栄翔からすれば的が大きくてやりやすい相手です。目の前から消えていなくなるほどの変化はないでしょうから、立ち合い思い切ってドーンといけばいいだけのこと。今場所の大栄翔のチカラであれば問題ありません。

大栄翔は今場所の相撲そのままに立ち合い鋭く当たると、そのまま一気に押して、最後は突き出し。結びの一番での正代の結果を待つことなく、大栄翔が13勝2敗での優勝を決めました。これで琴奨菊⇒稀勢の里⇒栃ノ心⇒玉鷲⇒徳勝龍⇒大栄翔と6年連続で「初優勝」の力士が初場所を制することに。最近は「毎場所荒れてる説」もありますが、やはり初場所には何かがあるようです!

↓チャンスを逃さずつかんだ大栄翔!埼玉出身力士として初、追手風部屋としても初、初物尽くしの幕内優勝!


「それでは今日の問題です」
「何故、初場所は荒れるのでしょうか?」
「先生!わかりました!」
「はい、では答えてください」
「白鵬と鶴竜が休んでるからです!」
「白鵬はこの6年で4回、直近4年連続」
「鶴竜もこの6年で4回、直近3年連続」
「途中休場含めてお休みしてます!」
「だから荒れるんだと思います!」
「うーん、バツですねぇ」
「それでは同じくらいふたりが休んでる」
「九州場所がそんなに荒れない理由が」
「説明できないですねぇ」
「もっと視野を広げてください」
「いいですか、初場所に関して言えば」
「一昨年とその前は稀勢の里も休場です」
「2017年は日馬富士も休みです」
「休んでいるのは白鵬と鶴竜だけではなく」
「正直、みんな休みたいのです」
「正月はメシ食って酒飲んで寝ていたい」
「稽古したり頑張ったりしたくない」
「ま、稽古もメシ食って寝ることなわけですが…」
「横綱は休んでも地位が下がらないので」
「これはもうハッキリと休もうと」
「ちょっとダメならスッパリ休もうと」
「三月場所で頑張ろうと」
「そういう割り切りになるだけで」
「本当はみんな休みたいのです」
「横綱だけでなく大関も三役も」
「みんな正月は食って寝ていたい」
「いつもそうだけど、特にそうしたい」
「十一月場所は惰性で頑張れるけど」
「正月を挟んだ初場所は休みたい」
「寒いし」
「裸だし」
「怪我しそうだし」
「そこでやたら調子がいいヤツとか」
「正月からやる気出してくるヤツがいると」
「ポンと抜けちゃう」
「序盤でポンと抜けちゃうと」
「そっからさらにやる気が出てくるので」
「ポンポンポーンといっちゃう」
「これが初場所が荒れる理由です」
「ですので、相撲賭博をやる際は」
「初場所はしっかりと穴に賭けてください」
「わかりましたね?」

優勝が決まったあとも三役格の力士がしっかりとした土俵で場所を締めていきます。関脇・照ノ富士はすくい投げで明生を下して11勝目。これで先場所は小結で13勝、今場所は関脇で11勝とし、来場所は大関への復帰を懸けての場所に。ひとつの目安である33勝には9勝で届く計算ではありますが、大関の勝ち越しは10勝です。10勝、二桁を勝って堂々と大関復帰を決めたいところ。まぁ、まったく問題ないでしょう。気をつけるのは怪我と病気だけです。

↓師匠の伊勢ヶ濱親方は審判部長の立場から「(来場所、大関獲りとなることは)当然」と明言!


結びの一番では、すでに気落ちしている正代を朝乃山が押し出して11勝目。序盤は負けが込んでいましたが、最後は11勝までもってくるあたりはさすが。照ノ富士が大関復帰を目指し、大栄翔や高安、隆の勝あたりも大関をうかがうとなってくると、ちょっと前まで「大関不在」を心配していたのとは逆に「過剰大関」という状態になってくるかもしれません。朝乃山には今年中の綱取りをしっかりと意識していただき、「横綱2、大関4」のいい感じの配分を目指してもらいたいもの。正代も何とか千秋楽まで可能性をつないだという意味では、いい仕事をしました!毎日ドタバタしてましたけど!

話題の中心であった貴景勝の綱取りが序盤の3日くらいで霧散してどうなることかと思いましたが、最後はしっかりと盛り上がりを作り、来場所への話題をつなげ、困難な場所を乗り切った大相撲。何人いないからできないとか何人休んだからできないとかではなく、誰かがいなくなったら、残った人でできることを精一杯やる。そうやってこの苦境を乗り越えていきたいもの。相撲だけでなく、誰もが。そのうち休む組と快復した組が交互に出てきて、「一・五・九月組」と「三・七・十一月組」による二交代制みたいになりそうな気もしますが、それはそれでアリかもしれませんね!

↓今場所の感染症拡大防止の取り組みや、相撲の取組の様子などは動画でご覧ください!


春場所の頃には世の中に「春」の気分があふれているといいなぁと思います!