大会連覇を飾った。「なでしこジャパン」。苦しい戦いの連続だったが、攻守両面でキーマンが大きな役割を果たした。(C) Getty Images

写真拡大 (全2枚)

■攻守の軸は“2010ドイツ組”のふたり

 攻撃の核となったのは、大会MVPにも選出された岩渕真奈(INAC神戸レオネッサ)だ。決勝までの9点中7点に絡んだが、自身の得点は2点。その中には準決勝の先制点も含まれているが「自分で獲りたい派」としては、やや不満が残る数字だろうか。

 一方で、攻守の多くで局面に関わり続けた。ボールを引き出す裏への抜け出し、相手ボールホルダーへの惜しみないフォアチェック、攻め上がったサイドバックの代わりに最終ラインへ入るシーンも一度ならずあった。今大会の失点の少なさについては、岩渕以下FW陣の献身的な働きがあったことも特記されていいだろう。

 守備の軸は、もちろん、キャプテンの熊谷紗希(リヨン)。今大会は、延べ5人のディフェンダーと最終ラインを形成し、ふたりのゴールキーパーと息を合わせてゴールを守った。そして5試合すべてで自軍が先制点を奪うまで失点をしていない(決勝では自らのハンドをPKストップに救われたが)。特に、負けられないオーストラリア戦、中国戦では、自分より若いDFたちを落ち着かせる働きを見せた。

 ふたりは2010年、ドイツで行なわれたU-20女子ワールドカップでも、チームの中心選手として戦った。同大会ではグループリーグで敗退したが、翌年の女子ワールドカップで雪辱。優勝の笛をピッチ上で聞いている。年齢こそ中堅だが、経験値は既にベテランの域。来年の本大会でも、攻守の軸としてチームを引っ張る存在となるだろう。
 
■優勝をもたらした、2枚のジョーカー

 優勝に直結する活躍を見せたのは、横山久美(フランクフルト)と宇津木瑠美(シアトルレイン))のふたりだろう。

 今大会の横山は、対戦相手がどれほど警戒しようと止められなかった。AC長野パルセイロレディースへ移籍して、その得点能力が開花。さらにフランクフルトへ移籍後、ヨーロッパを舞台に、外国人選手と切磋琢磨し続けてきた彼女にしてみれば、中国、オーストラリアも、構えるほどの相手ではなかった。4人のDFの中央でボールを受け、ワンフェイントで交わし、ファーサイドへ正確なシュート。今、日本で最も得点を期待できる選手だ。

 宇津木は、グループリーグのオーストラリア戦からピッチへ登場。こちらも外国人選手のプレッシャーと数年に渡って日常的にプレーしてきた強みを生かした。今大会は、的確なポジショニングとフィジカルの強さを活かした高い白兵戦能力で、最終ラインの前で防波堤となったが、ゲームを作る能力も高い。攻撃の横山同様に、このマルチロールもチームの切り札と言っていい。高倉監督の手元にはジョーカーが2枚あるようなものだ。
 
■芽生えてきた若い力

 今大会は、高倉監督と年代別代表から活躍を続けた、若い世代の活躍も目立った。

 中盤では、横山の決勝ゴールをアシストした長谷川唯(日テレ・ベレーザ)。高いテクニックは折り紙付きだが、本人のセールスポイントは「試合終了まで欠かさないハードワーク」。左サイドを上下動するだけでなく、危機を察知すると逆サイドまでカバーに走ることもしばしば。高倉監督から期待されているのは「試合を決めるゴール」。準決勝、決勝でビッグチャンスを呼び込んでおり、決定力の向上が、来年に向けての課題になる。

 オーストラリアの波状攻撃にも耐え抜いた守備陣では、まず、決勝でファインセーブを連発した山下杏也加。池田咲紀子(浦和レッズレディース)らとの激しい競争を制して、ゴールマウスに立った。自らのキャッチミスから与えたPKを止めて帳消しにすると、その後はクロス、シュートをしっかりとセーブ。指揮官が、高身長の菅澤優衣香(浦和レッズレディース)から横山への交代に踏み切れたのも、山下に空中戦を任せられると踏んだからだろう。