「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「卯月」「卯の花」の「卯」。「卯月」とは旧暦四月の呼び名ですが、太陽暦にあてはめるならまさに今ごろ、夏が始まる五月のことを示しています。



「卯」という字は象形文字で、訓読みが「う」、音読みでは「ボウ」。

この形が示す意味には、いくつかの説があります。

まずは、同じ形のものを左右対称に置いた様子から、価値が等しいものを交換する、という意味を示す説。

貿易の「貿(ボウ)」という字の上半分に「卯」という字を使う所以です。

また、左右に開かれた門の姿を描いたものとして、そこから、一日の始まりとなる朝を意味するという説。

さらに、祭りの際に供えるいけにえの肉をふたつに裂いた形と見立て、「裂く」「ふたつに分ける」という意味をもつ、という説もあります。

なお、旧暦四月、今この時期をさす「卯月」の由来には諸説ありますが、「卯の花」が咲く時期だから、というのが最も有力です。

春、真っ先に山の草木を染めるのは黄色やくれないの花。

命の目覚めを告げる華やかな色彩のあとに咲き始めるのは、夏の訪れを告げるさわやかな白い花々です。

アカシア、ミカン、トチ、スイカズラ。

色濃く茂る新緑を背景にして、すがすがしい風を運びます。

初夏を代表する卯の花ですが、雪のように真っ白な花に、「夏の雪の草」と書く「夏雪草(ナツユキソウ)」という別名もつけられています。

五月を「吹雪月(ふぶきづき)」と呼ぶこともありますが、卯の花の白い花びらが五月の風にはらはらと舞う様子がその由来です。

ではここで、もう一度「卯」という字を感じてみてください。

初夏の時期に口ずさみたくなる愛唱歌といえば「夏は来ぬ」。

古典文学の研究や復刻にも力を尽くした歌人、佐佐木信綱の作詞による名歌です。

「卯の花の 匂う垣根に 時鳥(ほととぎす)……」

歌詞には、「さみだれ」「早乙女」「橘」「蛍」と、夏の訪れを告げる日本の美しい言葉が並んでいます。

とはいえ「花より団子」派にしてみれば、「卯の花」と聞いて思い浮かぶのは「おから」で作った料理のこと。

炒ったり煮たり、味付け次第でおかずやおつまみ、お茶請けに。

食卓に咲く卯の花とともに、さわやかな初夏のひとときを味わいましょう。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『読んでわかる俳句 日本の歳時記 夏』(宇多喜代子、西村和子、中原道夫、片山由美子、長谷川櫂/著 小学館)

5月26日(土)の放送では「鳴」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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聴取期限 2018年5月27日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/