割り箸を多く持ち帰ったら…?

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 スーパーなどの小売店に行くと、荷物持ち帰り用の段ボール、弁当・総菜用の割り箸、プラスチックのスプーンやフォークなどが置かれている場合があります。こうした物品は基本的に無料で提供されているため、多めに持ち帰ってしまうこともあるかもしれません。もし、これらを必要以上に多く持ち帰ってしまった場合、何らかの罪に問われることはあるのでしょうか。グラディアトル法律事務所の井上圭章弁護士に聞きました。

常識的に「購入商品の量に応じて」

Q.店に置かれている段ボール箱や割り箸、ポリ袋、氷などを大量に持ち帰った場合、罪に問われる可能性はあるのでしょうか。

井上さん「物品を無料で提供しているため、大量に持ち帰っても罪に問われることはないだろうと思いがちですが、窃盗罪(刑法235条、10年以下の懲役または5万円以下の罰金)に問われる可能性があります。

刑法は『他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし…』と規定しており、人の物を取る行為は形式的には窃盗にあたる行為です。その持ち主が『持ち帰っていい』と言っている場合、形式的には窃盗にあたる行為であっても違法とまではいえないということで、犯罪にならないと考えられていますが、常識的に考えると、持ち主が許可している範囲は『購入商品の量に応じて』という意味合いが強いと思われます。つまり、サービス品を必要以上に持ち去る行為は、持ち主が許した範囲を超えるため違法となります。

『大量の持ち帰りはご遠慮ください』『1人○点限り』など、店側が明記している場合にそれを超える量のサービス品を持ち帰る行為はもちろん、明記がない場合であっても、必要以上に持ち帰った場合は窃盗罪に問われる可能性があります。通常より多い量が必要な場合、お店の人に事情を説明し、許可を得る方がよいでしょう」

Q.専用のボトルを持参した場合に限り、水を無料で提供するサービスを行っているスーパーもあります。専用ボトル以外の容器に水を入れた場合、罪に問われる可能性はありますか。

井上さん「窃盗罪や業務妨害罪、器物損壊罪などの罪に問われる可能性があります。通常、専用ボトルを購入した上でそのボトルを使用した場合に限り、水を無料で提供していると思います。こうした場合、店側としては、専用ボトルを購入した人へのサービスとして水の持ち帰りを許可しているものと考えられます。つまり、店側が許可していない専用ボトル以外の容器に水を入れ、水を持ち去る行為は違法といえ、窃盗罪に問われる可能性があります。

また、専用ボトル以外の容器を使用すると、衛生上の問題が生じて機器を洗浄するなどの業務が別途必要となり、それによって、本業を妨害する可能性があります。こうした場合、業務妨害罪(刑法233条、3年以下の懲役または50万円以下の罰金)に問われることがあります。さらに、専用ボトル以外のボトルを使ったことで機器を壊した場合は、器物損害罪(3年以下の懲役または30万円以下の罰金)に問われる可能性があります」

Q.店舗で商品を購入していない人がこうした無料サービスを利用した場合、罪に問われるのでしょうか。

井上さん「通常、店の利用客に対するサービスとしてこうした無料サービスを行っていると思われるため、場合によっては窃盗罪などの罪に問われることがあります。ただ、無料サービスは商品の購入客だけを対象としているというより、来店客も含めて対象としていることが多いと思います。事前に店側からの注意を受けていたということがない限り、商品を購入していない客が利用しても罪に問われることは少ないでしょう」

Q.無料サービスを過度、あるいは違法に利用したことによる事例、判例はありますか。

井上さん「店が冷凍・冷蔵食品の購入客用に提供している氷を10キロ以上持ち去ったとして、窃盗の疑いで男が現行犯逮捕された事例があります。このケースでは、同様の持ち去り行為を複数回行い、店側からの注意があったにもかかわらず氷を持ち去ったという事情もあり、逮捕に至ったようです」